年間約3万人が発症するにもかかわらず認知度の低い「頭頸部(とうけいぶ)がん」について理解を深めてもらおうと2022年5月25日、サッカーJ1ヴィッセル神戸のホーム公式戦(ノエビアスタジアム神戸)で啓発イベント「楽天メディカル 頭頸部がん克服デー」が行われた。来場者を対象に実施したアンケートでは、舌、甲状腺など一部のがんについては耳鼻咽喉科頭頸部外科で治療可能なことがあまり知られていない実態も明らかになった。
イベントは日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(村上信五理事長)と楽天メディカル(三木谷浩史会長)の共催。頭頸部がんは、脳と目を除いた首から上全ての領域にできるがんの総称で日本人のがん全体の約5%を占め、近年増加傾向にある。イベントが行われた対ジュビロ磐田戦を観戦した約1万人のサポーターに、頭頸部がんの予防と早期発見につながるよう、理解を訴えた。
イベントでは、スタジアムの場外ブースで頭頸部がんに関する動画を放映。頭頸部がんのシンボルであるバーガンディとアイボリーのリボンをモチーフにした、ヴィッセル神戸とのコラボピンバッチを先着500人に、頭頸部がんに関する情報を掲載した同学会・同社・ヴィッセル神戸のコラボクリアファイルを先着1万人に配布した。
試合のハーフタイムには、ヴィッセル神戸の選手を起用した疾患啓発動画と酒井高徳選手からのメッセージ動画をスタジアムの大型スクリーンで放映。また、同学会の松浦一登医師がグラウンドから「声を出したり、ものを食べたりする口やのどはとても大切です。私たち耳鼻咽喉科頭頸部外科医は、この部分にできるがん治療の専門家です。ご心配なことがあれば、ぜひ相談ください」などと頭頸部がんの予防や早期発見、治療の大切さを訴えた。
頭頸部がんは耳鼻咽喉科頭頸部外科で検査、治療を受けられることについて、一般の人がどの程度知っているかなどについて、場外ブース来場者にアンケートを実施。選手のサイン入りグッズを抽選でプレゼントする企画の応募者118人がQRコードを利用してインターネット経由で回答した。
耳鼻咽喉科頭頸部外科で検査・治療ができると思う「がん」を全て選んでもらう質問では、喉頭がんと咽頭(いんとう)がんについては80%以上が正解した一方▽食道がんは72%▽舌がんは65%▽甲状腺がんは50%――の正解にとどまった。実際には肺がんと胃がん以外は全て頭頸部がんとして扱われ、耳鼻咽喉科頭頸部外科で治療できるが、一部のがんに関してはあまり知られていない実態が明らかになった。
耳鼻咽喉科頭頸部外科で治療ができると思う症状についても同様に全て選んでもらったところ「のどが痛い」については99%が正解した。一方▽頭痛がする(35%)▽首が腫れた(65%)▽舌が腫れた(75%)▽動悸がする(19%)▽めまいがする(35%)▽顔の動きが悪くなった(31%)▽目が見えにくくなった(19%)▽声が出しづらくなった(68%)▽うまくものを飲み込めない(69%)――などは正答率が比較的低かった。実際には、これらは全て耳鼻咽喉科頭頸部外科で治療できる。
また、普段医療情報を収集するときに使うものを全て選んでもらったところ▽医師から54%▽医療関係者の友人(医師、看護師など)47%▽医療関係者ではない友人13%▽新聞17%▽テレビ31%▽ネットの記事64%▽TwitterなどのSNS22%――だった。
医師から情報を得ている人は半数を超えるが、ネットの記事から医療情報を収集している人がさらに上回っている。医師に相談することに加えて、医療情報を収集するために多くの人がインターネットを利用している実情が明らかになった。
頭頸部がんの中でも、近年では口腔がんや咽頭がんが増えており、死亡率も増加傾向にある。男性は50歳後半から、女性は60歳を過ぎると死亡率が高くなる。
7月は同学会が定める頭頸部外科月間。これらの結果も参考に、同学会のウェブサイトに特設サイトを設置し、頭頸部がんに関する正しい理解を広めていく。
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