インタビュー

子宮筋腫の治療法はどのようにして決定されるのか——子宮筋腫の手術治療

子宮筋腫の治療法はどのようにして決定されるのか——子宮筋腫の手術治療
渡邊 良嗣 先生

福岡山王病院 産婦人科部長

渡邊 良嗣 先生

この記事の最終更新は2016年03月28日です。

晩婚化や晩産化を背景に、筋腫があっても子どもを希望する女性は増加傾向にあるようです。福岡山王病院 産婦人科部長の渡邊良嗣先生に、筋腫の手術治療についてお話を伺いました。

子宮筋腫は子宮の中にできる腫瘤のことで、良性の婦人科疾患の中ではもっとも多い病気です。筋腫はできた場所によって「漿膜下(しょうまくか)筋腫」「筋層内筋腫」「粘膜下筋腫」の3つのタイプに分類されます。大きくても症状が現れないこともあれば、小さいものでも症状が強く現れるなど、できた場所によってそれぞれ症状も異なります。

筋腫の手術治療は二通りです。筋腫のコブだけを取る子宮筋腫核出術と、子宮を全て取る子宮全摘術のどちらかを行います。

筋腫だけを取る子宮筋腫核出術の大きなメリットは、子宮を温存できることです。基本的には、これから妊娠を考えている方、子宮がなくなると困るという方が対象になります。しかし、子宮を残せるというメリットがある一方で、デメリットがあります。それは筋腫が再発する可能性があること、手術時に出血が多くなり輸血を必要とする可能性が高くなることです。

筋腫は最初から大きいわけではなく、目に見えないくらいの小さなものが徐々に大きく成長していきます。そのため、目に見える2~3ミリ以上の筋腫を全て取ったとしても、再発を完全に防ぐことはできません。しかし、挙児(子どもを持つこと)希望で子宮を残したいということであれば、子宮内に複数個の筋腫ができる多発性筋腫や非常に大きな筋腫であっても、子宮筋腫核出術による治療を行って子宮を温存します。これはすでに子どもがいる方であっても同様です。

以前は、子どもがいて閉経も近いという方の場合には、子宮全摘術を勧めていました。子宮を残すと筋腫再発の可能性があることや、子宮全摘術と比べて子宮筋腫核出術は出血など手術自体のリスクが高くなるからです。

筋腫の数が多くなればなるほど出血のリスクは高まりますので、そういったリスクを冒すよりも、子宮を全摘したほうがメリットは大きいとは考えられます。しかし現在では、子宮を残したいという希望があれば、患者さんの希望に沿った治療を行うようにしています。

一方、子宮を全て取る子宮全摘術のメリットとしては、「原因となっているものを取り除くため再発することがない」「女性に多い子宮がんの心配もなくなる」という点が挙げられます。デメリットとしては、子宮がなくなるため妊娠することができなくなります。そのため挙児を希望される方にはお勧めできない治療法です。ただし、子宮を全摘出しても体調不良になることはありません。たとえば夫婦生活も、子宮がないことにより具合が変わることはありません。

福岡山王病院では、子宮筋腫核出術をこれまで数多く行ってきました。現在は、年に平均して400例ほどの手術を行っています。施設によっては、子宮筋腫核出術を行っていないというところも少なくありません。

筋腫核出術の予定で手術をしても、術中に出血が止まらずに子宮全摘術に切り替え、結果的に子宮を摘出したといった話を聞くこともありますが、福岡山王病院では手術で出血が止まらずに筋腫核出術から子宮全摘術に切り替えたということはこれまで1例もありません。

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