両耳に難聴がある赤ちゃんは、およそ1000人に1人の割合で見つかります。ほかの先天性疾患に比べ、その頻度は高いといえるでしょう。最近は、新生児聴覚スクリーニング検査によって発見されるケースも増えています。
新生児聴覚スクリーング検査とは、産科や助産院において、赤ちゃんの出生直後に行われる、聞こえの簡易検査のことです。中等度以上の難聴の有無を確認する10分程度の検査で、赤ちゃんが、自然に寝ている時をみはからって行なわれ、痛みや違和感などもない、安全な検査です。
難聴は早期発見が非常に大切で、聞く力や話す力をつけるための補聴器装用やコミュニケーション保障(聴覚障害者に対するコミュニケーション支援)など難聴に対する適切なアプローチを早くに始められるほど、ことばを十分に獲得し、スムーズにコミュニケーションできるようになる可能性が高まります。そういう意味で、新生児聴覚スクリーニング検査の意義は非常に大きく、欧米では検査の実施を義務づけている国もあります。日本国内でも新生児聴覚スクリーニングの実施に対する公的な助成がほとんどの地域で整備され、普及してきました。もしも新生児聴覚スクリーニングを出生直後に受けられなかった場合でも、後から検査を行うこともできるため、随時医療機関へ相談してください。また、心配や疑問があれば1カ月健診時にも相談するように心がけるとともに、以下の「家庭でできる耳のきこえと言葉の発達のチェック表」もご活用ください。
・家庭でできる耳のきこえと言葉の発達のチェック表
(出典:新生児聴覚スクリーニングマニュアル)
新生児聴覚スクリーニング検査でパスしたとしても、新生児期以降に遅れて難聴が生じることもあります。
乳幼児は難聴を自ら訴えることができないうえ、難聴があっても人の表情や身振り、周囲の状況などを見ながら行動する傾向があります。また、たとえ聞こえが十分でなくても、ことばを発することもあります。そのため保護者や周りの大人が赤ちゃんの聞こえの異変に気づくことは思いの外難しく、その結果難聴の発見が遅れてしまう、ということは決して珍しくありません。
だからこそ、スクリーニング検査を受けていない場合はもちろん、新生児のときに受けた検査では問題を指摘されなかった場合でも、乳幼児健診で、気になることがある場合や指摘などを受けたときには耳鼻咽喉科専門医に聞こえの状態を確認してもらうことが大事です。
難聴に気づかないまま、適切な介入がされずに聞こえにくい状態が長期間続いてしまうと、ことばの獲得が困難になり、その後の生活にも大きく影響します。出来るだけ早いタイミングで難聴を発見し、適切な治療や、補聴器の装用やコミュニケーションの保障などを行えば、十分にことばを獲得できる可能性も高まります。その意味でも、新生児聴覚スクリーニング検査だけでなく、多くの子どもがことばを話し始める時期に当たる1歳6カ月児健診、ことばを習得する時期に当たる3歳児健診も聞こえの確認をするうえで非常に重要といえます。
もちろん、呼びかけやテレビの音などに反応しない、月齢の割にことばが極端に遅れているなど、子どもの様子で気になることがある場合は、健診を待たずに、すぐに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。1歳6カ月児、3歳児の聞こえの確認について、以下詳細資料もございますので、是非ご覧ください。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「Hear well, Enjoy life!―快聴で人生を楽しく」より引用
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