院長インタビュー

医療と保健・福祉の総合力で地域を支える新潟県済生会三条病院

医療と保健・福祉の総合力で地域を支える新潟県済生会三条病院
郷 秀人 先生

新潟県済生会三条病院 前院長

郷 秀人 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年09月18日です。

新潟県済生会三条病院は、三条市からの要望を受けて1943年に開院しました。以来、済生会グループ全体の理念「済生の心」と、病院の理念「病める人に学び、より良い医療と福祉を提供する」にもとづき、三条市の医療・保健・福祉の充実と発展により、地域を支え続けています。

新潟県済生会三条病院の診療体制と特長、保健・福祉活動、採用教育体制などについて、病院長の郷秀人先生にお話を伺いました。

病院統合時全景(新潟県済生会三条病院よりご提供)

新潟県は医師数が少ないという背景の中で、チーム医療により積極的に診療に取り組んだ結果、当院のどの診療科も地域に欠かせない存在へと成長しました。

また、当院の外科系診療科は原則紹介制にして外来診療の負担を軽減し、各診療科の医師が手術に集中できる環境を整えました。

県央地域の小児科診療を支える要として、当院では小児科の医師が24時間診療にあたっています。

気管支炎や小児ぜんそく、アトピー性皮膚炎から、慢性腎炎ネフローゼ症候群川崎病まで、小児科疾患全般を診療しています。また、学校で行う腎臓検診後の定期的検尿や学校心臓検診後の心電図・心エコー検査などのフォローのほか、乳児健診や各種予防接種にも対応しています。

当院で対応が難しいと判断した場合には、大学病院、高次機能病院、新生児専門施設など近隣の医療機関へと搬送して、必要な処置を行うこともあります。

当院では産婦人科の医師だけでなく、助産師や看護師などのスタッフも揃っているため、産前産後の心身への細やかなケアを提供することができます。里帰り出産も受け付けているほか、分娩に支障ないと医師が判断すればご家族の立ち会い出産も可能であり、新しい家族の誕生を病院全体でサポートする体制も整っています。

小児科や新生児内科とも密な連係協力体制のもと、妊娠35~36週で生まれた早産児や低出生体重児の体調管理なども可能となっています。

糸球体腎炎、ネフローゼ症候群などによる腎機能障害や腎不全などの診療をしています。

CTやエコーなどの画像検査は外来でも可能ですが、腎生検が必要な場合には検査入院をお願いしています。

糖尿病の進展により発症する糖尿病性腎症にも対応可能で、日本糖尿病療養指導士認定機構が認める資格を有する看護師、臨床検査技師、管理栄養士とのチーム医療により、病気に対する教育や指導入院などを実施しています。院内の透析室で人工透析を受けることも可能です。

退院支援カンファレンスの様子(新潟県済生会三条病院よりご提供)

食道から腸管に至るまでの消化管のほか、肝臓・胆のう・膵臓のように消化管に付随する臓器を診療しています。肝炎肝硬変膵炎胆のう炎がんなどが多い疾患です。

消化器内科では内視鏡やカテーテルを使って治療することが多く、体にかかる負担が少ないことから当院では、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)にも積極的に取り組んでいます。

また、クリニカルパスの導入と運用にも積極的に取り組んでいます。クリニカルパスとは病気ごとに異なる入院や治療についてまとめた計画表のようなもので、患者さんの状態や合併症の有無などの情報を、医師、看護師、薬剤師など治療に携わる多職種間で共有する際にも役立ちます。

ぜんそく、肺炎肺気腫、陳旧性肺結核(休眠中の肺結核)などを診療しています。生活習慣病の一つとして注目されているCOPD慢性閉塞性肺疾患)の診断や治療にも積極的に取り組んでいます。

高齢化の進行を受けて、呼吸器内科へのニーズの高まりを感じています。当院でも可能な限りの診療をしていますが、がんや結核など一部の病気は他院を紹介させていただきます。

救急病院の告示を受けており、二次救急医療の一翼を担っています。しかし当地域で発生した搬送者を全て受け入れるのでなく、患者さんの病状などを踏まえ、必要に応じて近隣地域へ依頼することもあります。

低侵襲治療の実現と普及のため、手術支援ロボットのダヴィンチを導入しています。従来の開腹手術に比べ、ダヴィンチを使用した手術では体にメスを入れる量を減らせるため、治療後の痛みも少なく、退院までの期間も短縮可能です。

ダヴィンチは前立腺がん手術で用いられることが多かったのですが、2018年の診療報酬改定によって胃がん子宮がんなども健康保険の使用が認められるようになったため、ニーズは今後さらに高まると考えています。

透析室室内全景(新潟県済生会三条病院よりご提供)

2013年に透析室を増築、21床から40床へと増床したほか、車椅子やストレッチャーを使用されている方でもストレスなく移動できるよう通路を広くしました。また、治療のため長時間室内に滞在する患者さんのことを考えて、癒やしや安らぎも感じていただけるような美しい空間づくりを意識しました。

当院では血液透析と血液濾過透析を行っています。透析で必要になるシャントは、ご自身の動脈もしくは静脈内に設置する場合は当院で行い、人工血管内に設置する場合は血管外科の医師が在籍する病院を紹介しています。

医療・介護・健康分野のデジタル基盤構築と利活用の推進が掲げられて久しいですが、当院でも、将来を見据えてICT化を進めています。2018年9月には電子カルテシステムに全面移行しました。

たとえば、電子カルテでは患者さんの状態に関する情報を一元管理することができるので、入力された情報をもとに看護師や医師が患者さんを訪問したり、後方支援病院へと取り次いで必要な処置を行ったりするなど、医療資源の有効活用と診療のスムーズ化にも役立ちます。

済生会グループは、明治天皇による済生勅語のもと、医療の力で生活困窮者を支えるべく設立されました。

「生活困窮者を(すく)う」、「医療で地域の(いのち)を守る」、「医療と福祉、会を挙げて切れ目のないサービスを提供」により、全てのいのちの虹となるべく、職員一同励んでいます。

経済的事情などにより医療費の支払いが困難な方を対象に、無料もしくは低額料金での診療を行っています。

また、治療費や生活費などの経済的な問題のほか、介護保険制度や各種福祉サービス、退院後の社会生活に対する不安や悩みなどについて、専任の医療ソーシャルワーカーがお話を伺います。

済生会三条グループでは病院以外の施設として、特別養護老人ホーム「長和園」、介護老人保健施設「ケアホーム三条」、済生会三条訪問看護ステーション、附属保育園「たんぽぽ」、病児病後児保育ルーム「なのはな」があります。

特に、「なのはな」では具合の悪い子どもを預かることができるので、保護者やその方を雇う企業や地域にも大きく貢献できる事業だと自負しています。また、地域医療に携わる医療者をつなぐため、医師会と行政が協同で運営する三条市在宅医療推進センターも開設しました。医師会、歯科医師会、薬剤師会や行政など地域包括ケアの関連機関を集約させることで、地域包括ケアの中心地的存在にしていきたいと考えています。在宅医療方面の対応は進んでおり、ケアマネージャーや訪問看護ステーションからの相談受付やニーズにあった病院の紹介など、在宅と医療をつなぐ窓口的存在として活動しています。

熱心な職員が多い当院では、地域に向けた情報発信にも積極的に取り組んでいます。インフルエンザノロウイルスの予防や対応について学ぶ健康教室、当院のリハビリテーション科が考案したオリジナル体操で楽しく体を動かす体操教室などを開催しています。

また、思春期とともに訪れる心と体の変化に対する不安や悩みなど、家族や友人には相談しにくいことを気軽に相談していただけるよう、電話による相談窓口「思春期電話相談室」を開設しています。

ほかにも、日本看護協会が認定する母性看護の資格を持つ助産師が講師役となり、小中学校で性教育や生きること、自分を大切にすることの重要性について、生徒や保護者を対象に講義しています。

当院は病院自体が比較的コンパクトなため、病院内の移動にそれほど時間を費やすこともなく診療や勉強に集中しやすいでしょう。また、自然と職員同士の距離も近くなり、新しい方が入職してもすぐに顔を覚えてもらえるのが特徴です。ダヴィンチなどを使用した手術も間近で見学することができるため、医療人として必要な経験や知識を集中して身につけるのに適した環境であるといえるでしょう。

どの仕事でも3年たてばひととおりのことはできるようになる、といわれています。何事にも全力で取り組んできた方と、場あたり的になんとなくこなしてきた方では、3年後、10年後と時間がたつにつれ、実力に大きな差がうまれます。

自分はどういう医師になりたいのか、しっかり考えてください。そして、何事にも努力を惜しまず積極的に経験を積んでください。

済生会三条病院では、地域の皆さんの健康と生活を支えるべく、医療・保健・福祉の充実と発展に努めてきました。今後も、皆さんに信頼と愛情を寄せていただけるような病院であるため、職員一同協力しあって病院を盛り上げていきます。

地域の限りある医療資源を有効活用すべく、病院の適正利用にもご理解とご協力をいただけたら幸いです。

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  • 新潟県済生会三条病院 前院長

    郷 秀人 先生

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