日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(村上信五理事長)は3月1~31日の耳鼻咽喉科月間に合わせて、同学会ウェブサイトに「特設ページ」を開設した。薬を飲んでも症状が改善しない重症花粉症や、顔面神経麻痺(まひ)の治療法などについて専門の医師が分かりやすく解説する動画、睡眠時無呼吸症候群やめまいなど、どの診療科を受診すればよいか分かりにくい症状・病気についての解説などが掲載されている。
「耳鼻科」と一般に言われる耳鼻咽喉科という診療科から、どんな病気を思い浮かべるだろうか。子どもの頃にかかった中耳炎や扁桃炎、蓄膿症(副鼻腔炎)……このあたりは誰でも出てくるだろうが、耳・鼻・のどの病気全般を専門とする耳鼻咽喉科にとって、それらは治療対象のごく一部でしかない。
たとえば、今年も本格的なシーズンが始まった花粉症は、スギ・ヒノキ花粉などをアレルゲンとする季節性のアレルギー性鼻炎、つまり「鼻の病気」なので耳鼻咽喉科の専門領域だ。ほかにも、めまい、顔面神経麻痺、いびき、睡眠時無呼吸症候群、発声障害、(ものが飲み込みにくくなる)嚥下障害など、どの診療科にかかればよいのかあまり知られていない病気も耳鼻咽喉科に行くと解決法が見つかるかもしれない。
同学会が2021年に実施した調査ではめまいの原因にもなるメニエール病を耳鼻咽喉科で治療ができると思う人は61%、睡眠時無呼吸症候群は51%、顔面神経麻痺は23.5%など、一部の病気に関する“知名度不足”の実態が明らかになった。そのため、今年の耳鼻咽喉科月間では、そうした治療についての正しい知識を広めることにも力を入れている。
コンテンツのうち、「意外と知らない身近な耳鼻咽喉科・頭頸部外科」では、顔の筋肉が動きづらくなる「顔面神経麻痺」の原因や治療法などについて解説。発症3日以内の耳鼻咽喉科・頭頸部外科受診をもっとも重要なポイントとして挙げている。また、めまいの原因、種類ごとの受診の目安、難治性メニエール病の新しい治療法「中耳加圧治療」などについて説明している。
「ネット調査で見えてきた耳鼻咽喉科・頭頸部外科」では、長引くコロナ禍によるリモートワークの広がりなどが増加の一因ともなっている睡眠時無呼吸症候群に気付くためのポイントや放置することのリスクなどについても紹介している。
動画コンテンツでは、花粉症治療薬を服用してもなかなか症状が改善しない重症患者でも効果が期待できる手術治療などについて関西医科大学総合医療センターの朝子幹也・耳鼻咽喉科・頭頸部外科診療部長が分かりやすく説明。同じく重症の花粉症患者に使用する生物学的製剤や、花粉症の根治が目指せる舌下免疫療法などについて、国際医療福祉大学医学部耳鼻咽喉科の岡野光博教授が解説している。
顔面神経麻痺は、一般的な経過、標準治療、リハビリテーションについて、愛媛大学医学系研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科の羽藤直人教授 、大阪医科薬科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科の萩森伸一専門教授 による3本の動画を掲載している。
同学会は2021年まで3月3日を「耳の日」、8月7日を「鼻の日」として耳鼻咽喉科の病気について啓発活動を行っていた。同年6月に従来の「耳鼻咽喉科学会」から名称変更したのを機に、3月を「耳鼻咽喉科月間」、7月を「頭頸部外科月間」と定めて広報活動を強化。Twitter開始とともにYouTubeにチャンネルを開設し、若い世代にも伝わるよう動画による病気の予防・治療情報の発信にも力を入れている。
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