スクリーニング検査は具体的な症状がないとき、医師が疾病を探す際に役立っています。検査をすることによって、治療が行いやすい早期に問題を発見できます。時には、健康状態を増進させ、長寿に役立てることが可能です。
ただし大切なことは、どのような検査が必要で、どのくらいの頻度で行うかを知ることです。スクリーニング検査には、リスクが伴うのです。
スクリーニング検査は、重大な問題を発見するかわりに誤って“警告”を発することがあります。これは、特に検査で調査中の病気に罹患している可能性が低い時ほど言えることです。警告が出されると余計な検査や、生検(生きた組織を採取して検査すること)などの処置を受ける結果となります。これによって患者さんは余計な心配事が増えてしまいます。
たとえばがんのスクリーニング検査では、健康上問題にならないほどの小さな腫瘍が発見されることがあります。そうすると、本来受けなくてもいい治療を受けることになります。この治療は、体にとって有害で高額なものかもしれません。
このChoosing Wisely「賢い選択」のシリーズでは、医療機関が挙げた、受ける必要がない・あるいはよく行われている検査をリストにしています。これらの検査は時に体へ害を及ぼすものです。
ある病気のリスク・ファクター(危険因子)がある場合、その病気についての検査を受ける必要性が高くなります。たとえば糖尿病・高血圧・肥満は心臓病のリスク・ファクターとなります。
受けるスクリーニング検査が本当に自分に適しているかどうかを主治医と相談してください。検査は、以下に基づいています。
(米国家庭医学会、米国内科学会による)
心電図は、電極を胸につけて心臓の活動の様子を記録します。運動負荷試験の場合は、被検者がランニングマシーンで歩いているのを心電図で測定します。これらふたつの検査で、心臓の拍動や働きが正常かどうかわかります。
下記に該当する場合、上記のどちらかひとつの検査が必要です。
下記の場合は、検査は必要ありません。
(米国心臓学会、米国心臓核医学会による)
これらの検査では、心臓が激しく動いている際の心臓の画像を撮ります。これにより、心臓へ送られる血流が低下しているかどうかがわかります。負荷心臓超音波検査では超音波を使用します。負荷心筋シンチグラフィー検査は少量の放射性物質を使用します。
下記に該当する場合、検査が必要です。
下記の場合は、検査は必要ありません。
(心臓血管CT学会による)
CTスキャンで、心臓の冠動脈が石灰化していないかどうかを調べます。冠動脈の石灰化は、初期の冠動脈狭窄の徴候です。石灰化数値は、症状がない方が心臓発作を起こすリスクを予見するのに役立ちます。
下記に該当する場合は、検査が必要です。
下記の場合は、必要がありません。
(心臓血管CT学会による)
冠動脈造影CT(CCTA)は、CTスキャンの一種です。造影剤を血管に注入して、心臓の冠動脈が狭くなっていないか、閉塞していないかを診ます。
下記に該当する場合は、検査が必要です。
下記の場合は、必要ありません。
(米国家庭医学会による)
この検査で首の頸動脈が狭くなっていないか、閉塞していないかがわかります。頸動脈の閉塞によって、脳卒中が引き起こされることがあります。
下記に該当する場合は、検査が必要です。
下記の場合は、検査の必要はありません。
(米国家庭医学会による)
骨粗しょう症によって骨が脆くなり、骨折する可能性があります。テストはDEXAスキャンというもので、X線を使用して骨の強さをチェックします。
下記に該当する場合は、検査が必要です。
次の場合は、検査は必要ないでしょう。
(米国リウマチ学会による)
DEXAスキャンを受けるときは、直近から少なくとも2年空けてください。
下記の場合は、検査の回数を増やす必要があります。
下記の場合は、検査の回数を減らす必要があります。
(米国臨床病理学会による)
ビタミンDの値が低いと骨折や他の健康上の問題が出てくるリスクが高まります。
下記の場合、検査が必要です。
下記の場合、検査は必要ありません。
(米国家庭医学会による)
パップテストは、子宮内で子宮頚がんを引き起こすかもしれない異常な細胞を調べるために行います。子宮頚がんは、通常10年から20年かけて発症するので、毎年検査を受ける必要はありません。
下記に該当する場合は、検査を受けてください。
下記の場合は、検査を受ける必要がありません。
(米国消化器協会による)
この検査の過程で、医師はポリープ(良性の腫瘍)を発見して切除できます。これらの小さなポリープが、時としてがんになることがあります。検査では、細くて自在に曲がるチューブを使って大腸や直腸の内側を診ます。
下記に該当する場合は、検査を受けてください。
(米国家庭医学会による)
血液検査で、前立腺で作られる物質であるPSA値のレベルがわかります。高いレベルは、前立腺がんの徴候です。定期的にこの検査を受ける必要はありません。50歳~74歳の男性は、主治医にこの検査のリスクとメリットについて相談して下さい。
下記の場合は、医師に相談してください。
下記の場合は、恐らく検査の必要はありません。
(米国胸部専門医学会と米国胸部疾患学会による)
CTスキャンで高危険因子の喫煙者における肺がんの初期の徴候を調べます。
下記の場合は、検査が必要です。
下記の場合、検査は必要ではありません。
(米国核医学・分子イメージング協会による)
PET-CTでは、一回のテストで体の隅々までがん検査ができます。
下記の場合は、検査が必要です。
下記の場合、検査は必要ではありません。
必要がないのに多くのスクリーニング検査を行うことは、百害あって一利なしです。主治医に何が適切な検査かを相談してください。
(米国婦人科腫瘍学会、アメリカ産科婦人科学会による)
CA-125という項目を血液検査で調べるため、そして超音波が卵巣のガンを発見するために使用されています。
下記の場合、検査が必要です。
下記の場合、検査は必要ありません。
(米国家族医学会による)
脊柱側弯症は、脊柱が異常に曲がる病気です。医師または看護師が、子どもの背中を診て脊柱側弯症の徴候を調べます。検査は、通常の健康診断または学校の検診プログラムで行います。
ほとんどの子どもは、この検査を受ける必要はありません。なお検査はかなり正確であるというわけではありません。多くの脊柱側弯症は症状がおだやかで、問題がおこったり、治療が必要になったりもしません。むしろスクリーニング検査によって、結果的に不必要な放射線の使用や背中の矯正装具、また心理的ストレスをもたらすことになります。
下記の場合、お子さんは検査の必要があります。
(米国小児眼科・斜視協会による)
これらの検査は、眼科測定師や小児眼科医のようなスペシャリストが行う統合的な眼と視覚検査です。
検査が必要な子ども
検査が必要でない子ども
(米国小児眼科・斜視協会による)
網膜像検査は、光を感じる部分である網膜の画像を撮るものです。
検査の必要がある子ども
検査が必要でない子ども
※本記事は、徳田安春先生ご監修のもと、米ABIMによる “Choosing Wisely” 記事を翻訳し、一部を日本の読者向けに改稿したものです。
翻訳:Choosing Wisely翻訳チーム 学生メンバー・大阪医科大学 荘子万能
監修:小林裕貴、徳田安春先生
群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 客員教授、筑波大学 客員教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of Hospital General Medicine 編集長
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