インタビュー

てんかんの専門医が教える-適切な診断を受けるために知っておくべきこと

てんかんの専門医が教える-適切な診断を受けるために知っておくべきこと
兼本 浩祐 先生

愛知医科大学精神科学講座 教授

兼本 浩祐 先生

この記事の最終更新は2015年12月27日です。

てんかんの診断や治療内容について納得できず、次々と病院を渡り歩く患者さんは少なからずいるといわれています。てんかんを正しく診断するためには何が必要なのでしょうか。また、適切な診断を受けるために患者さんはどのようなことを知っておくべきなのでしょうか。てんかん診療の第一人者である愛知医科大学精神神経科講座教授の兼本浩祐先生にお話をうかがいました。

まず、てんかんの発作が1、2回しか出ていない状況では、どの病院・医師にかかっても確定診断はできないことが多いということを知っていただく必要があります。発作の目撃情報などの判断材料が乏しく、絶対こうだと言い切れない状況では、該当する可能性が高いところからスタートせざるを得ません。

これは発作の頻度が少ない軽症の方についてはもちろんですが、場合によってはある程度発作の多い方にも当てはまります。心因性非てんかん性発作などは特にそうですが、ある程度のところで見切り発車をして、「この可能性が高いけれども、別の可能性もある」という両睨みをしつつ治療を開始することが必要な場合もあるのです。

非常に典型的な症状を呈する場合には、最初からはっきりと診断がついて次のステップに進めるわけですが、そうではない場合に診断が確定できないということは、医師の資質とは別の問題です。むしろ、あるところまでしか診断がつかない状況で、無理やり確定診断を下してしまうことのほうが間違っているといえます。

てんかんは発作性の症状ですから、ある病態や症状が常に存在しているという種類の疾患と違って、発作がないときには病気そのものを診ることができないというハンディキャップがあります。白黒つかないというのは大変歯がゆいことではありますが、確定診断のためのデータが不足している状況で断言してくれる医師を探して回っても、結局は無駄になってしまうということを患者さんは知っておくべきでしょう。

ある程度の期間、治療を続けているにもかかわらず発作が止まらない場合は、ご自分の状態が4大ファミリーのうち、どれに当てはまるのかをしっかりと自覚すべきです。(4大ファミリーの詳細については、関連記事「てんかんの4大ファミリーとは」をお読みください)

たとえば、てんかん性脳症の場合には、どんな専門医が治療しても治らないことがあります。5人中1人は治るが、4人は治らない―それがてんかん性脳症の「相場」であることは事実です。

その一方で、「年齢依存性焦点性てんかん」のファミリーに入っていれば、中学生になっても発作が止まらないのはおかしいということにもなります。

また、「特発性全般てんかん」であれば、もちろん発作が止まらない方もおられますが、少なくとも発作の頻度が少なくなったり、大きな発作は止まって日常生活に大きな支障がなくなるというのが「相場」です。

さらに、一番数の多い「年齢非依存性焦点性てんかん」の場合は、2年程度治療を続けても発作が止まらなければ、焦点性てんかんに有効な薬がきちんと処方されているのかどうかを確認することも必要です。

自分の出発点を知らなければ、自分はどの程度まで治るのかという「相場」も分からないので、今自分が受けている治療が相場と合っているのか判断ができないということになってしまいます。これを防ぐためにも、てんかんの4大ファミリープラス1ないし2までは理解しておく必要があります。

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