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連載新型コロナワクチンを知る

接種判断の前に知るべき新型コロナワクチン報道のあり方―日本ワクチン学会が見解公表

公開日

2021年04月22日

更新日

2021年04月22日

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2021年04月22日

掲載しました。
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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年04月22日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

医療従事者に対する新型コロナウイルスワクチンの接種が2021年2月17日に始まり、今後高齢者や基礎疾患のある方から順に接種されます。これを受け医師、ワクチン製造に関わるメーカー、行政関係者などでつくる日本ワクチン学会は、新型コロナウイルスワクチンの副反応疑い報告に関する見解を発表し、メディアなどに対し正しい情報の発信を促しています。日本ワクチン学会理事長の岡田賢司先生に、見解の背景や新型コロナウイルスワクチンを取り巻く日本の状況についてお話を伺いました。

「副反応疑い」が多く取り上げられる傾向

新型コロナウイルスワクチンの接種が広がるにつれて、「アナフィラキシー」など重篤な副反応疑いの報告がメディアで多く報道されるようになり、接種に不安を感じている方も多いと思います。そこで日本ワクチン学会では、新型コロナウイルスワクチンの「効果の見える化」と「副反応やその疑いに関する正確な情報を伝えること」の2点を最優先事項とし、情報発信を行ってきました。

新型コロナウイルスワクチンに限らず、ワクチンは副反応などのリスクについては大きく報道されるものの、有効性は「あって当然」で、どれだけの効果があるのか十分に報道されない傾向があります。また副反応「疑い」についても、因果関係が証明されないうちに報道されてしまうため、本当にワクチンによって起こったものかも分からない状態で世間に広がり、ただ不安をあおる結果になってしまいます。

新型コロナウイルスワクチンに対するこうした社会の混乱を防ぐため、日本ワクチン学会は2021年2月23日に「新型コロナウイルスに対するワクチンの接種に伴う副反応疑い報告の事例の発生に関する日本ワクチン学会の見解」を発表しました。同年1月に発表した「新型コロナウイルス感染症ワクチンに関する提言」に次ぐ当学会からの情報発信で、現時点で報告されている副反応疑いの報告についての学会の考え方や、メディアの報道の仕方などについての見解をまとめたものです。ワクチンの安全性を科学的・疫学的に正しく評価するためには相当の時間がかかりますので、今報告されている事象のみから因果関係を考えることは望ましくありません。そのため副反応疑いはあくまでも「疑い」であることを示し、偏りのない公平な情報発信をするようメディアなどにお願いする趣旨で発信しました。

有効性・安全性・重症度をてんびんにかけ接種判断を

新型コロナウイルスワクチンの発症予防効果は約95%といわれており、接種することによって新型コロナウイルス感染症の発症を予防することが期待できます。私たちからみても、効果が十分期待できるもので、重篤な副反応についても決して高い確率で現れるものではないと思っています。

新型コロナウイルスワクチンの接種を検討するにあたって、一般の方には、有効性・安全性に加え、新型コロナウイルス感染症にかかった場合の重症度を含めた3つをてんびんにかけて検討してほしいと思っています。新型コロナウイルス感染症は重症化すると命に関わる可能性も高く、特に高齢者や基礎疾患のある方は重症化する確率が高まることが分かっています。ワクチンでそうした病気にかかりにくくなるということは、とても大きなメリットといえるでしょう。目先の副反応疑いの報道などにとらわれすぎず、新型コロナウイルス感染症の恐ろしさをご理解いただいたうえで接種を検討してください。

ワクチン報道で過度の恐怖感も

私たちは、一般の方に分かりやすく医療情報を伝えることを苦手とする側面があり、メディアの力を借りながら正しく伝えることが大切だと考えています。しかし、前述の通りワクチンに関する報道では有効性に焦点が当てられることがほとんどなく、副反応などの安全性ばかりが取り上げられ、報じられてしまう傾向があります。たとえば子宮頸(しきゅうけい)がんの原因ウイルスとして知られるヒトパピローマウイルス(HPV)のワクチンでも、“副反応”ばかりが報道されることにより有効性が一般の方に伝わらず、接種率が伸び悩んでいることが問題となっています。これは社会全体の認識としてワクチンに効果があることは当然であり、副反応などの安全性について報じたほうが、ニュース性があって多くの人の目に留まるからでしょう。実際新型コロナウイルスワクチンについても、有効性に関する報道より副反応疑いなど安全性に関する報道が多いため、一般の方のなかにはワクチンを過度に怖がり、接種するかどうかを迷ってしまう方がいらっしゃいます。

また、新型コロナウイルスワクチンについてはmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンという新しいワクチンということもあり、他のワクチンと比較して「まだ何も分からない」という不安を抱えている方も多いと思います。ヒトは多くの場合最初に入ってきた情報を軸に物事を判断する傾向があるのではないでしょうか。新型コロナウイルスワクチンについて最初に触れた情報が副反応疑いに関するものであれば、「副反応の多いワクチン」と事実に反する受け取り方をしてしまう方もいらっしゃるでしょう。こうしたミスリードを防ぐためにも、ワクチンのよい面・悪い面を正しく発信していくことが大切です。

100%有効で100%安全なワクチンは存在しません。ベネフィット(利益)とリスクを正しく理解して接種するか否かを決めることが大切です。

ワクチンは「危機管理の手段」

私は新型コロナウイルス感染症の流行によって、国のワクチンに対する見方が変わってきたと思っています。これまでワクチンはあくまで医療分野の危機管理のものという位置づけでした。しかし新型コロナウイルス感染症では、国全体がワクチンを危機管理のために必要不可欠なものとして捉えるようになり、厚生労働省の内部だけの議論から各省庁、関連学会などが横断的に協力し、日本全国を巻き込んでワクチンに関するいろいろな課題が議論されるようになりました。

このように国が一丸となって向き合うことは、ワクチンの重要性が国全体に周知されるよい機会になるのではないかと期待しています。

「VPD」増加でウイルスとうまく付き合えるように

現在は麻しん、風しん、水ぼうそう(水痘)などさまざまな感染症のワクチンがあり、感染症で命を落とす方が極めて少なくなり忘れられがちですが、予防接種法ができた1950年代当時は多くの人が感染症で亡くなっていました。ワクチンの開発・定期接種などによって「ワクチンで予防できる病気(VPD:Vaccine Preventable Diseases)」が増え、感染症を撲滅できないまでも、うまく付き合っていけるようになってきました。これは大きな医学の進歩といえるでしょう。

写真:PIXTA

現在のように新型コロナウイルス感染症流行のために行動の制限を余儀なくされる生活を解消するためにも、ワクチン接種は非常に有効な手段になることが期待できます。多くの皆さまが正しい情報を理解したうえで、ワクチンを接種するか・しないかを判断できるよう、私たちはこれからも新型コロナウイルスワクチンのよい面・悪い面の両面を知っていただけるような情報発信を目指したいと思っています。
 

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