生理が多い:医師が考える原因と対処法|症状辞典

生理が多い

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 出血量が多く、立ちくらみ、顔色が悪い、意識が遠のくなどの症状がある
  • 激しい腹痛がある
  • 妊娠しているもしくはその可能性がある

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 日常生活に支障があるほど量が多い
  • 量だけでなく月経期間も長い
  • 月経不順がある

山王病院(東京都) 名誉病院長

堤 治 先生【監修】

経血量を正確に計測することはできませんが、血液の塊が排出されたり昼に夜用のナプキンが必要になったりする場合などは、経血量が通常よりも多い可能性があります。1周期の経血量はおよそ50~60ml程度であり、医学的には150ml以上の場合を“過多月経”と定義します。

  • 周期ごとに強い生理痛と多量の経血が見られる
  • 月経期間が長く、ダラダラとした出血が続く
  • あざや鼻血が出やすくなり、徐々に経血量も増えてきた

これらの症状が見られる場合、どのような原因が考えられるでしょうか。

経血量には個人差がありますが、なかには病気が原因で経血量が増えることがあります。経血量の増加を引き起こす主な病気は以下のとおりです。

経血は妊娠に向けて成熟した子宮内膜が脱落し、血液と共に体外へ排出されたものです。このため、以下のような子宮の病気によって経血量が多くなることがあります。

子宮筋腫

子宮は平滑筋で形成されており、平滑筋内に平滑筋腫が発生するものを子宮筋腫と呼びます。良性腫瘍(りょうせいしゅよう)のため転移を生じることはありませんが、子宮内に多発したり徐々に大きくなったりします。経血量が増えるのが特徴で、慢性的な貧血に陥ることも少なくありません。20~40歳代の女性の貧血の原因としては、一番多いものです。また、着床障害などを引き起こして不妊症の原因となることがあります。

子宮筋腫
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子宮内膜症、子宮腺筋症

本来は子宮内で成熟する子宮内膜が、子宮外の部位や子宮の筋肉の中で成熟する病気です。下腹部痛や性交時痛を引き起こし、特に排卵期に症状が強くなるのが特徴です。また、強い生理痛が生じ、子宮腺筋症では月経量も増加する傾向があります。

子宮内膜症
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子宮腺筋症
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子宮頸がん、子宮体がん

子宮頸部(けいぶ)や体部に発生するがんですが、進行すると不正出血を引き起こすため“経血量が増えた”と感じられることがあります。月経時以外にも少量の不正出血を生じるのが特徴で、特に子宮頸がんでは性交後に出血を起こしやすくなります。

早期の段階では自覚症状がないこともありますが、進行すると不正出血のほかにも下腹部痛や貧血、性交時痛などの症状が現れます。

子宮頸がん
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子宮体がん
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月経は卵巣から分泌される女性ホルモンのはたらきによって調節されています。

女性ホルモンの一種であるエストロゲンは子宮内膜を増殖させ、プロゲステロンは子宮内膜を着床に適した環境に成熟させる作用があります。このため、女性ホルモンの分泌に異常が生じると、子宮内膜が過度に成熟したり月経期間が長くなったりすることで経血量が増えることがあります。

原因となる主な病気は以下のとおりです。

更年期障害

閉経前後5年間の時期を更年期と呼び、女性ホルモン分泌の急激な変化を生じることで全身に生じるさまざまな症状を更年期障害といいます。

更年期障害では、女性ホルモンバランスの乱れから子宮内膜の過度な増殖が促されたり、月経周期の乱れによる月経の頻発や月経期間の延長などが見られたりします。そのほかにも動悸や発汗、めまいなどの自律神経症状や抑うつ気分、イライラ感など気分の変調を伴いやすいのが特徴です。

更年期障害
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多嚢胞性卵巣症候群

卵巣に多数の嚢胞(のうほう)が形成されることで表面が硬くなり、排卵障害を引き起こす病気です。男性ホルモンが多く分泌されることが関係すると考えられており、月経周期の乱れや肥満、にきび、毛深さといった症状が現れます。

また、エストロゲンとプロゲステロンのバランスが乱れることで子宮内膜が過剰な増殖を促されたり、月経期間が長くなることで経血量の増加を引き起こしたりすることも少なくありません。

多嚢胞性卵巣症候群
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卵巣腫瘍

卵巣に発生する腫瘍で、エストロゲンを産生するタイプの卵巣腫瘍では子宮内膜の過剰な増殖が促されて経血量の増加を引き起こすことがあります。

また、進行して病変が大きくなると下腹部に腫瘤(しゅりゅう)を触れたり、腹部膨満(ぼうまん)・便秘などの症状が見られたりすることもあります。

卵巣腫瘍
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内科的な病気が原因で出血しやすい状態になると、経血量も増加することがあります。原因となる主な病気は以下のとおりです。

白血病、血小板減少性紫斑病など

血液には、血小板と呼ばれる止血効果を持つ細胞と血液を固めるための多くの凝固因子が含まれています。血小板や凝固因子などが減少する病気によって出血が止まりにくくなり、結果として経血量が増加することがあります。

経血量の増加だけでなく、頻回な鼻血や原因のないアザなどが見られるようになるのが特徴で、胃潰瘍(いかいよう)や出血性腸炎脳出血などの重篤な合併症を引き起こすこともあります。

白血病
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また、上で紹介した病気以外のまれな病気によって経血量が増加することもあります。たとえば、止血異常症の1つとして知られるフォン・ヴィレブランド病では、成人の5〜20%、思春期の5〜36%の方に月経過多の傾向が見られます。また、このほかにも血小板機能異常症、凝固Ⅺ因子欠乏症の方は月経量が多くなりやすいと考えられています。フォン・ヴィレブランド病血友病の次に多い遺伝性出血性疾患ですが、未診断の患者を含めるとより多くの患者がいるのではないかと考えられています。

また病気ではありませんが、血のつながった家族に血友病患者がいることを指す“血友病保因者”も遺伝的な要因で月経量が多くなる可能性があります。

経血量には個人差がありますが、日常生活に支障をきたしたり貧血などの症状を引き起こしたりしているような場合には、何らかの病気が背景にある場合があります。生理が多いための貧血は徐々に進むため、なかなか気付かないこともあります。最近疲れやすいなどの症状も貧血を疑ってください。なお、なかには早急に治療が必要な病気もあるので、経血量が多い場合は軽く考えずに病院で検査・治療を受けるようにしましょう。

特に、非常に強い生理痛などを伴う場合、めまいや息切れなど貧血症状が強い場合、不妊に悩んでいる場合、他部位からも出血しやすい場合はなるべく早めに病院を受診しましょう。

受診に適した診療科は婦人科ですが、他部位からの出血も目立つ場合には内科で診てもらうのも1つの方法です。受診の際には、いつから経血量が多くなったのか、随伴症状、妊娠・出産歴などを詳しく医師に説明するようにしましょう。また、基礎体温の記録がある場合は、持参すると診察がスムーズに進むことがあります。

経血量の増加は日常生活上の好ましくない習慣が原因のことがあります。原因となる主な習慣とそれぞれの対処法は以下のとおりです。このほかに急激に太ったり、激しいダイエットをしたりするのもよくありません。

過剰なストレスの蓄積は女性ホルモンバランスの乱れを引き起こし、経血量の増加を生じることがあります。

ストレスをためにくい生活をするには

日常生活からストレスを完全に排除することは困難ですが、自分に合ったストレス解消法を身につけ、ストレスがたまりにくい生活を心がけるようにしましょう。また、十分な休息や睡眠時間を確保することも大切です。

日常生活上の習慣を改善しても経血量が多い状態が続く場合は、思わぬ病気が原因の場合があります。軽く考えずにそれぞれの症状に適した診療科を受診して治療を受けるようにしましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。