いまやタバコががんと深い関わりがあることは常識です。なかでも喉頭がんが、喫煙によって発症するがんの代表であることは広く知られています。
そのエビデンスを日本人において検証したのが、国立がん研究センターの予防研究グループです。同グループは1990年~2010年にかけて、40~69歳の日本人男女9万6000人を対象に、「喫煙、飲酒と口腔・咽頭がん罹患リスクとの関係」をテーマにした大規模な研究を行いました。
それによると男性では、タバコを吸わないグループと比べて、タバコを吸うグループの口腔・咽頭がんの発生リスクは2.4倍。 また、吸わないグループと比べて、累積喫煙指数が60以上のグループでは、発がんリスクが4.3倍という結果が出ました。
部位別にみると、下咽頭がんへの影響が特に大きく、タバコを吸うグループで約13倍、累積喫煙指数60以上のグループで約21倍、発がんリスクが増加しました。(図)
このように、喫煙量が多いほど発がんリスクが高くなる傾向にありますが、一方では、禁煙によって長期的な健康被害の可能性を大幅に低減できることもわかっています。 禁煙してから10年後には、口腔がん、食道がん(扁平上皮がん)、喉頭がんのリスクが低下すると、世界保健機関(WHO)から報告されているのです。(表)
さらに、禁煙によって受動喫煙関連の疾患リスクも減らすことができます。
タバコの煙にはニコチン、アンモニア、ホルムアルデヒドなど250種類以上の毒物、発がん物質が含まれており、喫煙者が吸う主流煙よりも、副流煙のほうがタール、トルエン、メタンといった有害物質が多く含まれていることがわかっています。 副流煙を吸い込むことが周りの人の健康被害につながる可能性があるため、望まない受動喫煙をなくすために、2020年4月には「健康増進法」の一部が改正されました。
ちなみに、加熱式タバコや電子タバコは、紙巻きタバコと比べて「健康被害が少ない」「受動喫煙の危険がない」と誤認されていますが、紙巻きタバコと同様に有害物質を発生させるため、注意が必要です。
加熱式タバコは、タバコ葉を使用し、燃焼させずに加熱によって発生した煙を吸うもので、燃焼させない分、タールの発生を抑えることができますが、タバコ葉を使用するため、ニコチンを含む有害物質は発生します。
電子タバコはタバコ葉を使用せず、カートリッジ内の液体(リキッド)を電気加熱し、発生した蒸気を吸うものです。リキッドの主成分はプロピレングリコールやグリセリンなど食品添加物や医薬品などに使われているものですが、国立保健医療科学院の調査によると、それらが加熱されて霧化する過程でホルムアルデヒド、アセトアルデヒドといった発がん性物質を発生するものがあると報告されています。
加熱式タバコや電子タバコであっても、有害物質を発生させるという正しい理解が大切です。
喉頭がんは早期に発見されれば約80%以上は治癒するといわれています。既に喫煙の習慣があり気になる人は、一度、専門の耳鼻咽喉科で診てもらいましょう。
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