群馬県藤岡市にある公立藤岡総合病院は、1951年の開設から70年以上にわたり地域医療の中核的な役割を担ってきました。2017年には新病院が誕生し、急性期医療から在宅復帰のサポートまで一貫した医療を提供しています。
そんな同院が担う役割や今後の展望について、病院長である設楽 芳範先生にお話を伺いました。
当院は1951年に病床数42床を有する多野病院として設立されました。その後、1997年に現在の公立藤岡総合病院となり、2017年の新病院開院を経て現在に至ります。病院の名前に“公立”とあるように、当院は藤岡市・高崎市・神流町・上野村によって構成される多野藤岡医療事務市町村組合によって運営されており、公的な医療機関として(1)地域医療(2)救急医療(3)がんチーム医療(4)小児・周産期医療(5)災害・感染(6)教育研修の6つの使命のもとに診療をしています。
来院される患者さんは、当院が属する藤岡医療圏(藤岡市・神流町・上野村)にお住まいの方はもとより、高崎市や埼玉県の北部エリアからお越しになる方も少なくありません。当院に信頼を寄せてくださる患者さんの期待にお応えできるよう、高度急性期医療をいっそう充実させるとともに、地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟の運用、訪問看護ステーションや健診事業などさまざまな活動を通して地域医療に貢献したいと考えています。
当院は二次救急医療機関として24時間365日体制の救急医療を行うほか、地域医療支援病院、地域がん診療連携拠点病院、地域災害拠点病院などさまざまな役割を担っています。地域医療を支える地域医療支援病院としては、近隣の医療機関との連携を密にすることによって地域の患者さんが地域の中で安心して医療を受けられる体制づくりに努めています。
地域がん診療連携拠点病院の役割は、がんに対する標準治療(手術・化学療法・放射線療法)や緩和ケアなど集学的な治療を行うことです。当院では多職種によるチーム医療を実践し、患者さんやご家族を支えています。
地域災害拠点病院としての活動として、新しいところでは2024年1月1日に発生した能登半島地震の折にDMAT(災害派遣医療チーム)を派遣しました。当院には日本災害リハビリテーション支援協会に所属する医師や災害支援ナースなどが在籍しており、被災地支援活動に積極的にも取り組んでいます。
当院では内科系と外科系を合わせて27の診療科があり、それぞれに専門性の高い診療を行っています。PET-CT、SPECT-CT、血管撮影装置に加えて、CT装置とMRI装置を2台ずつ導入することで精度の高い検査・診断を行うほか、リニアック(高精度放射線治療装置)を用いたがん治療に対応していることも特徴です。HCU(高度治療室・24床)、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟など合計399床を活用し、安全性が担保された良質な医療の提供を目指しています。
虚血性心疾患、心不全、不整脈、真菌症、心臓弁膜症、高血圧症をはじめとした循環器疾患の診断・治療を行う循環器内科では、急性心筋梗塞や不安定狭心症に対する緊急カテーテル治療に24時間体制で対応しています。
白血病や悪性リンパ腫などの血液疾患を担当する血液内科は、他科と連携することで合併症のある患者さんの治療にも対応しています。慢性腎臓病やネフローゼ症候群などを診る腎臓内科・リウマチ内は合計31台(固定式29台・可動式2台)の透析用コンソールを有し、新規の透析導入や緊急透析にも対応しています。
肺がん、呼吸器感染症、間質性肺疾患、慢性閉塞性肺疾患、気管支喘息呼吸不全などを診療する呼吸器内科では、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬などの登場によって肺がんの治療成績が向上しています。
主に消化管疾患の診断・治療を行う消化器内科は、年間7,000件以上(上部・約5,600件/下部・約1,500件)の内視鏡検査を実施するとともに、食道・胃・大腸の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)にも取り組んでいます。
当院の外科は、消化器、呼吸器、乳腺・内分泌、小児、一般外科を幅広くカバーします。年間約700件実施する手術の内訳は悪性腫瘍が約280件となっており、腹腔鏡や胸腔鏡を用いて体への負担が少ない低侵襲手術に取り組んでいます。
骨折などの外傷手術を中心に診療する整形外科には、隣接する高崎市や埼玉県のほうからお越しになる患者さんも少なくありません。脳神経外科も広い範囲から患者さんを受け入れており、脳卒中、頭部外傷、てんかん、脳腫瘍など緊急性の高い病気に対して迅速な治療を行える体制を整えています。
2017年の新病院開設とともに新たにスタートしたのが歯科口腔外科の診療です。群馬大学口腔顔面外科・形成外科と連携して難症例といわれる抜歯に対応するほか、歯性上顎洞炎や口腔悪性腫瘍に対する手術やインプラント埋入なども行っています。
当院の小児科は各種専門外来を開設し、小児の病気を幅広く診療しています。一方の産婦人科は群馬大学の協力を得て、夜間・休日を問わずお産をサポートしています。高性能超音波診断装置を活用してハイリスク分娩をはじめとした地域周産期の要を担い、年間の分娩数は180件ほどになります。
また外来棟3階にある健康管理センターでは各種健康診断や人間ドックなどに対応し、地域の方々の健康維持・増進をサポートしています。
私は群馬大学医学部を卒業して医師になり、呼吸器や消化器を専門にする外科医として母校の大学病院をはじめ埼玉、高知、大阪、広島など各地の医療機関で経験を積みました。その後2009年より当院で診療するようになり、2024年4月に病院長を拝命しました。
当院は全職員が“安全優先”の価値観を共有し、多職種によるチーム医療を実践しています。地域の方々に当院を身近に感じていただけるよう、インスタグラムで情報発信したり、年に4回広報誌を発行したり、さまざまな取り組みを行っています。また未来の医療を担う医療人材の確保を目的として、小・中・高校生を対象にした病院見学や職場体験学習を実施したり、医師や看護師の教育に力を入れたりすることで地域医療の維持・充実に努めています。
今後も質が高く、安全が確保された医療提供を行うことによって、地域の皆さまの暮らしを支えてまいります。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
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