院長インタビュー

じっくりと寄り添い支える医療を提供する、千葉東病院

じっくりと寄り添い支える医療を提供する、千葉東病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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千葉東病院は、千葉市中央区に位置する国立病院機構の医療機関で腎疾患と神経難病・重症心身障害という2つの分野を中心に医療を提供しています。

千葉県県庁所在地の中心エリアにあり、周辺には千葉大学病院や千葉県がんセンターをはじめとする医療機関が多い中、同院は慢性疾患に対する医療とセーフティーネットとしての役割で地域の医療ニーズにこたえています。地域に貢献する同院について、特徴や取り組みなどを院長の西村 元伸(にしむら もとのぶ)先生に伺いました。

 

千葉東病院は、国による国立病院・療養所の再編成計画のもと平成16(2004)年に前身である国立療養所千葉東病院と国立佐倉病院が統合し、現在の独立行政法人国立病院機構千葉東病院としてスタートしました。

神経難病・重症心身障害、小児腎疾患を得意とする国立療養所千葉東病院と、腎臓疾患を得意とする国立佐倉病院と統合したことによって、現在は腎疾患と神経難病・重症心身障害に注力した医療を展開しています。

また、敷地内には淑徳大学千葉第2キャンパス(看護栄養学部)が設置され、千葉県立仁戸名特別支援学校と隣接していることにより、医療だけでなく医療人育成・病児教育にも貢献しています。

千葉東病院外観
千葉東病院ご提供

当院は腎臓疾患と糖尿病に重点を置いて取り組んでいます。当院が国立病院機構の一員として、政策医療(国が医療政策を担うべきと考える医療)のうち腎疾患で高度専門医療を担っています。これは、医療の提供だけでなく研究、教育、情報発信などを行うことが目的とされており、国立病院機構の腎疾患分野においては当院が中心病院の一つとしてネットワークを形成しています。

当院では、現在慢性腎臓病や糸球体腎炎腎移植後の患者さん、小児腎臓病の患者さん、血液透析、腹膜透析の患者さんなど、あらゆる腎疾患に対応した診療をしています。

腎臓分野の専門医も多く在籍しており、急速進行性腎炎やネフローゼなど、迅速な診断と治療が必要な場合においても対応できる体制をとっています。

とくに診断において重要な検査となる腎生検においては、当院は全国的に見ても実施数が多く、かつ腎臓を専門とする病理医が診断をしていることも当院の強みの一つです。

腎臓の機能が落ちてくると、体内の老廃物の尿への排泄が低下したり、栄養分が尿に漏れたり(尿蛋白)、電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム、リンなど)の調整能が低下したりします。腎性貧血などの合併症を引き起こす原因ともなります。少しでも長く腎機能を良好に維持するためには早期の診断と治療開始が重要です。慢性腎臓病は早期には症状がないことが多いため、健診などで定期的に検査を受けることが大切です。そして、尿検査異常や血液検査の腎機能に異常が出た場合は、早期に受診していただくことをお勧めします。

また、腎臓と糖尿病は関係が深く、糖尿病の三大合併症のひとつである糖尿病性腎症は腎代替療法が必要になる症例の約4割を占める原因疾患となっています。糖尿病性腎症重症化予防は国をあげて行われている事業ですが、当院はこの事業において千葉県で中心的な役割を果たしています。

私自身、糖尿病を専門としていることもあり、腎疾患が関係する糖尿病治療は力を入れて取り組んでいます。

糖尿病は腎症、網膜症、神経障害、動脈硬化心筋梗塞脳梗塞)など様々な合併症の原因となります。腎臓内科を連携して行っている糖尿病性腎症の診療は当院の強みでもあります。また、糖尿病だけでなく肥満症脂質異常症などの生活習慣病は薬物療法だけでなく生活面での改善も重要です。当院は糖尿病認定看護師、糖尿病療養指導士の資格を取得しているスタッフも多く、多職種で連携しながら教育入院や外来での生活指導など、治療や療養に対しても体制が整えています。

リウマチ・アレルギーにおいては分野が多岐にわたることから、リウマチ・アレルギーセンターを開設し、関節リウマチや免疫疾患全般に対して診療科の垣根を超えた医療の提供を行っています。

従来難病として治療に苦労していたリウマチは、近年かなり原因がわかってきており、有効性の高い薬も開発されてきました。こういった新しい治療法を積極的に導入し、患者さんの状態を丁寧に評価しながら状況に応じた適切な治療法を選んで診療しています。

医療の進歩によりリウマチは予後がとても改善されてきましたが、罹病期間が長い患者さん、高齢の患者さんではADL(Activities of Daily Living:日常生活に必要な動作)が低下し、ご自宅に帰っても療養が困難になることもあります。そのような患者さんには、状況にあわせて近隣の先生のお力を借りて在宅診療を行える体制つくりの支援も行っています。

当院は国立病院機構の病院として国の政策医療の一端を担っており、セーフティーネットとしての医療を提供する役割があります。

そのため、当院では多くの神経難病に対して専門的な医療を行っています。同様に、重症心身障害をお持ちの患者(児)さんにも対応しています。

神経難病は頻度の高い疾患ではありませんので、多くの場合、患者さんは大学病院はじめ各地域の基幹病院に紹介されて診断を受けます。神経難病の診断後は、長期的な治療体制を作り、療養環境を整えることが必要になります。大学病院など基幹病院は神経難病を長期間診療できる体制がありませんので、当院がその役割を担っています。家庭で普段の生活をどのようにしたら快適にできるか、ご家族による介護や病気の管理をどのようにするかなど、ご本人やご家族が楽しく暮らしていけるようサポートを含めた医療を提供しています。また、当院には難病支援センターがありますので、在宅診療、訪問看護を担う施設、スタッフとの連携を密にし、患者さんへの医療、サービスが途切れないような体制維持を心がけています。

重症心身障害者(児)病棟は120床あり、患者さんやご家族のための短期入所やレスパイト入院も行っています。

当院は紹介受診重点医療機関なので、初診の患者さんは地域の先生からのご紹介で受診されることが多いと思います。

当院のことを良く知っていただくためにも、地域の一組織として近隣の先生方や住民の方との交流を大切にしておりさまざまな取り組みを行っています。たとえば“医療連携カンファレンス”と題したオンラインでのセミナーでは、他院の医療従事者の方向けに日常的な診療に役立つような内容でお話をしています。ふらつきなどのよくある訴えからの診断やリウマチ疾患など、当院の特色を生かした内容で、先生方の日常診療でお役に立てればと考えています。

また医療連携室、難病支援センターにおいても、主に訪問看護師さんに向けた在宅医療に関するセミナーを行っています。ホームページや広報誌とともに、このような取り組みでこれからも積極的に情報発信をしたいと考えています。

当院には臨床研究部があり、特に免疫やリウマチ、腎臓、神経難病分野での実績を活かした研究にも力を入れて取り組んでいます。臨床研究においては、国立病院機構の一員として多くの多施設共同研究に関わっています。更に、疫学や臨床統計から先端医療を含む治療法開発など包括的に取り組んでいます。治験においても、多くの症例が集まる慢性腎臓病、リウマチ、全身性エリテマトーデスSLE)、神経難病など、当院の特徴を生かした治験に取り組んでいます。当院での研究、治験で得られるデータが将来の医療の礎になるよう願っております。

また、当院各部門では学生実習を積極的に受け入れています。腎臓などの慢性疾患、成人疾患、神経難病、そして小児疾患など、当院の豊富なリソースを活用した実りある実習になればと考えています。

腎臓病、糖尿病、リウマチでは、重症化させないように早期の診断、治療から専門性をもって取り組んでいます。また、セーフティーネット医療の対象となる患者さんは多くはありませんが、その患者さんやご家族に対しては、介護・環境・医療面でできるだけストレスの少ない生活を送ることができるよう、地域のクリニック、訪問看護ステーションなどと連携をしてサポートしていきたいと考えています。

世の中には、治すだけでなく、ずっと付き合っていかなければいけない病気もたくさんあります。当院で扱っている疾患は、患者さんとの付き合いが長くなることが多いのが特徴だと思います。全職員にこのことを意識してもらい、患者さんにきめ細かく専門的に医療、看護を提供するようにしています。これからも “面倒見のいい”医療機関として、地域の皆様のために努力してまいります。

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