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片耳の高度難聴「一側ろう」はおたふくかぜ後遺症でも―周囲の配慮や協力で不便軽減を

公開日

2022年10月19日

更新日

2022年10月19日

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2022年10月19日

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片方の耳が高度の難聴である状態を「一側ろう」(一側性難聴)と言います。あまり聞きなれない病名ですが、実は500~1000人に1人という比較的高い頻度で起こります。もう一方の耳は正常に聞こえるため症状が目立ちにくく、就学時健診などで見つかるケースも珍しくありません。

おたふくかぜウィルスも「一側ろう」の原因に

「一側ろう」の原因は、先天性のものと、後天的のものがありますが、後天的なものの代表が、おたふくかぜ(ムンプス)の後遺症として起こる「ムンプス難聴」です。2018年4月~放送のNHK連続テレビ小説「半分、青い」のヒロインは幼少期に左耳の聴力を失いますが、その原因がまさにこの「ムンプス難聴」でした。

おたふくかぜというと、ほっぺた(耳下腺)が腫れる、高熱が出るというイメージがありますが、そのようなはっきりした症状がない場合でも、体内に侵入したムンプスウィルスによって、内耳の細胞がダメージを受け、ムンプス難聴を発症することもあります。つまり、おたふくかぜのワクチン接種はムンプス難聴を防ぐことにもつながるのです。

「一側ろう」には残念ながら有効な治療法がありません。聴力の左右差が大きいので、補聴器も効果がないことが多いと言われています。

ただ、片方の耳は聞こえていますので、小さなお子さんの言葉の習得に大きな問題はありません。

周りの人たちの配慮で不便は軽減されます

「一側ろう」の患者さんには

  • 難聴がある側から声をかけられると聞こえない
  • どこから声をかけられたかわからない
  • うるさい場所では話が聞き取りにくい
  • 他のことに熱中していると気配に気づきにくい

――などの不便は確かにあります。

けれども、例えば、

  • できるだけ聞こえる側から話しかけてもらう
  • 学校や職場では聞こえやすい席や立ち位置を確保する
  • うるさい場所を避ける
  • 道を歩くときは聞こえる側の耳が車道に向くようにする

――といった工夫によって、それらの不便を軽減していくことは十分に可能です。実際に、患者さんの多くは、大きな制約を受けることなくごく普通の日常生活を送っていらっしゃいます。

また、学校の先生や友人、職場の上司や同僚などに病気のことを打ち明け、まわりの人たちからの配慮や協力を得ることもとても大切です。

聞こえる方の耳のケアは慎重に

片方の耳が聞こえなくなった原因によっては、聞こえるほうの耳もだんだん聞こえなくなってくる可能性もあります。ですので聞こえない原因はきちんと調べておくほうが良いでしょう。

また、大きな音をいつも聞いていたり、中耳炎などに罹患して難聴となるおそれはすべての人にあります。「一側ろう」の患者さんの場合、聞こえる方の耳が悪くなってしまうと両耳聞こえなくなってしまいますのでより注意が必要だと言えます。大切な耳を守るためにおたふくかぜワクチンや肺炎球菌ワクチンなどのワクチン接種で予防できるものはきちんと対策を取り、定期的に耳鼻咽喉科を受診するよう心がけましょう。

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「Hearwell, Enjoy life―快聴で人生を楽しく」より引用

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