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【特別対談】「頭頸部がんのこと、知っていますか?」楽天メディカル・三木谷会長と専門医が語る

公開日

2023年08月31日

更新日

2023年08月31日

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2023年08月31日

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毎年7月27日は世界頭頸部癌学会が定めた「世界頭頸部がんの日」だ。それにあわせて、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は毎年7月を「頭頸部外科月間」とし、頭頸部がんについて正しく理解してもらうための活動を行っている。その活動の一環でこのほど、丹生健一先生(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会<以下「日耳鼻」> 副理事長、耳鼻咽喉科専門医)と三木谷浩史さん(楽天メディカル株式会社代表取締役会長)の特別対談が行われた。頭頸部がんとは何か、予防のために重要なこと、そして新たな治療選択肢とは――。

対談の動画はこちら

Connecting The Dots――三木谷さんと「光免疫療法」の出合い

丹生先生:これまでも三木谷さんとは、頭頸部がんについて多くの活動を一緒に行ってきました。たとえば、今年(2023年)4月9日にはノエビアスタジアム神戸で開催されたサッカーJリーグの試合で、学会とともに疾患啓発イベントを実施しました。しかし、三木谷さんがなぜ熱心にこのような活動を続けておられるのか、ご存じない方もいらっしゃるかもしれません。転機となった出来事を教えていただけますか。

三木谷さん:2012年に私の父ががんに罹患したことがきっかけです。どうにかして治したい一心で、世界中の論文を読み多くの医師に会い、あらゆる可能性を探りました。かつてスティーブ・ジョブズが「Connecting The Dots」(点と点をつなぐ)、何事も縁がつながっていると言っていましたが、その過程で驚くような出会いがありました。ヴィッセル神戸のオフィシャルスポンサーで楽天市場にも出店している新保哲也さん(新保哲也アトリエ 代表取締役社長)が「いとこが行っている研究が三木谷さんのお父さんの役に立つのではないか」とご紹介くださり、小林久隆先生(米国国立衛生研究所・国立がん研究所)が開発していた光免疫療法を知りました。残念ながら父の治療には間に合わなかったのですが、その後も研究のための支援を続け、2020年9月に条件付き早期承認制度によって世界に先駆けて頭頸部がんに対して日本で承認されました。

頭頸部がんとは――気になる症状があれば、ぜひ耳鼻科へ

丹生先生:「頭頸部がん」とは耳慣れない言葉かもしれませんが、脳と目以外の首から上の部分にできるがんのことを指します。年間約5万1800人の方が頭頸部がん(甲状腺がんを含む)になっており、近年罹患数が増加しています。

がんができた部位によって、鼻・副鼻腔がん、口腔がん(舌がんを含む)、喉頭がん、唾液腺がん、咽頭がん、甲状腺がん、首の位置にある食道がんなどに分けられます。

転載

「頭頸部がんができる 主な部位」

出典:「一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会」Webサイトより転載

症状はがんができる部位によってさまざまですが、たとえば鼻・副鼻腔がんでは鼻血、鼻水、鼻づまりなどで、頭頸部がん特有の症状であることは多くありません。早期発見が重要なため、気になる症状があればぜひ耳鼻咽喉科を受診してください。日耳鼻のウェブサイトにはセルフチェックリストも掲載しています。一例を挙げると、お酒を飲むとすぐに赤くなる方、たばこを吸う方、咽頭がんになったことがある方などは要注意です。

転載

「セルフチェックリスト」

出典:「一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会」Webサイトより転載

三木谷さん:私はお酒を飲むとすぐ赤くなってしまうので、気を付けたほうがいいですね。

丹生先生:お酒に強い方の1杯が三木谷さんにとっては10杯分飲んだことになってしまうんです。

また、最近注目されているのはHPV(Human Papillomavirus、ヒトパピローマウイルス)感染によるがんです。HPVは子宮頸がんの発生に関わることが知られていますが、実は中咽頭がんなどにも関連しています。日本の中咽頭がんの約半数はHPV関連がんであることが分かっています。現在、HPVワクチンの定期接種は女性(小学校6年~高校1年までの女子)のみが対象ですが、男女ともワクチン接種率80%に到達することでHPV関連がんはかなり減少していくといわれています。今後は男性も定期接種の対象とするよう、学会から国にはたらきかけを行っているところです。

新たな選択肢・アルミノックス治療は認可施設で相談

丹生先生:頭頸部には「話す」「聞く」「飲み込む」「呼吸をする」など、からだにとって重要な器官が集中しています。がんができた部位によって異なりますが、手術、放射線治療、薬物療法を組み合わせた集学的治療が行われます。いずれの場合も、がんを治すこととからだの機能、すなわちQuality of Life(QOL、生活の質)を守ることのバランスを考えながら治療を選択します。

楽天メディカルが開発された光免疫療法であるアルミノックス治療は、薬剤*を投与した後、レーザー光を照射することでがん細胞を排除する治療で、現在は標準的治療が適さない頭頸部がんの方を対象に行われています。

*光感受性物質(光に反応する物質)と特定の細胞に選択的に集積する成分を組み合わせた複合体

三木谷さん:アルミノックス治療には、全国の医療従事者の皆さんも非常に期待してくださっていると感じています。

丹生先生:この治療に興味がある、受けられるか知りたい方は、まず担当医にご相談いただき、認可施設の(日耳鼻認定)専門医にご相談ください。インターネットで「光免疫療法」と検索すると、認可施設でない自費診療のクリニックなどの情報も表示されてしまうのでご注意ください。

三木谷さん:治療が受けられる全国の施設は、楽天メディカルのホームページで公開しています。

丹生先生: 私が勤務する神戸大学医学部附属病院でも、セカンドオピニオンとしてアルミノックス治療に関するご相談を受け付けています。ご相談にいらした患者さん10人のうち、アルミノックス治療が適応になるのは1人くらいですね。その他9人のうち、半分くらいは担当医のもとで行われている今の治療を継続、もう半分くらいはほかの選択肢をご提案しているという状況です。

世界戦略と今後の展開――啓発活動にも注力

丹生先生:光免疫療法であるアルミノックス治療の将来についてお伺いしたいと思います。海外展開についてはいかがでしょうか?

三木谷さん:現在、アメリカと台湾、そしてインドでこの治療の開発を行っています。私も先日現地を訪問したのですが、世界全体の頭頸部がん患者さんの約25%をインドの方が占めているといわれています。

丹生先生:確かにインドは噛みタバコ、それから台湾はビンロウが原因で口腔がんがずいぶん多いそうですね。視察に行かれて、医療制度などの印象はいかがでしたか?

三木谷さん:インドは人口も多く経済発展も著しいのですが、医療サービスについてはさらに発展の余地があると感じました。また、がんをご存じない一般の方も多いので、啓発活動にも力を入れていきたいと考えています。

丹生先生:日本も頭頸部がんはがん検診の対象ではないですし、コロナ禍では受診が遅れてがんが進行した段階で発見された方も多かったと聞いています。三木谷さんとは今後も一緒に啓発活動ができればと思います。アルミノックス治療をはじめ、頭頸部がんの治療選択肢は広がっていますが、何よりも大切なのは早期にがんを発見し早期に治療することです。おかしいと感じたらぜひ最寄りの耳鼻咽喉科を受診してください。

(対談実施:2023年7月19日)

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