妊娠糖尿病の診断基準は、2010年の改訂を機に厳しくなりました。そのため、改訂前は2.92%であった妊娠糖尿病の頻度は、約12%にまで増えることとなったといわれています。
このように診断基準が厳しくなった背景には、妊娠糖尿病が周産期合併症の頻度を上げることを示す研究が報告されたことがあります。この記事では、妊娠糖尿病が妊婦さん、胎児、新生児にどのような危険をもたらす可能性があるのか、愛媛大学大学院医学系研究科産科婦人科学教授の杉山隆先生にお話しいただきました。
冒頭でも述べたように、妊娠糖尿病は、母体、胎児、そして新生児に悪影響をもたらします。妊娠糖尿病自体は自覚症状などが少ない病気ですが、下記に挙げる合併症を併発してしまうと非常に危険な症状を呈することもあります。まずは、妊婦さんがかかる可能性がある合併症から順にお話ししていきます。
妊婦さんに起こりうる合併症は、①糖尿病合併症と②妊娠合併症のふたつに大別されます。
妊娠糖尿病にかかると、お腹の中の赤ちゃんに糖などの栄養素が供給され過ぎてしまいます。すると、赤ちゃんは血糖値を下げるためにインスリンを分泌します。インスリンは「成長因子」ですから、過剰に分泌しすぎてしまうと臓器肥大や脂肪の増加に繋がり、出生時の体重が増え、4000gを超える巨大児となることもあります。
巨大児の分娩は肩甲難産(分娩時に赤ちゃんの肩が産道でつかえてしまうこと。)になるリスクが高く、これが胎児機能不全や赤ちゃんの腕の神経麻痺といった分娩障害を起こすことにも繋がる可能性もあります。
妊娠糖尿病と診断されていても、分娩方法は基本的には経膣分娩となります。しかし、上記のような合併症が生じ、母児の状態が悪化していることが強く予想される場合や、巨大児(もしくは過体重児)に基づく難産が予想される場合には、帝王切開による分娩となる可能性もあります。このため、妊娠糖尿病の方は健常妊婦に比べて高い確率で帝王切開分娩となります。
新生児とは、生後0日(出生日)から生後28日未満の赤ちゃんのことを指します。妊娠糖尿病は、このような生まれたばかりの赤ちゃんにも下記の合併症をもたらす危険性があるため、分娩後も十分な経過観察が必要とされます。
以上は、妊娠糖尿病患者さんにとって「近い将来」に起こる可能性のある合併症です。
しかし、妊娠糖尿病は2年~10年後など「少し先の将来」や、30年後といった「遠い将来」に起こるリスクについても考えねばならない疾患です。
たとえば、お母さんの将来の2型糖尿病発症率が高くなること、妊娠糖尿病のお母さんから生まれたお子さんが、将来肥満やIGT(耐糖能異常:糖尿病予備軍のような病態)、そして糖尿病などを患う可能性が高くなります。一体なぜなのか、この理由を次の記事で詳しくお話しします。
愛媛大学医学部附属病院 病院長、愛媛大学 副学長、愛媛大学大学院 医学系研究科 産科婦人科学講座 教授
関連の医療相談が11件あります
妊娠糖尿病
今日病院で糖負荷検査をして妊娠糖尿病と診断されました。 食生活で何を食べたらいいのか正直わからないので知りたいです
口腔内の強い乾燥について
この1〜2カ月、毎日、口の中が非常に乾燥しています。 寝ている時に夜中トイレに目覚めた際、朝起きた際、うたた寝して目が覚めたとき(食後にソファでうたた寝はほぼ毎晩)に起こります。 目覚めると唾液はなく、口の中が乾燥でパサパサして上顎が貼り付いて、開きづらい状態です。 乾燥した時に舌を観察しても、色や形、白色状態は以前と変わりません。 これまで経験したことのない状態です。 家屋の環境(乾燥、換気等)は何も変わりはありません。 独り暮らしなので、寝ている状態は自分では観察出来ません。 目が覚めた際、夜中であってもお湯を飲んでいますが、再び目覚めると乾燥状態は変わりません。 何か病気の前兆やサインなのでしょうか? 何かの栄養素が不足しているのでしょうか? この数カ月、野菜不足は否めません。 治療が必要でしたらどの診療科を受診すればよいでしょうか? 耳鼻咽喉科でしょうか? 以上、ご教示頂けますよう何卒よろしくお願いいたします。
立ちくらみ
仕事中、掃除をしている時に、急に立ち上がった時に、目の前が暗くなって見えたり、気が遠のいたり、立っている時にふらついたりします。原因として上げられる病名は何ですか?
右足がつる
1ヶ月程前から、夜中に毎日と言って良いほど、ふくらはぎがつって、驚いて起きます。 放っておけば良い位に考えてますが、何か悪い病があるのですか? 昨日は久しぶりに、朝まで、足がつりません。 毎日筋トレで、大腿四頭筋を鍛える運動をしてますが、ただの足の上げ下げです。何か、それと関係ありますか?その運動は3週間程やってるだけです。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「妊娠糖尿病」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。