院長インタビュー

救命救急・集学的ながん診療など高度急性期医療で地域を守る“最後の砦”日本医科大学 千葉北総病院

救命救急・集学的ながん診療など高度急性期医療で地域を守る“最後の砦”日本医科大学 千葉北総病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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日本医科大学 千葉北総病院は、事故などによる重症外傷をはじめ緊急性の高い三次救急を担う医療機関として、印旛市郡を中心に幅広い地域の医療を支える病院です。また、脳卒中心筋梗塞(しんきんこうそく)などの救急にも迅速に対応できるよう体制を整えており、さらに地域がん診療連携拠点病院として、検査から治療、緩和ケアまで一貫して患者さんを支えるがん診療を行っています。

千葉県ドクターヘリ基地病院、千葉県基幹災害拠点病院としての役割も担っており、まさに地域の“最後の砦”である同院の院長 別所 竜蔵(べっしょ りゅうぞう)先生にお話を伺いました。

当院の母体である日本医科大学は、1876年に済生学舎(男女共学の医学校)として創設されました。140年以上の歴史をもつ日本最古の私立医科大学であり、現在附属病院として4病院を開設しています。

当院は、1994年に日本医科大学4つ目の病院として開設され、印西市をはじめとする印旛医療圏*を中心に、広い範囲で高度急性期医療を担っています。

*印旛医療圏……成田市、佐倉市、四街道市、八街市、印西市、白井市、富里市、酒々井町、栄町

当院の位置する印西市は救急対応を行う医療機関がそれほど多いわけではありません。そのため、大きな事故などによる重度の外傷や高度な治療を要する熱傷、中毒など三次救急を中心に、幅広く対応しています。

現在、救命救急センターは病床数60床、救急専従医約20名(日本救急医学会認定 救急科専門医15名)の体制をとっており院内の各診療科や部署と密に連携しながら救急対応を行っています。また、脳卒中などの脳神経外科領域や心筋梗塞などの循環器領域の緊急対応にも力を入れています。救急医療と同時に専門性の高い医療の提供も可能なことは当院の強みの1つです。

救急搬送支援システム(M-MOCS)の導入

当院では、全国に先駆けて救急搬送支援システム(M-MOCS)を導入しています。M-MOCSとは、Medical Mobile Operation Control Systemの頭文字を取ったもので、救急車の緊急走行がスムーズにいくよう交差点を優先的に通過させる“現場急行支援システム”(FAST)と、医療機関へ救急車の通過地点を伝える“車両通行管理システム”(MOCS)を統合したシステムです。このシステムにより、救急車の現在位置と時刻を把握することができ、患者さんを受け入れる準備をより効率的に行うことが可能となります。

当院は、2001年より千葉県のドクターヘリ基地病院としてドクターヘリを運用しています。年間の出動は1,200件前後*と全国的にみてもかなり多い件数となっています。また、2004年からは千葉県のみならず茨城県南部地域までを飛行範囲を広げ、さらに広域の患者さんの救命にあたっています。

当院ではドクターヘリの運用にとどまらず、教育プログラムの開発や搭乗スタッフの教育・研修、システムの運用といった取り組みも積極的に行っています。

* 2023年4月1日~2024年3月31日実績:1,175件

ドクターヘリの弱点をカバーする“ラピッドカー”

夜間など運航時間や天候によって出動を左右されることもあるドクターヘリの弱点をカバーすべく、2010年よりラピッドカーも運用しています。ラピッドカーとは、心肺停止や重傷者の救命救急を早急に行うことを目的として、医師や看護師が同乗して救急現場に直行する専用車両のことです。当院では、ドクターヘリとラピッドカーを駆使し、病院到着前から治療を行う“攻めの救急医療”を展開しています。

当院は、地域の救急医療を担うと同時に災害時の医療においても基幹病院として中心的な役割を担っています。大規模な災害を想定しての災害訓練はもちろん、実際に災害が起こった際にはDMAT(災害派遣医療チーム)が出動し、人的・物的医療資源を投入して被災地に貢献できるよう努めています。

当院は27の診療科を有しており、どの診療科においても専門性の高い診療を行っています。また、循環器、消化器、呼吸器、脳神経部門においてはセンター方式を採用しており、診療科間の強固な連携で高度な医療展開を可能としています。

循環器内科・心臓血管外科

循環器内科では、狭心性・心筋梗塞などの虚血性心疾患に対する治療や、不整脈に対するカテーテルアブレーション(カテーテル心筋焼灼術)に力を入れています。心臓血管外科をはじめ集中治療部、放射線科、救命救急センターなどとの院内連携も密に取っており、よりスムーズな治療を行えるよう心がけています。

心臓血管外科は2020年4月より新体制となり、間口を広くあけ“断らず、1例でも多くの受け入れ”を掲げ診療を行っています。急性大動脈解離や不整脈に対する外科治療や、虚血性心疾患に対する冠状動脈バイパス術において歴史と実績があり、緊急性の高い手術にも対応しています。

脳神経外科

当院の脳神経外科は歴史が古く、開院の年である1994年の7月に“脳神経センター”として開設されました。以来、脳卒中の治療に力を入れて取り組んでおり、24時間365日体制で血管外科・血管内治療チームによる専門的な治療を行っています。

消化器は胃や小腸、大腸だけでなく、肝臓や胆道(胆のう・胆管)、膵臓(すいぞう)など領域が広いですが、当院では良性・悪性疾患問わず治療が可能であり、鼠径部ヘルニア肛門疾患(こうもんしっかん)の治療も行っています。

がん治療においては術後のQOL(quality of life、生活の質)に配慮した治療を心がけており、腹腔鏡下手術やロボット支援下手術による体への負担が少ない低侵襲治療(ていしんしゅうちりょう)も行っています。また、各領域に学会認定の専門医や指導医*がいることも大きな強みです。

*各学会認定の専門医:日本内視鏡外科学会 技術認定医(胃、大腸、肝臓、胆道、膵臓およびロボット支援手術認定プロクター)・日本食道学会 食道外科専門医・日本肝胆膵外科学会 高度技能指導医・専門医・日本膵臓学会認定指導医など

2015年より“地域がん診療連携拠点病院”として指定を受けています。いわゆる5大がん(肺、胃、大腸、肝、乳がん)に加え、食道がん膵臓がん、胆道がん、膀胱がん前立腺がん子宮がん卵巣がん皮膚がんなどほぼ全ての領域をカバーしており、検査から治療、緩和ケア、相談など一貫したサポートを行える体制を整えています。

治療においては、がん治療の三本柱である手術・化学療法(抗がん剤治療)・放射線治療の全てを当院で行うことができ、手術では胸腔鏡下、腹腔鏡下手術に加え手術支援ロボットによる手術も行っています。

手術支援ロボットによる手術は現在、前立腺がんをはじめさまざまな領域のがん治療に用いられています。当院では、2020年の秋より手術支援ロボット(ダビンチX)を導入し、前立腺がんに対する手術からスタートして、少しずつ領域を広げていきました。現在、ダビンチXに加えダビンチXiという新機種も導入しており、2台で稼働しています。当院で行えるロボット支援手術は以下のとおりです。

・消化器外科:直腸がん胃がん、食道がん、膵臓腫瘍(すいぞうしゅよう)、結腸がん、肝臓がん

・泌尿器科:前立腺がん、腎がん、腎盂尿管(じんうにょうかん)がん

・女性診療科:子宮筋腫骨盤臓器脱子宮体がん

手術支援ロボットは新しい治療法ということもありますが、何より患者さんにとってメリットが大きいということから当院でも導入を決め、センター化も進めました。ロボット支援による手術のもっとも大きなメリットは、やはり低侵襲であることです。具体的には、手術による出血が抑えられることや痛みが少ないことなどが挙げられ、これにより運動機能の維持や早期の社会復帰も期待できます。

また、ロボット支援手術は各診療科の医師だけでなく麻酔科医師や看護師、臨床工学技士、事務部など多職種での連携が不可欠です。そのため当院では、低侵襲ロボット手術センターとしてセンター化し、多職種でのチーム医療を実践しています。チーム医療により、1つの診療科の視点だけでなくさまざまな視点が入ることにより、客観性や公正性を保てるというメリットもあり、手術の質や安全性の向上にも寄与しています。

2020年に千葉県より委託を受け、印旛医療圏を担当する地域型の“認知症疾患医療センター”を開設しました。このセンターでは、認知症の鑑別診断や日本認知症学会認定の認知症専門医による診療、認知症療養相談、地域医療介護連携などを行っています。

2024年4月よりPET検査が導入される予定です。これまで主にアルツハイマー型認知症の早期診断を目的として、脳脊髄液検査(のうせきずいえきけんさ)腰椎穿刺(ようついせんし))を行っていましたが、PET検査が導入されることにより、よりスムーズな診断が可能となります。

当院は診療科間のつながりが非常に強く、医師をはじめ、看護師、薬剤師、理学療法士や臨床検査技師などコメディカルのスタッフ、事務職員など全職員が一丸となって患者さんに対応する“All for One”の精神を大切にしています。それぞれの専門性はもちろん大切ですが、それだけにこだわったり診療科間や職種で壁をつくったりするのではなく、みんなで協力して1人の患者さんを診ることで、包括的な医療を提供することが可能となります。

当院では、地域の方や患者さん向けの公開講座や講演会も行っています。子ども向けのイベントとして“夏休み公開講座”を行ったこともあり、興味をもっていただけるよう、さまざまなテーマで取り組んでいます。

医療資源には地域による差が大きく、高度な治療を受けるために遠くの病院へ足を運ばなければならないという地域も少なくありません。当院は高度急性期医療を担う病院として、常に新しい治療や効果が期待できる治療を取り入れ“この地域にこの病院があってよかった”と思っていただけるよう、これからもフルパワーで地域医療に貢献してまいります。

医師をはじめ医療に従事する者は皆、患者さんのために自分の能力を発揮し、少しでも元気になってもらいたい、前向きになってもらいたいという気持ちを持っていると思っています。それが喜びややりがいにつながっているので、ぜひ安心して当院を頼っていただければと思います。

*医師数や診療科数などの情報は全て2025年9月時点のものとなります。

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