DOCTOR’S
STORIES
恩師のもとで学んだ“メリハリ”を生かし、チームや研修医と接する山田 和彦先生のストーリー
私は、現在の勤務先に近い早稲田高校に通っていました。在籍していたクラスは理系だったので、そのまま早稲田大学の理工学部に進学して、その後は数学や理科を担当する教師になるのだろうなという漠然としたイメージをもっていました。しかし、高校3年生の夏頃、「このまま早稲田の理工に進んでいいのだろうか?」という疑問がふと浮かんだのです。特にきっかけはなく、人からの助言があったわけでもありませんでした。直感に近いでしょうか。この疑問に自分なりの答えを出すべく、「人の役に立てる職業につきたい」「人のためにできることってなんだろう」と考えぬいた末にたどり着いた答えが、医師でした。両親には、もちろん怒られましたよ、「なんで早稲田大学に行かないんだ」と。
高校3年生の夏に医学部への進学を決め、受験校は北海道大学と山形大学の2校に絞りました。その2校を選んだ理由は、競技スキーをやってみたかったから。子どもの頃から多少のスキー経験はあったのですが、競技スキーの選手の滑りを見て、“自分も競技スキーをやりたい!”という気持ちでいっぱいでした。幸いにも山形大学の医学部に合格することができ、競技スキーをやってみたいという夢も同時に叶いました。
医学部の学生が参加する競技スキーの大会には、経験者ばかりではなく、私のように医学生になってから始めた方も少なくありませんでした。あの頃は、おそらく年間で120日くらいは滑っていて、勉強をしている以外はほとんどスキーに時間を割いていたかと思います。言うまでもなく、競技スキーが中心の生活でした。そんな生活を5〜6年ほども続けていると、ある程度できるようになるものです。もちろん、50歳を超えた今でもスキーは楽しみの一つです。当たり前ですが、もう昔ほど速くは滑れないですけどね。
大学の卒業を控えていた時期、私は外科、泌尿器科、整形外科、耳鼻科、小児科の五つの診療科で進路を悩んでいました。先輩に相談したりもしました。そして、悩みに悩んだ挙句、「外科は大変だからやめたほうがいい。特に、うちの大学にある外科は大変だぞ」と言われていた外科を選ぶことにしたのです。理由は、患者さんに提供した治療の結果が、よい意味でも悪い意味でもある程度の期間で出るからです。私が行った手術次第で、患者さんの入院期間が変わりますし、下手したら予後が変わることもあるでしょう。自分には、そのほうが向いていると思ったのです。
そのときは現在のような研修医システムはなかった時代で、医学博士を取るため、山形大学の大学院へ進学しました。
山形にいたときは、山形大学の大学院4年、米沢の三友堂病院に4年、大学医学部附属病院に1年と計9年にわたり一般外科をしていました。2000年のこと、胃か乳腺の手術を行うがんを専門とする病院で学びたいと希望を伝え、当初2年の予定でがん研究会附属病院分院(現・がん研究会有明病院、以下同様)のシニアレジデントとして勉強の機会をいただいたのです。振り返れば、この機会こそが食道外科を専門にするきっかけとなったのです。
がん研究会附属病院分院では、最初の半年は胃外科チーム、その後は大腸外科チームにいて、その後も大腸外科チームがよいなと思っていました。しかし、それは突然に告げられたのです、「4月から食道外科チームに行ってほしい」と。私にとって、
正直にいえば、当時、食道外科だけは本当に嫌で嫌で……。告げられた際に、「3か月だけですよ。3か月たったら、大腸外科チームに戻してください」と強く希望を伝えたほどでした。それは、食道外科チームはそろいもそろっていつ見ても疲労が浮かんだ顔をしているし、いつ見ても病棟にいて、どうにもつらそうなイメージが強かったからです。ところが、食道のチームで、担当の患者さんを受け持たせてもらったり、手術を担当させてもらったり、そうこうしているうちに気がついたのです。「あぁ、食道外科の領域は奥深くて面白い」と。
食道外科では、手術前・手術中・手術後のみならず、退院後の外来も含め、その治療の全てのフェーズにおいて患者さんに対する慎重な全身管理が求められます。たとえば、合併症が生じても、それも自分たちのチームで責任を持って処置・管理していかなくてはなりません。野球に例えるならば、1番バッターから9番バッターまでこなせなくてはいけないというような。しかし、そのようなところにこそ面白さと興味深さを感じて、いつの間にか食道外科の道へ進むことを決意していました。
私が尊敬する
あれから、多くの月日が流れました。國土先生は2017年より、当センターの理事長をなさっています。尊敬する國土先生と、再び一緒に働けることを大変ありがたいと感じる毎日です。私が医師としての緊張感とモチベーションを健全に保っていられるのは、國土先生の存在が大きいです。
※國土 典宏先生のストーリー記事はこちら
私は、現在、食道外科の診療科長として診療科をまとめ、消化器外科診療部門長として消化器外科全体をまとめる立場にいます。多くの部下や研修医をまとめるにあたり、大切にしていること。それは、“よいことをしたときにはきちんと褒めて、悪いことをしたときにはきちんと叱る”というように、メリハリを持って接するということです。これは、がん研究会有明病院にいたときに、
2013年に国立国際医療研究センター病院の外科に食道外科医長として着任したとき、決して当院の診療科の雰囲気はよいとは言い難いものでした。私からしてみると、手術記録一つにしても内容が独自的な先生もいました。「これは、変えなければいけない」と、そんな思いから、時として部下や研修医の先生を強く叱ることもありました。おそらく、叱られたほうからしたら、“すごく怖い人”だと思われていたでしょう。しかし、私たちは患者さんの命を預かっている身です。きちんと責任を持って仕事をしてほしい。そのためには、やはり叱ったり褒めたり、メリハリを大切にしたいのです。そのように、メリハリを大切にすることで、おそらく診療科やチームがまとまるはずですし、部下や研修医の皆さんにもメリハリが生まれるのではないでしょうか。これからも、部下や研修医をまとめる立場として、メリハリを大切にして接していきたいと思います。
「とにかくたくさんのことを経験してほしい」と、私は若手医師の皆さんに伝えたい。若いうちは、“何件の症例を経験した”といった、分かりやすい数にとにかく意識が向いてしまうのではないかと思います。しかし、本当に経験した症例の“数”が全てなのでしょうか。
私は医師になってからの最初の4年間、大学院生でもあったので、そう多くの手術は経験しませんでした。ではその間、私が何をしてきたのかというと、病理を中心とした基礎的な研究でした。その後の病院でも手術を多くしてきた訳でもないと思います。そのような状況で、私が数少ない手術の中で意識していたことは、一つひとつの手術に対してじっくりと考えて時間をかけて向き合うこと。確かに、周りの先生と比較して若い頃に経験した症例数は少ないでしょう。しかし、しっかりと自分で考えて、時間をかけて症例に向き合うことを意識して行ってきた今、周りの医師の方々と手術の技量に差は感じていません。今では、若手の医師の皆さんに教える立場になっていますが、基礎的な研究で学んできたこと、そして数は少ないけれど症例にきちんと向き合ったからこそ学んだことを教えられるのは、今までの経験によって培われた強みだと思っています。
確かに、私も若かった頃は、“症例数が少ない”ということに焦りや不安を感じていた時期がありました。しかし、最終的に自分の強みになるのはそこではない。どれだけいろいろな経験をして、それを自分のものにできるかです。ぜひ、若手の医師の皆さんには、目先の数字や一つのことにとらわれることなく、さまざまな経験を積んで、自分の強みにしてほしいと思います。
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国立国際医療研究センター病院
国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター センター長、AMR臨床リファレンスセンター センター長
大曲 貴夫 先生
国立国際医療研究センター病院 外科
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国立国際医療研究センター病院 産婦人科 診療科長
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国立国際医療研究センター病院 呼吸器内科診療科長 第一呼吸器内科医長
放生 雅章 先生
国立国際医療研究センター 呼吸器内科
高崎 仁 先生
国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 元副院長・元脳卒中センター長・非常勤、順天堂大学大学院 医学研究科客員教授
原 徹男 先生
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科 非常勤
梶尾 裕 先生
国立国際医療研究センター病院 外科 鏡視下領域手術外科医長
野原 京子 先生
国立国際医療研究センター病院 整形外科 診療科長
桂川 陽三 先生
国立国際医療研究センター病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 診療科長、耳鼻咽喉科・頭頸部外科 医長、音声・嚥下センター長
二藤 隆春 先生
国立国際医療研究センター 心臓血管外科 元科長・非常勤、北里大学医学部 診療准教授
宝来 哲也 先生
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 理事長、東京大学 名誉教授
國土 典宏 先生
国立国際医療研究センター病院 がん総合診療センター 副センター長、乳腺・腫瘍内科 医長
清水 千佳子 先生
国立国際医療研究センター病院 乳腺内分泌外科 医長・診療科長
北川 大 先生
一般社団法人新宿医師会区民健康センター 所長、山王病院(東京都) 産婦人科、国立国際医療研究センター 産婦人科
箕浦 茂樹 先生
国立国際医療研究センター病院 眼科診療科長
永原 幸 先生
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冨尾 賢介 先生
国立国際医療研究センター病院 肝胆膵外科 診療科長
稲垣 冬樹 先生
国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科 医師
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国立国際医療研究センター病院 腎臓内科 診療科長
高野 秀樹 先生
国立国際医療研究センター病院 理事長特任補佐/循環器内科 科長
廣井 透雄 先生
国立国際医療研究センター病院 消化器内科 医長・診療科長
秋山 純一 先生
国立国際医療研究センター病院 腎臓内科 血液浄化療法室統括医
片桐 大輔 先生
国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 小児科 医員
七野 浩之 先生
国立国際医療研究センター病院 膵島移植診療科 診療科長、膵島移植センター センター長、国立国際医療研究センター研究所 膵島移植企業連携プロジェクト プロジェクト長
霜田 雅之 先生
国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科診療科長、第二内分泌代謝科医長、内分泌・副腎腫瘍センター長
田辺 晶代 先生
国立国際医療研究センター病院 肝胆膵外科
三原 史規 先生
国立国際医療研究センター病院 形成外科・診療科長 国際リンパ浮腫センター・センター長、リンパ超微小外科臨床修練プログラムディレクター
山本 匠 先生
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 歯科・口腔外科 診療科長、高度先進医療診療科 診療科長、臨床研究センター 産学連携推進部 医工連携室長、高度先進医療診療科 細胞調整管理室長
丸岡 豊 先生
国立国際医療研究センター病院 食道胃外科 医師
榎本 直記 先生
国立国際医療研究センター 脳神経内科 科長
新井 憲俊 先生
国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 産婦人科 産科医長
定月 みゆき 先生
国立国際医療研究センター病院 心臓血管外科 診療科長
井上 信幸 先生
国立国際医療研究センター病院 消化器内科 診療科長
山本 夏代 先生
国立国際医療研究センター病院 脊椎外科 科長
松林 嘉孝 先生
国立国際医療研究センター 国際医療協力局 人材開発部研修課
井上 信明 先生
国立国際医療研究センター病院 がんゲノム科 診療科長、第三呼吸器内科 医長、外来治療センター 医長、がん総合診療センター 副センター長
軒原 浩 先生
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 精神科科長 メンタルヘルスセンター長
加藤 温 先生
国立国際医療研究センター病院 病院長/泌尿器科 診療科長/第一泌尿器科 医長
宮嵜 英世 先生
国立国際医療研究センター病院
服部 貢士 先生
国立国際医療研究センター病院 がん総合内科診療科長/乳腺・腫瘍内科
下村 昭彦 先生
国立国際医療研究センター病院 第四呼吸器内科医長
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