インタビュー

子宮筋腫とは——増加傾向にある子宮筋腫の現状

子宮筋腫とは——増加傾向にある子宮筋腫の現状
中村 元一 先生

福岡山王病院 名誉病院長

中村 元一 先生

この記事の最終更新は2016年02月24日です。

婦人科疾患の中でもっとも頻度の高いのが子宮筋腫です。30歳以上の女性のおよそ20~30%にみられ、筋腫ができる箇所によって症状も違い、治療法も異なります。2009年の開院以来、腹腔鏡下手術5000例(前任地を含めると12,000例)を突破した福岡山王病院 名誉病院長の中村元一先生に子宮筋腫についてお話を伺いました。

良性の婦人科疾患の中でもっとも多いのが子宮筋腫です。子宮は筋肉でできていますが、その筋肉から発生する良性の腫瘍のことを子宮筋腫といいます。筋腫は、できる場所によって「漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)」「筋層内筋腫」「粘膜下筋腫」の3つのタイプに分類され、それぞれ症状も異なります。

子宮筋腫ができる原因は、はっきりとしたことはわかっていませんが、女性ホルモンであるエストロゲンが関与していることはわかっています。そのため、エストロゲンが分泌されていない初経前の女性にはみられませんし、閉経後の方では新たに筋腫ができることはありません。また、筋腫がある方でも、閉経すればある程度小さくなってきますので、治療の必要性はほぼなくなります。

筋腫はできる場所によって症状が異なり、子宮の内腔に向かうほどひどくなります。主な症状としては、月経時の出血量の増加や腹痛、腰痛などです。筋腫が大きくなることで、膀胱が圧迫されてトイレが近くなるということもあります。出血量が多いため貧血を起こすという方もおられます。また、不妊の原因となることもあります。

子宮筋腫は増加傾向にありますが、その背景としては女性ホルモンにさらされる期間が長くなったことが考えられます。昔は、ひとりの女性が5人も6人も子どもを生んでいた時代がありました。しかし、現在は生んだとしても1人や2人です。女性の社会進出や晩婚化などの影響もあって、子どもを生まない女性も増えています。

ひとり赤ちゃんを生むことで、およそ2年間の無月経期間がうまれますので、5人生むと生涯で10年間、エストロゲンにさらさられない時期があるということです。同じ婦人科の病気で子宮内膜症がありますが、内膜症も同じようにエストロゲンにさらされる期間が長くなることによって起こるものなのです。

また一方で、増加した背景として診断技術の進歩も大きいと思います。いまは超音波ですぐに診断することができます。経膣超音波といって、膣の中に超音波の器具を挿入して調べることで、1センチや2センチの筋腫をみつけることも可能となりました。

子宮筋腫があるからといって、必ず治療が必要というわけではありません。筋腫ができたことで起こるひどい生理痛貧血などの症状が強くなり、日常生活に支障をおよぼす場合などが治療の対象となります。

治療は筋腫核の摘出あるいは子宮を摘出する手術を行いますが、福岡山王病院ではおなかを切らない腹腔鏡や子宮鏡などを用いた手術法をとりいれています。腹腔鏡を使った手術は全ての患者さんに適応されるわけではありませが、メリットとしては、「おなかの傷が小さい」「入院期間が短い」「社会復帰が早い」「痛みが軽い」などがあげられます。

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