視診や触診によって舌がんやほかの口腔がんが疑われる場合、その診断には、腫瘍の細胞または組織の一部を採取し、顕微鏡でがん細胞の有無やそのタイプを確認する病理学的診断が欠かせません。なお、口腔がんの場合は「扁平上皮がん」と呼ばれる粘膜組織から発生するタイプのがんであることがほとんどです。
病理学的診断によって、がん細胞の存在が認められ、口腔がんであるという診断が下された場合には、的確な治療方針を立てるため、さらに詳しい検査を行うことになります。
まず、どれくらいがんが広がっているかを調べるために、CTやMRI、超音波検査などの画像検査を行います。がんがリンパや血液の流れに乗って、他の器官や臓器に転移することもあり、口腔がんの場合は特に頸部リンパ節に転移しやすい性質もあるため、必要に応じてPET検査を行うこともあります。
それらの検査結果を踏まえ、がんの大きさや頸部リンパ節への転移の有無やその状況、ほかの臓器への転移の有無などを総合的に判断し、口腔がんの進行度(病期)がステージIからステージIVの4期に分類されます。
がん(癌)の進行を示すものとして、T(腫瘍の大きさや部位)、N(リンパ節の転移の状態)、M(他の臓器への転移の状態)を規定する分類法が用いられます。各々の項目に対して1、2bなど数字とアルファベットの組み合わせで示され、各々の要素が進行すると数字が大きくなります。
がんの出来る場所とその治りやすさによりTNMの分類は複雑になっていますが、それらを総合的に対応してがんの進行度をステージとして表します。ステージは、がんが進行していく順にI、II、III、IVと進み、IとIIは早期がん、IIIとIVは進行がんに相当します。
がんという病気はたとえ初期であっても転移の可能性への配慮が絶対に欠かせません。転移の有無によってその治療法も大きく異なります。もちろん口腔がんも例外ではありません。だからこそ、その検査や治療においては、耳鼻咽喉科医だけがもつ頭頸部の全領域に関する専門的知識と全身的な医学的知識が必要なのです。
がん細胞が正常細胞より3~8倍のブドウ糖を取り込む性質を利用した検査。ブドウ糖に近い成分の検査薬を注射して体内に入れたあと、特殊なカメラで全身を撮影し、検査薬が集まる場所=がん細胞の有無を確認します。従来の検査より小さな早期のがん細胞を見つけられること、1回の検査でほぼ全身を診ることができること、患者さんへの負担が少ないことなど、さまざまなメリットがあります。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「舌がん・口腔がん何科を受診すればいいの?」より引用
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