喉仏が痛い:医師が考える原因と受診の目安|症状辞典
急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。
名古屋市立大学医学部付属 東部医療センター 特任教授・高次ウイルス感染症センター長
村上 信五 先生【監修】
喉仏の痛みは風邪や声の出し過ぎなどで起こることがある症状ですが、食事のときに痛んだりなかなか治らなかったりと、辛いこともあるでしょう。また、どのようなタイミングで病院を受診すればよいのか迷うことも多いと思います。
こういったときに考えられる原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
喉仏が痛くなる原因として考えられるのは、甲状腺や扁桃、咽頭、喉頭など喉のさまざまな部分の炎症によるものが多くあげられます。主に以下のようなものが考えられます。
甲状腺とは喉仏の下にあり、主に新陳代謝を活発にする甲状腺ホルモンを分泌するはたらきがある臓器です。この甲状腺に炎症を起こす病気は主に3種類あります。
1つめの細菌感染による急性化膿性甲状腺炎では、甲状腺に痛みがでます。2つめの亜急性甲状腺炎は、明確な原因は不明(2018年12月時点)で、炎症による甲状腺の痛みや腫れ、発熱が起き、甲状腺ホルモンが過剰になることで全身倦怠感や動悸、多汗などがみられます。3つめは甲状腺機能低下症のひとつである慢性甲状腺炎(橋本病)です。
この病気では、免疫の異常によって甲状腺に慢性的な炎症を起こし、甲状腺の腫れや違和感、代謝低下による無気力や疲れやすさなどが起こります。
扁桃とは舌の付け根の両側にあるこぶのような部分で、病原菌から体を守るはたらきがある臓器です。扁桃についた病原菌が増えると炎症を起こし、扁桃の腫れや痛み、発熱、関節痛などがみられ、扁桃に白い斑点状の膿の付着がみられることもあります。
急性扁桃炎はさまざまなウイルスや細菌が原因で、特に過労などで体の抵抗力が落ちているときに起こりやすく、急性扁桃炎をくりかえすことで慢性化することもあります。
扁桃炎を起こすウイルスで代表的なものがアデノウイルスで、高熱と微熱を繰り返し、扁桃の腫れや喉の痛み、頭痛、腹痛、ときに結膜炎症状が見られることもあります。
肺炎球菌やインフルエンザ菌などの他に代表的な細菌としては溶連菌感染症があげられ、発熱や喉の痛みや腫れに加えて、手足などに小さくて赤い発疹ができたり、舌にイチゴのようなつぶつぶができたりすることがあるのが特徴です。
喉の痛みの多くが鼻の奥から食道の手前までの咽頭に炎症が起きるといわれており、細菌やウイルスなどで炎症を起こす急性咽頭炎をくりかえすと慢性化することもあります。
急性咽頭炎は過労や温度変化などで抵抗力が落ちたときに起こりやすく、細菌感染して炎症を起こすと喉に充血や腫れ、痛みなどを生じます。
多くがいわゆる風邪とよばれる軽症のウイルス感染ですが、伝染性単核球症によるものも近年増加しています。伝染性単核球症はキス病とも呼ばれて感染者との濃厚な接触で感染し、高熱や喉の痛みといった症状がみられるので風邪やインフルエンザとも間違えられやすいのですが、数週間から数ヶ月続くのが特徴です。
声帯とは、気管と咽頭をつないでいる喉頭(喉仏の部分)の左右に一対あり、声を出すために振動させる臓器です。ここに炎症を起こすのが声帯炎です。
急性の声帯炎の主な原因は、風邪などのウイルス感染です。感染すると、喉の痛みに加えて声がれや咳、物の飲み込みづらさ、発熱や全身倦怠感などがみられます。
また、声帯炎は声の酷使やアレルギー反応、たばこの煙などの刺激物の吸入なども原因となり、ときに胃食道逆流症や長引く気管支炎などで引き起こされることもあります。
扁桃炎が悪化すると、扁桃の奥に膿が蓄積する扁桃周囲腫瘍が起こることがあります。主な症状は喉の激しい痛みで、唾を飲み込むときに特に強い痛みを感じ、喉の痛みで食事がとれなかったり口が開きにくくなったりすることもあります。
喉の奥を見ると扁桃やその周辺が赤く大きく腫れるのが見てとれ、痛みが耳まで広がることも多いです。
喉仏の痛みで特に注意が必要なのが急性喉頭蓋炎で、声門の上の部分の喉頭蓋が感染による炎症を起こして腫れる病気です。
症状は発熱や喉の激しい痛みなどで、腫れた喉頭蓋が気道の空気の通り道をふさぐことで呼吸困難やゼーゼーという呼吸になることもあります。気道が閉塞すると血中の酸素が不足して皮膚や粘膜が青白くなるチアノーゼとよばれる状態や昏睡状態となり、ときに窒息死につながることもあるので速やかに医療機関を受診しましょう。急性喉頭蓋炎は2~4才の小児に特に多く、原因はインフルエンザ菌によるものがほとんどです。
喉仏の痛みは喉のさまざまな部分の炎症によって引き起こされることがあります。喉の痛みが続くようなら、かかりつけの内科や耳鼻咽喉科などの病院への受診を考えましょう。痛みが強い場合や、喉が大きく腫れているとき、痛み以外にも高熱などがみられるときなどは早めに病院を受診した方がよいでしょう。
受診の際には、いつからどのような喉の痛みがあるのか、どういったときに痛むのか(物を飲み込むとき、声を出すときなど)、発熱など痛み以外の症状についても分かる範囲で詳しく伝えましょう。