院長インタビュー

地域医療を担う公的病院として、高度専門的医療を提供する福岡市民病院

地域医療を担う公的病院として、高度専門的医療を提供する福岡市民病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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福岡県福岡市博多区の福岡市民病院は、福岡市東部を中心にしたエリアで地域医療を担う中核的な病院です。がん脳卒中・心血管疾患・糖尿病の4疾病を中心に、高度専門的医療を提供している同院の役割や今後について、院長の堀内 孝彦(ほりうち たかひこ)先生に伺いました。

先方提供
外観(提供:福岡市民病院)

当院は、1928年に旧筑紫郡粕屋町と千代町の福岡市合併をきっかけに移行した“市立松原病院”に由来します。その後1989年に現在の地に新築移転し、地域医療の提供、充実に尽力しています。2010年には病院運営の形態が地方独立行政法人となり、“地方独立行政法人福岡市立病院機構 福岡市民病院”として新たなスタートを切りました。

当院があるのは福岡市の東部で、福岡空港や博多港、博多駅などから近く、立地条件のよい場所にあります。来院される患者さんは博多区と東区、糟屋郡で約4分の3を占めており、地域的な特性から肝炎肝硬変肝がんの患者さんが多いエリアです。また、福岡市は医療インフラが充実しており、隣接する東区には九州大学病院があります。ただ、近隣には当院より規模が大きい病院がないことから、福岡市東部を中心とした地域医療においては、中心的な役割を担っています。

当院では、福岡県の保健医療計画に掲げられている、がん脳卒中、心血管疾患、糖尿病の4疾患に対する高度専門的医療の提供に力を入れるとともに、地域特性により患者さんが多い腎臓や、肝臓ならびに脊椎疾患の病気に対応しています。また、救急においては福岡市を中心とした医療圏における2次救急(入院や手術を要する重症患者への救急医療)を担うと同時に、3次救急(生命に関わる重症患者に対応する救急医療)患者の受け入れにも柔軟に対応しています。

また、第二種感染症指定医療機関であるとともに新型インフルエンザ等対策特別措置法における指定地方公共機関の指定を受けているのも特徴の1つで、2020年初めから流行が始まった新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)への対応では、感染の疑いのある患者さんを積極的に受け入れ、重症の患者さんへの対応も行いました。

当院は、福岡市を中心にした医療圏で2次救急を担っており、重度の意識障害や、重症低酸素血症、心肺停止など、3次救急患者の受け入れにも柔軟に対応しています。モットーは“断らないこと”で、こうした対応をするのは、“当院ならば受け入れが可能だと、救急隊の方が判断しているから”と考えているためです。

注力しているのは脳卒中心筋梗塞等の救急診療で、SCU(脳梗塞脳出血くも膜下出血などの脳血管障害に対する急性期治療を行う集中治療室)、CCU(冠動脈疾患集中治療室)を設置しています。特にSCUでは脳神経内科、または脳神経外科の医師が365日24時間体制で常駐し、脳血管障害の患者さんを迅速かつ柔軟に診療しています。また、福岡市消防局の協力を得てドクターカーシステム(ワークステーション方式)を取り入れ、心停止や現場で医師の判断処置が必要なケースでは、救急隊とともに当院の医師が現場へ直行するケースもあります。

福岡市博多区は福岡空港や博多港に近く、多くの外国人の方が来訪されていることから、新興感染症が海外から持ち込まれるリスクが考えられます。そのような中で当院は2014年に“第二種感染症指定医療機関”の指定を受けるとともに、2015年には新型インフルエンザ等対策特別措置法における指定公共機関に指定されました。

また、2020年初めから流行が始まった新型コロナウイルス感染症への対応では、第二種感染症指定医療機関として疑いのある患者さんや陽性者を真っ先に診て、重症の患者さんを優先的に受け入れました。現在は、新型コロナ流行前の生活にほぼ戻りましたが、感染症のリスクがゼロになったわけではありません。注意が必要な感染症は新型コロナ以外にもありますので、各種感染症の発生動向に注意しながら、積極的な対策を講じていく方針です。

当院では、地域のニーズが高い疾患については医療専門チーム(センター)を開設して診療にあたっています。

たとえば、脳卒中をはじめ頭部外傷脳腫瘍(のうしゅよう)、神経難病など脳・脊髄(せきずい)末梢神経疾患(まっしょうしんけいしっかん)全般は脳神経・脳卒中センター、虚血性心疾患狭心症、心筋梗塞)や心不全不整脈高血圧などはハートセンター、糖尿病疾患は糖尿病センター、肝臓・胆のう・すい臓の疾患は肝・胆・膵センターが対応します。また、診療科ごとに医局を設けていないことから各科の垣根が低く、たとえば、糖尿病センターの担当医が眼科、血管外科、脳卒中センター、整形外科、循環器内科と協同で毎日の診療にあたるなど、診療科をまたいだ連携が強固であることが、当院の強みと言えます。

公的病院としての使命を果たすため、大規模災害が県内外で発生した際にはスタッフを派遣し、現地での災害支援を行っています。たとえば、1995年に発生した阪神淡路大震災や2005年の福岡県西方沖地震、2007年の新潟県中越沖地震、2011年の東日本大震災などでは、当院の医師や看護師などを派遣しました。また、2016年の熊本地震では発生直後から延べ50名のスタッフを派遣したほか、2018年の西日本豪雨災害、2024年の能登半島地震では、JMAT(日本医師会災害医療チーム)の一員として医療チームを派遣しています。

福岡市立病院機構が運営する医療機関には、当院のほかに小児高度専門医療、周産期医療、小児救急医療を主に提供している福岡市立こども病院があります。同院と協力して、胎児期から小児期までをこども病院が、成人期の診療を当院が担うことで、地域の皆さんが必要とする医療をシームレスに提供できます。特に小児慢性疾患の患者さんが成人する際には、成人科への移行期医療が円滑に進みますので、患者さんの不安が大きく解消されるはずです。今後もこうした関連機関や、地域の医療機関との連携と協力を積極的に推し進めていきたいと思います。

当院は理念として“こころをつくした質の高い医療を通じてすべての人の尊厳を守ります”と掲げています。この理念を実現するため、さまざまな部門が連携して質の高い医療を提供するとともに、患者さん一人ひとりに寄り添っていきたいと思っています。

また、公的病院としての役割と責任を自覚し、地域に根づいた医療を迅速かつ的確に提供していく所存です。医師や看護師をはじめとした医療スタッフは皆、高いモチベーションを持っていますので、期待にお応えすることができると自負しております。今後も地域の皆さんに信頼され、必要とされる病院を目指してまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

*提供している医療の内容等についての情報は全て、2024年6月時点のものです。

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