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貧血:医師が考える原因と対処法|症状辞典

貧血

医療法人社団ときわ 理事長、医療法人社団ときわ 赤羽在宅クリニック 院長

小畑 正孝 先生【監修】

体に酸素を送り届ける赤血球中の“ヘモグロビン”濃度が低下する貧血は、動悸・息切れ・めまい・倦怠感などさまざまな症状を引き起こします。年齢や性別を問わず非常によく見られる症状の1つではありますが、好ましくない生活習慣から重篤な病気など原因はさまざまです。なかには思いもよらない原因が潜んでいることも少なくありません。

  • 特に悪いところはないが、体を動かすと動悸やめまいが起こりやすい
  • 普段から経血量が多く、月経後は特に体がだるくなる
  • 数週間前から上腹部に鈍い痛みがあり、動悸や息切れがするようになった

これらの症状が見られた場合、原因としてどのようなものが考えられるでしょうか。

貧血は病気によって引き起こされることがあります。具体的には次のような病気が挙げられます。

貧血は血液の細胞の1つである赤血球の表面に含まれる“ヘモグロビン”というタンパク質の濃度が低下する症状です。ヘモグロビンが正常に生成されるためには鉄分が必要であるため、鉄分が不足した状態が続く病気を発症すると貧血が引き起こされます。

具体的には以下のような病気が挙げられます。

鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血とは、ヘモグロビンの材料である鉄分が不足することにより正常にヘモグロビンが産生されなくなることによって引き起こされる病気のことです。貧血にはさまざまな種類がありますが、もっとも多いのがこの鉄欠乏性貧血とされています。

鉄欠乏性貧血の原因はさまざまで、体内に取り入れられる鉄分の不足、思春期や妊娠期など鉄分の必要量が増えること、月経過多や胃潰瘍(いかいよう)など出血が多くなる病気によって鉄分が失われることなどが挙げられます。

軽症な場合には鉄分を投与することや生活習慣を見直すことなどで症状は改善しますが、上述した病気が原因の場合にはその病気の治療をする必要があります。

鉄欠乏性貧血
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子宮筋腫、子宮内膜症など

経血量の増加を引き起こす子宮筋腫子宮内膜症などの病気によって貧血が引き起こされることもあります。これらの婦人科系の病気による貧血は経血量の増加だけでなく、強い生理痛や生理不順、不正出血などを引き起こすことがあります。また、生理後に特に貧血症状が強くなるのも特徴です。

子宮筋腫
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子宮内膜症
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消化管出血

食道がん胃潰瘍胃がん大腸がんクローン病潰瘍性大腸炎など消化管で出血が生じる病気を発症すると、血液が失われる状態が続くため貧血を引き起こすことがあります。貧血のほかに腹痛、吐き気、食欲不振血便、吐血などさまざまな症状を伴いますが、貧血症状が続くことで病院を受診し、発見されるケースも少なくありません。

食道がん
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胃潰瘍
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胃がん
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大腸がん
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クローン病
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潰瘍性大腸炎
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貧血は以下のような血液の病気が原因で引き起こされることがあります。

赤血球が正常に作られなくなる病気

白血病、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群多発性骨髄腫など赤血球が骨髄で正常に作られなくなる病気によって引き起こされることがあります。

これらの病気は赤血球だけでなく、同じく血液の細胞である白血球や血小板なども同時に減少するケースが多く、貧血以外にも免疫力が低下して感染症にかかりやすくなる、血が止まりにくくなるといった症状を伴います。

白血病
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再生不良性貧血
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骨髄異形成症候群
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多発性骨髄腫
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赤血球が壊れやすくなる病気

体内で作られた赤血球の寿命は120日前後とされていますが、鎌状赤血球症、サラセミア、寒冷凝集素症、自己免疫性溶血性貧血など赤血球が壊れやすくなる病気を発症すると貧血を引き起こしやすくなります。このような病気を原因とする貧血を“溶血性貧血”と呼び、黄疸(おうだん)脾臓(ひぞう)の腫れなどの症状を伴うのが特徴です。

サラセミア
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自己免疫性溶血性貧血
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貧血の3分の1は以下のような、徐々に発症し長期間にわたって症状が続く“慢性疾患”が原因とされています。

慢性腎不全

腎臓からは赤血球の産生を促進する“エリスロポエチン”と呼ばれる物質が産生されています。そのため、腎臓の機能が低下した状態が続く慢性腎不全を発症すると赤血球が十分に作られなくなるため貧血が引き起こされます。このようなメカニズムで生じる貧血を“腎性貧血”と呼び、治療には不足したエリスロポエチンを補うことも必要になります。

慢性炎症性疾患

関節リウマチなど免疫系統の異常によって引き起こされる病気、がんなど体内で長く炎症が続く病気では、赤血球の寿命を短くする“サイトカイン”と呼ばれる物質が多く作られるようになります。その結果、長い病気の経過の中で貧血を引き起こしやすくなるのが特徴です。

関節リウマチ
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貧血は好ましくない生活習慣などによっても生じるため、日常的によく見られる症状の1つです。しかし、上で述べたような重篤な病気が背景にある可能性もあり、放置して重症化すると心臓に負担がかかるため心不全などを引き起こすケースも少なくありません。

特に、急激に動悸や息切れなどの症状が強くなった場合、貧血症状以外にも月経過多や腹痛などほかの随伴症状を伴う場合、日常生活が困難になるほどの貧血症状がある場合などはできるだけ早めに病院を受診することが大切です。

初診に適した診療科は随伴する症状によって異なり、消化器症状がある場合は消化器内科、月経過多がある場合は婦人科などを選ぶとよいでしょう。随伴症状がなく、どこの診療科にかかればよいか分からない場合は一般的な内科を受診するのが適しています。また、診療科に限らずかかりつけ医がある場合はそこで相談するのも1つの方法です。

病院を受診した際には、いつから症状があるのか、ほかにどのような症状があるのか、食生活の乱れなど思いあたる生活習慣はないかなどについて詳しく医師に伝えるようにしましょう。

貧血は病気によって引き起こされるケースが多いですが、以下のような日常生活上の好ましくない習慣が原因で引き起こされることもあります。

上述したようにヘモグロビンの生成に必要な鉄分が不足すると貧血を引き起こすことがありますが、食生活の乱れによって鉄分が不足するケースは少なくありません。

また、鉄分の吸収にはビタミンも必要なため、ビタミン不足でも貧血を生じるケースがあります。

鉄分やビタミンを摂取する

1日あたりの鉄分摂取推奨量は成人男性で7.5mg、月経がある成人女性で10.5mg、月経のない女性で6.5mgとされています。レバー、ホウレンソウなどの野菜、ひじきなどの海藻類など鉄分が多い食材を積極的に摂取するようにしましょう。

また、食事から十分量の鉄分やビタミンが取れない場合はサプリメントなどを活用するのも1つの方法です。

アルコールの多飲によって鉄分の吸収に必要なビタミン類の吸収が減少すると貧血を引き起こすことがあります。

節酒を心がける

アルコールによる貧血を防ぐには適度な飲酒量を守ることが大切です。節度ある適度な飲酒量として推奨されるのは1日あたり純アルコールで20g(ビール中瓶1本、日本酒1合)程度とされています。また、連日の飲酒は避け、いわゆる“休肝日”を作るのもよいでしょう。

日常生活上の習慣を改善しても貧血症状がよくならない場合は、上で述べたような思いもよらない病気が隠れている可能性が考えられます。軽く考えず、できるだけ早めに病院を受診するようにしましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。