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加齢で衰えるバランス感覚 維持・回復に「めまいリハビリ」

公開日

2022年12月19日

更新日

2022年12月19日

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2022年12月19日

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バランス感覚は目、耳、足の連携プレーで維持される

私たちの体が平衡に保たれるためには、「目から入ってくる情報」「重力や加速、回転などを感知した耳からの情報」「自分の体がどのように動いているかを感知する足の裏の感覚」の3つの情報が必要です。この3つの情報を小脳が統合し、頭と目の動きを制御して、体のバランスをとっているのです。

逆に言えば、このうちのどれか1つでも調子が悪くなれば、体の平衡機能が乱れてしまいます。これがめまいの原因ですが、中でも最も多いのは「耳からの情報」に問題が生じているケースです。

耳の奥には、聞こえの感覚器(蝸牛<かぎゅう>)以外に、3つの輪のようになっている「三半規管」と耳石を含む「前庭」というバランスと関係している感覚器があります。例えば、めまいの原因で多いのは耳石が外れることで起こる、「良性発作性頭位めまい症」です。繰り返しやすいのが厄介ではありますが、放っておいても2~4週間で治ることが多い病気です。

平衡機能の低下は健康寿命の危機

ただし、残念ながら「前庭」の働きは、加齢により徐々に低下することがわかっています。それに加え、老眼や老人性白内障などによって視覚情報をキャッチする力も衰えることは避けられませんし、若い頃に比べれば足の裏の感覚も鈍くなります。そのような要因が重なり合い、高齢になるほど、明らかな疾患がなくても、体のバランスを保つ機能、すなわち平衡機能が低下するため、めまいを起こしやすくなるのです。

たびたびめまいを起こすようになれば、外出もままならなくなり、生活の質は大きく低下します。さらにめまいによって転倒し、骨折したことが原因で、そのまま寝たきりになるという危険性もあります。高齢になると骨ももろくなるため、ちょっとした転倒でも大腿骨骨折などの大けがにつながりやすいのです。そういう意味でも、平衡機能を維持することは、健康長寿を伸ばすためにも大切だと言えます。

気になるめまいは耳鼻咽喉科に相談を

加齢によって前庭の働きが低下するのは、感覚細胞の消失という形態上の変化が最も大きな原因なので、その働き自体を回復させるのは困難です。ただ、小脳には前庭機能の低下を補う働きがあるため、それを鍛えることで、平衡感覚を維持したり、回復させたりすることができます。

それが「めまいリハビリテーション」*と呼ばれるものです。高齢者の場合は、小脳の働きも低下しているので、回復には時間がかかることもありますが、90歳をすぎた患者さんでも、前向きにリハビリテーションを続けたことで症状が良くなったと実感された例もあります。めまいは心の状態も大きく影響しますので、「治したい!」という意欲を持ってリハビリテーションを続けることが大切なのです。

*正確には前庭リハビリテーション(平衡訓練)といいます。めまいリハビリテーションの種類は「良性発作性頭位めまい症」の患者さんに行うものと、それ以外の原因でおこるふらつきに対するリハビリテーションなどさまざまなものがあります。

また、無理のない範囲の有酸素運動や筋力トレーニングは、平衡機能の維持や改善にも効果があります。ここで言う有酸素運動とはエアロビクスのような激しい運動ではなく軽く汗をかく程度の散歩のような運動のことです。いずれも毎日継続することが大切です。

高齢者のめまいは、脳梗塞や心筋梗塞、あるいは高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病の症状として現れていることもありますので、平衡機能の低下が気になったら一度耳鼻咽喉科を受診すると良いでしょう。

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「Hearwell, Enjoy life―快聴で人生を楽しく」より引用
 

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