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新型コロナによる嗅覚障害、4割は1カ月後も持続―金沢医大などの研究グループ発表

公開日

2021年07月14日

更新日

2021年07月14日

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2021年07月14日

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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年07月14日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

新型コロナウイルスに感染すると、無症状や中等症以下であっても約6割の人が嗅覚や味覚に障害を感じることが、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会と金沢医科大学の研究グループによる調査(厚生労働科学特別研究事業)で明らかになった。嗅覚障害の60%、味覚障害の84%が1カ月後には改善を示した一方、それぞれ40%、17%は1カ月後も障害が持続し、生活の質(QOL)への影響もみられた。研究グループは3カ月後と6カ月後にも同様の調査を行い、長期的な後遺症の有無について検討を予定している。

アンケートと検査を同時に実施

研究代表者は金沢医科大学耳鼻咽喉科の三輪高喜教授。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、発症早期に嗅覚、味覚の喪失を起こすことが以前から知られていたが、日本では発生頻度や経過、転帰などについては十分な調査研究が行われていなかった。

東京都、千葉県、大阪府、愛知県、石川県の11病院、6療養ホテルで入院、療養していた無症状、軽症、中等症のCOVID-19患者のうち希望者251人(20~59歳:平均40.5歳)がアンケートに回答、うち119人には検査キットを使った嗅覚・味覚検査を実施した。また、退院、療養終了1カ月後にも自覚症状の変化などについてアンケートを行った。調査期間は2021年2月18日~5月21日。患者の自覚症状の聞き取りと検査を同時に行う研究は国内では初めてで、国際的にも極めてまれだという。

若年層で「自覚症状あり」多く

入院・療養中のアンケートでは、▽「嗅覚・味覚両方の障害を自覚」している人が37%▽「嗅覚のみ」が20%▽「味覚のみ」が4%▽「嗅覚・味覚障害なし」が39%――だった。嗅覚障害では30歳代の7割以上、20歳代の6割以上が「ある」または「あったが治った」と回答しており、味覚・嗅覚障害のいずれも20~30歳代の若年層で発生率が高かった。また、男女別では女性の発生率が高かった。

発症時の障害の程度については、▽「まったくにおいがしない」が59%▽「まったく味を感じない」が37%――と高度な障害がみられた。ただ、調査時点(症状発生から平均8.3日後)では嗅覚障害の17%、味覚障害の27%が回復したと回答。嗅覚障害の回復までの日数は発症3日目が最も多く、一定数は早期に回復することが示唆された。

味覚障害は嗅覚原因が多数か

入院・療養中に行われた嗅覚検査では、12点満点中3点以下の「嗅覚脱失(嗅覚が完全になくなること)」を示した人が過半数の56%と高い数値を示した。一方、味覚検査では「味覚障害あり」の自覚がある45人のうち、実際に味覚低下(16点満点中8点以下)を示したのは27%で、残る73%の味覚は正常の範囲内だった。このことから味覚障害は口腔(こうくう)や舌のダメージが原因ではなく、嗅覚障害に伴う風味障害が多数を占めると推測している。

嗅覚障害長引く人、嗅神経障害の可能性も

一方、1カ月後のアンケートでは、嗅覚障害があった人の40%、味覚障害は16%が障害が持続していると回答。特に嗅覚障害で症状が長引く人が多数いることが分かった。

これらの障害によって、嗅覚障害では「以前より飲食を楽しめなくなった」「ガスや腐った食べ物が怖くなった」「体重が変化した」の3項目が有意に高く、味覚異常では「孤独を感じる」「怒りを覚える」「食べる量が以前より減った」を加えた6項目で高くなり、退院・療養終了後もQOLに影響が及んでいることが示された。

1カ月後のアンケートでも、「嗅覚障害あり」と回答した人の男女比は1対3で女性が多く、風邪によって起こる「感冒後嗅覚障害」と類似した結果になった。このことから、多くの症例は早期に回復するものの、一部の患者は嗅神経まで障害が及んでいる可能性が考えられるとしている。

今後、障害が残る患者の医療機関受診が増加することが見込まれ、耳鼻咽喉科医療機関を受診する患者を対象として、障害の病態解明を進めるとともに、治療法についての研究も行う予定。
 

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