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連載新型コロナワクチンを知る

認知症高齢者のご家族に聞く「新型コロナワクチン接種前の不安や疑問」

公開日

2021年05月26日

更新日

2021年05月26日

更新履歴
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2021年05月26日

掲載しました。
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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年05月26日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

新型コロナワクチンの接種は優先順位が高い方から順次開始され、2021年5月現在、高齢者への接種も行われています。そうした中で、認知症を抱えた高齢者は接種の同意や予約、接種会場への移動が難しいなどの課題が予想されます。実際どのようなことに不安があるのでしょうか。認知症の実母の中澤廸子さんを働きながら介護する東京都調布市にお住まいの中澤ルミさんにお話を伺いました。

日中は問題なく生活、ときに突然飛び出すことも

私の母は92歳の認知症高齢者で、ほかにも高血圧症や狭心症などの基礎疾患があります。認知症の症状としては、時間・場所・人などが分からなくなる「見当識障害」のほか、物忘れ、妄想、幻覚などが見られます。ただし度合いはそこまでひどくはなく、日中は意識もかなりはっきりしているので、今のところ食事・排泄・着替えなど、生活に必要なことは自分でできます。母は私の家から徒歩約10分の場所に一人暮らしをしており、私が毎日一度は家に行き生活のサポートをしているような日々を送っています。

ただ一方で、いわゆる「夕暮れ症候群」の傾向があり、日没後は夢と現実がごっちゃになってしまうこともあります。たとえば、とっくに成人している私の娘をまだ小さな子どもだと思い込み、「孫を預かっていたはずなのにいなくなった」と騒ぎ出したことがありました。また、目が覚めた時に自分がどこにいるか分からなく不安になって私に電話をかけてくることも度々あります。ときに突然外に飛び出してみたり、警察に110番通報をしたりすることもあり、私自身も肝を冷やすことがあります。

母は現在、要介護1の認定を受け、日曜日を除いて介護保険を使ったさまざまな公的サービスを受けています。具体的には、週3回はデイサービスに通っているほか、訪問タイプのリハビリに週1回、ヘルパーさんに週2回自宅に来てもらっている状況です。

マスクの着用で「顔を認識しにくい」「話が聞こえにくい」状況に

もともと足腰が弱っていたので、新型コロナ流行以前からほとんど家を出ない生活を送っていました。そのため、流行後も本人の生活はほとんど変わっていません。

ただ、相手がみなマスクをしている状態でコミュニケーションを取ることに苦戦するようになりました。母は耳が遠いので、マスクをした状態で相手に話しかけられても、声がうまく聞き取れないようです。また、認知症によって顔を覚えることも苦手になっているうえに、マスクで顔の半分が覆われてしまうと、誰なのかを認識することも難しくなっています。

認知症はこの1年半もどんどん進行し、私たち家族が困るようなトラブルも起きやすくなっています。そこでケアマネジャーさんに相談し、認知症の方に特化したデイサービスに入ることになりました。コロナ禍でありながら、新たに母を受け入れていただき、大変感謝しています。

ワクチンに対する反応はよかった

高齢認知症女性

新型コロナワクチンについて母がどこまで理解しているのかはよく分かりません。ただ、「高齢者から優先的に接種を開始する」という新聞記事には本人も興味を示しており、「私もワクチンを打てるのかしら」と気にしている様子がありました。そこで、「ちゃんと自治体からのお知らせが届いているよ」「私が予約をするから、受けられるよ」と説明したところ、「受けられるなら、早く打ちたい」と話していました。このように母の場合はワクチンを拒む様子は一切見受けられず、早く打ちたいと考えているようでした。

私たち家族も母がワクチンを打つことには大賛成です。公的な情報や新聞記事、ワクチン接種券に添付されていたファイザー社の文書などを元に情報を収集し、安全性については世界各国での実績があるといわれているので、母が接種するにあたって大きな不安はありません。

むしろ、認知症高齢者である母が万一新型コロナに感染してしまった場合、重症化する可能性が高く、家族だけでなく医療従事者の皆さんなどさまざまな方のサポートが必要になります。社会にかかるそうした負担を考えると、母にはなるべく早くワクチン接種をしてもらいたいと思っています。

もし「接種したくない」という反応だったら……

母がもし接種を拒んだら、私は「若い方たちのために打ちなさい」と説得すると思います。

これは私の意見ですが、高齢者の多くは「人の役に立ちたい」と思っています。また、社会で守られる存在になりつつありますが、本人たちはあまり「守ってほしい」「人に面倒を見てほしい」と思っていない気がします。さらに認知症であっても、自分の役割を必死に考え、社会に貢献したいという気持ちを持っている高齢者が多いのではないでしょうか。とっくに成人している私の娘の面倒を見ているつもりになって「孫がいなくなった」と騒ぐ姿に、母が根本的に誰かの役に立ちたいと思っていることを感じます。

前でお話ししたとおり、認知症高齢者が感染した場合、多くのサポートが必要となり社会全般への負荷が高まっていると思います。結果的に若い方たちがより多くの制約を受けている現状を見ると人の役に立ちたいと思っている彼らには「若い方のためにもワクチンを打とう」と話すことは、「あなたの健康のため」と伝えるよりも大きな意味を持つと思っています。

接種後の副反応に対する対応には不安

新型コロナワクチンのリスクについては、過剰な不安は抱いていません。ただ、もし接種後に発熱、倦怠感(けんたいかん)などの副反応が出たとき、どう対応すればよいかという点に少し不安があります。特に高齢者には副反応を体調不良と思い込み、そのまま寝込んでしまう方もいると聞きます。そうなれば母はもちろん、私たち家族のその後の生活にも影響があるでしょう。接種券などにはコールセンターの電話番号が記載されており、「接種後に体調が悪くなったらご連絡ください」と書かれていますが、認知症の母を介護する私としては、事前にもう少し詳しく説明してくれるとありがたいです。

接種会場ではなくかかりつけ医にお願いしたい

一般的に新型コロナワクチンの接種は各自治体が準備した接種会場に行く必要があると思いますが、母はかかりつけ医で接種できるようになるまで、申し込みを待とうと考えています。理由は大きく2つあります。

1つは万一接種後に体調不良が生じたとき、かかりつけ医にすぐに相談することができるからです。もう1つは、接種までの流れがスムーズであると思うからです。各自治体で異なるかもしれませんが、問診票には「かかりつけ医にワクチンを接種してよいと言われましたか?」など、かかりつけ医の意見を問う質問があるため、接種前に一度はかかりつけ医を相談する必要があるのです。また、もし接種会場まで行って問診の結果、何らかの理由で「今日は受けられません」などと帰されてしまうようなことがあれば、母にとっても負担です。このようなことを防ぐためにも、かかりつけ医での接種を希望しています。

幸い、私たちが暮らす地域では、5月中旬からかかりつけ医での接種予約できることになったので大変助かります。

一人暮しの認知症高齢者への対応や体制を整えることが必要

高齢者の接種率を高めるため、私が暮らす地域では集団接種会場の設置やタクシー券の配布などさまざまな対策が行われています。私のサポートがある母にとっては大変ありがたいのですが、身寄りのない一人暮らしの認知症高齢者であればタクシー券があっても一人で接種会場に行くのは難しいと思います。少なくとも母の様子を見る限り、自分でワクチン接種の予約を取り、接種会場まで一人で足を運ぶことは難しいでしょう。認知症高齢者の接種率を上げるためには、自宅を訪問して接種したり、介助者が接種会場まで引率したりする必要があるのではないかと思います。

また、母は新型コロナワクチン接種にあたってスムーズに同意を得ることができましたが、認知症の方の場合、それが難しいケースも多いでしょう。認知症の方は本人の同意がなくても家族の同意のみで接種が可能になるといいなと感じることはあります。なかなか難しい部分もあると思いますが、より多くの方が接種できるようになることを望んでいます。

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