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嗅覚低下で“味気ない”人生に―加齢が最大のリスク要因、予防には運動が有効

公開日

2022年04月21日

更新日

2022年04月21日

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2022年04月21日

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においもおいしさのカギになる

ご存じのように私たちは嗅覚によって“におい”の情報を感知します。その情報は、危険を察知するためにも重要なものであるとともに、実は、食べ物の風味やおいしさを形づくるために欠かせない情報の1つでもあります。

鼻がつまると味覚がまひしたかのように感じることがありますが、これは鼻の中の空気の流れが悪くなり、受容細胞(センサー)がにおい分子をキャッチできず、“におい”の情報が十分送られなくなることが原因なのです。

つまり嗅覚には、「危険を察知する」「食べる楽しみを支える」など、QOL(生活の質)の維持に欠かせない役割があるのです。

加齢による嗅覚低下、男性は女性の2倍以上

しかし残念ながら、嗅覚は加齢とともにその機能が低下します。喫煙や鼻副鼻腔(びくう)疾患のほか、動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病も嗅覚低下の要因にはなりますが、加齢が最も強いリスクファクターであり、60歳代以降、有意に低下することがわかっています。

アメリカでの大規模調査では、65歳以上の13.9%に嗅覚低下が認められています。また、この調査では嗅覚低下を認めたのは65歳以上の女性では8.8%であったのに対し、男性では20.5%と2倍以上、男性の方が嗅覚低下が顕著に現れていました(参考文献参照)。加齢によって嗅覚が低下する原因の多くは、鼻腔の奥の嗅粘膜でにおい分子を感知する嗅細胞の新生能力が低下するためだと考えられています。つまり、加齢により毛髪が抜けやすくなったり、その新生能力が下がったりするのと同様の現象ですので、これを完全に防ぐことはできません。

ただ、禁煙や、鼻副鼻腔疾患の治療、生活習慣病の改善などによって、加齢以外のリスクファクターに適切に対処すれば、機能の低下を最小限に抑えることも可能です。また、週に3回以上汗をかく程度の運動を続けると、10年後の嗅覚低下の危険性が0.73倍に低下したという海外の研究結果もあります。

パーキンソン病、認知症の早期症状の可能性も

残念ながら今のところ、加齢による嗅覚機能の低下に対する有効な治療法や、その機能を補う機器はありません。

しかし、明らかな嗅覚機能の低下がある場合には、腐敗した食品を食べてしまうのを防ぐために賞味期限を厳守する、対応が遅れがちになるガス漏れや火事を起こさぬようセンサーを取り付けたり電磁調理器を使用したりするなど、生活上の工夫で対応する必要があります。また、味を感じにくくなり塩分・糖分過多になる危険もありますから、家族に味を確認してもらうといった工夫も必要でしょう。

さらに、高齢者の嗅覚機能の低下は徐々に進むため、本人が自覚しにくく、周りも気付きにくいという問題もあります。しかし、それを軽視していると、生活の質を低下させるだけでなく、思いがけない災難に見舞われる危険性もあるので、

「年齢を増すごとににおいを感じにくくなる」という事実を、本人だけでなく、家族もしっかりと理解しておくことが大切です。

実は近年、パーキンソン病や認知症などの神経変性疾患発症前の早期症状として、嗅覚の低下があったと数多く報告されています。また、嗅覚機能低下の原因が副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎にある場合は、適切な治療により回復することもありますので、明らかな嗅覚機能の低下に気付いたら、早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。

【参考文献】Schubert CR et al: Olfactory impairment in an adult population:the Beaver Dam Offspring Study.Chem Senses. 2012, May;37(4):325-34.

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「健康寿命への挑戦」より引用