DOCTOR’S
STORIES
腹腔鏡下手術と不妊治療を専門とする大石 元先生のストーリー
今でこそやりがいを感じながら医師の仕事に従事していますが、高校生のとき、最初は外交官になりたいと思っていました。世界への憧れが強かった私は、英語が大好きだったのです。実際に、ラジオの英会話を聞くなどするうちに英語がすごく得意になっていました。
しかし、ちょうど変化の激しい時代。ソ連がなくなったりベルリンの壁が壊されたり、さまざまな世界のニュースを知るうちに“外交官になったら大変かも”と思うようになりました。さらに、英語は好きだったものの文系の人間ではないように感じていました。機械をいじることなど、もともと細かい作業が好きだったこともあり、それならば理系に進もうかなと思うようになりました。
また、会社員だった父の「会社に振り回される生活は大変だぞ」という言葉も影響し、漠然と資格のある仕事に就きたいと思っていました。そこで選んだのが医師だったのです。
産婦人科を専門に選んだのは、外科にも内科にも携わることができる分野だったからです。産婦人科医であれば、手術に従事することもできますし、ホルモン治療など内科的な治療に携わることもできます。このような診療の多様性に惹かれて産婦人科医を選びました。
今でもこの選択は間違っていなかったと思っています。“ゆりかごから墓場まで”といわれるように、さまざまな年齢層の患者さんの診療に携われることがやりがいにつながっています。
私の主な専門は、生殖内分泌と
大学卒業後は東京大学医学部附属病院の産婦人科(現・女性診療科・産科)に入局。入局後の3年間は臨床に携わり、その後の3年間は大学院で研究に従事しました。そして大学院4年生のときに再び臨床の世界に戻ってきたのです。その時期の1年程は、
この経験は、不妊治療に携わるうえで、とても役立ちました。今でも、受精卵を見ただけで大体どのような状態か分かります。また、共に働く胚培養士さんが具体的にどのような仕事をしているのか理解することもできます。たとえば、胚培養士さんから業務が大変という訴えがあったとしても業務内容を理解しているので「じゃあこうしよう」とすぐに提案することが可能です。
一方、もう1つの専門である腹腔鏡下手術には、医局に入局して8年目くらいのときに携わるようになりました。それ以前から少しずつ携わっていたものの、本格的に
*胚培養士:受精卵の管理など顕微授精や体外受精などに携わることを業務とする医療技術者
これまでに、さまざまな患者さんの不妊治療に携わってきました。もちろん妊娠にいたるケースばかりではないですが、患者さんが妊娠して「無事に出産しました」と報告を受けると嬉しいです。
たとえば、体外受精を受けていた40歳代の患者さん。この方は1回目の体外受精で妊娠したものの残念ながら流産してしまいました。その後、何回も体外受精に取り組むものの妊娠にはいたりません。受精卵を凍結して再び戻すなどさまざまな試みをしましたが、それでも妊娠されませんでした。そして迎えた8回目の体外受精。その際に、受精卵の状態が良好であったこともあり、無事に妊娠・出産されたのです。その方は今でも毎年年賀状を送ってきてくれます。
ほかにも、足かけ5~6年にわたって私のところに通い続けてくれた患者さんもいらっしゃいます。この方は、子宮筋腫と子宮内膜症を抱えていらっしゃいました。妊娠・出産を希望されていたので、手術後に妊活に取り組みましたが妊娠にはいたりませんでした。その後、体外受精に取り組むものの、子宮内膜症が再発してしまったり卵管に水がたまってしまう病気を発症されたりと厳しい状態でした。そうして再び手術をした後に妊娠・出産されたのです。本当によかったと安堵したことを覚えています。
診療の際には、最初に患者さんが何に困っているのかをお伺いするようにしています。たとえば、大きな子宮筋腫があったとしても、患者さんのニーズに合っていないならば必ずしもすぐに手術する必要はないと思っています。
患者さんとお話しする際には、よいことも悪いことも含めて正直にお伝えすることを大切にしています。不妊治療を希望される患者さんには、治療をスタートする前に年齢や体の状態から妊娠が難しい場合には、それをきちんと伝えるようにしています。そのうえで、なるべく希望を与えられるような話し方をするよう心がけています。伝え方は難しいですが、診療の結果、患者さんの元気がなくなってしまうのはよくないと考えているからです。
また、私は、産婦人科医には女性のトータルヘルスケアを担う役割があると思っています。このように考えるようになったのは、更年期外来に携わった経験が影響しているのかもしれません。産婦人科医は最初のゲートキーパーのようなもので、老化の第一歩の症状を見極めることも大切な仕事であると思っています。たとえば、診療を行うなかで骨粗しょう症の兆候のある患者さんがいらっしゃる場合には、それを発見し治療につなげることも私たちの大切な役割です。
医師人生の中でも、東京大学医学部附属病院から国立国際医療研究センター病院への入職は、1つの転機であったと思っています。医局の上司からお誘いいただき、自分の能力を生かすことができればという思いで決断しました。
現在は診療や手術とともに後進の育成にも取り組んでいます。現在の当院の産婦人科には女性医師が多く、妊娠・出産を経ても働き続けるスタッフが多い点が特徴です(2020年8月時点)。
指導の際には、とにかく成長できる機会をたくさん与えるよう努めています。ある程度任せる勇気は必要だと思っているので、口で指導しながら、実際にやってもらうようにしています。ただし、取り組んでもらった過程や結果が思わしくないときは、それをきちんと伝えるようにしています。
スタッフそれぞれの能力を見出して任せると、手術もものすごく上手になります。実際に診療科の中核メンバーへと成長したスタッフも少なくありません。
私にとって、患者さんに「ありがとうございました」という言葉をいただくことが一番の原動力だと思っています。また、難しい手術が無事にうまくいったときも嬉しいですね。
今後は、当院でますますよい人材を育てていきたいです。自分自身も現在取り組んでいる腹腔鏡下手術やロボット手術の技術をさらに磨き、第一線を走っている方たちと同じレベルに到達したいと思っています。
この記事を見て受診される場合、
是非メディカルノートを見たとお伝えください!
国立国際医療研究センター病院
国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター センター長、AMR臨床リファレンスセンター センター長
大曲 貴夫 先生
国立国際医療研究センター病院 外科
合田 良政 先生
国立国際医療研究センター病院 呼吸器内科診療科長 第一呼吸器内科医長
放生 雅章 先生
国立国際医療研究センター 呼吸器内科
高崎 仁 先生
国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 元副院長・元脳卒中センター長・非常勤、順天堂大学大学院 医学研究科客員教授
原 徹男 先生
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科 非常勤
梶尾 裕 先生
国立国際医療研究センター病院 食道胃外科 医長
山田 和彦 先生
国立国際医療研究センター病院 外科 鏡視下領域手術外科医長
野原 京子 先生
国立国際医療研究センター病院 整形外科 診療科長
桂川 陽三 先生
国立国際医療研究センター病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 診療科長、耳鼻咽喉科・頭頸部外科 医長、音声・嚥下センター長
二藤 隆春 先生
国立国際医療研究センター 心臓血管外科 元科長・非常勤、北里大学医学部 診療准教授
宝来 哲也 先生
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 理事長、東京大学 名誉教授
國土 典宏 先生
国立国際医療研究センター病院 がん総合診療センター 副センター長、乳腺・腫瘍内科 医長
清水 千佳子 先生
国立国際医療研究センター病院 乳腺内分泌外科 医長・診療科長
北川 大 先生
一般社団法人新宿医師会区民健康センター 所長、山王病院(東京都) 産婦人科、国立国際医療研究センター 産婦人科
箕浦 茂樹 先生
国立国際医療研究センター病院 眼科診療科長
永原 幸 先生
国立国際医療研究センター病院 第二婦人科 医長
冨尾 賢介 先生
国立国際医療研究センター病院 肝胆膵外科 診療科長
稲垣 冬樹 先生
国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科 医師
小谷 紀子 先生
国立国際医療研究センター病院 腎臓内科 診療科長
高野 秀樹 先生
国立国際医療研究センター病院 理事長特任補佐/循環器内科 科長
廣井 透雄 先生
国立国際医療研究センター病院 消化器内科 医長・診療科長
秋山 純一 先生
国立国際医療研究センター病院 腎臓内科 血液浄化療法室統括医
片桐 大輔 先生
国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 小児科 医員
七野 浩之 先生
国立国際医療研究センター病院 膵島移植診療科 診療科長、膵島移植センター センター長、国立国際医療研究センター研究所 膵島移植企業連携プロジェクト プロジェクト長
霜田 雅之 先生
国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科診療科長、第二内分泌代謝科医長、内分泌・副腎腫瘍センター長
田辺 晶代 先生
国立国際医療研究センター病院 肝胆膵外科
三原 史規 先生
国立国際医療研究センター病院 形成外科・診療科長 国際リンパ浮腫センター・センター長、リンパ超微小外科臨床修練プログラムディレクター
山本 匠 先生
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 歯科・口腔外科 診療科長、高度先進医療診療科 診療科長、臨床研究センター 産学連携推進部 医工連携室長、高度先進医療診療科 細胞調整管理室長
丸岡 豊 先生
国立国際医療研究センター病院 食道胃外科 医師
榎本 直記 先生
国立国際医療研究センター 脳神経内科 科長
新井 憲俊 先生
国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 産婦人科 産科医長
定月 みゆき 先生
国立国際医療研究センター病院 心臓血管外科 診療科長
井上 信幸 先生
国立国際医療研究センター病院 消化器内科 診療科長
山本 夏代 先生
国立国際医療研究センター病院 脊椎外科 科長
松林 嘉孝 先生
国立国際医療研究センター 国際医療協力局 人材開発部研修課
井上 信明 先生
国立国際医療研究センター病院 がんゲノム科 診療科長、第三呼吸器内科 医長、外来治療センター 医長、がん総合診療センター 副センター長
軒原 浩 先生
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 精神科科長 メンタルヘルスセンター長
加藤 温 先生
国立国際医療研究センター病院 病院長/泌尿器科 診療科長/第一泌尿器科 医長
宮嵜 英世 先生
国立国際医療研究センター病院
服部 貢士 先生
国立国際医療研究センター病院 がん総合内科診療科長/乳腺・腫瘍内科
下村 昭彦 先生
国立国際医療研究センター病院 第四呼吸器内科医長
西村 直樹 先生
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