かんせん

乾癬

最終更新日:
2024年09月27日
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2024/09/27
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2021/03/12
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2017/04/25
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医師の方へ

概要

乾癬(かんせん)とは、皮膚に赤く盛り上がった発疹(ほっしん)が生じ、表面に白いふけのような粉(鱗屑(りんせつ))がつく特徴的な症状が繰り返し現れる皮膚の病気です。

炎症性角化症に分類され、皮膚の角化と肥厚(ひこう)、そして炎症が同時に起こります。角化とは、皮膚のもっとも外側の層(角質層)の細胞が通常よりも速く作られ蓄積することで、皮膚が厚く硬くなる現象です。一方、肥厚とは皮膚の層全体が厚くなることを指し、これにより皮膚が盛り上がってみえます。これらの変化と炎症が組み合わさることで、赤く盛り上がった発疹が形成されます。

主な症状は、赤く盛り上がった発疹とそれに伴う鱗屑です。約半数の患者がかゆみを感じます。症状は頭部、背中、腰からお尻、肘、膝、すね(膝から足首)などに出やすい傾向があります。発疹の大きさや形はさまざまで、地図のような形になることもあります。症状がある部分と正常な皮膚との境界がはっきりしているのも特徴です。また、爪にも症状が現れることがあります。

日本の乾癬患者数は40~60万人程度と推定されており、近年増加傾向にあります。日本では男性の発症頻度が女性の約2倍です。発症年齢は小児から高齢者まで幅広くみられますが、男性では50歳代、女性では20歳代と50歳代に発症のピークがあるとされています。また、小児での発症もまれではありませんが、全体の患者数からみると割合はわずかです。

乾癬は慢性の経過をたどる病気で、症状がよくなったり悪くなったりを繰り返します。しかし、近年新しい治療薬の開発が進められており、従来の薬物療法や光線療法などで効果が得られなかった患者も、乾癬と上手く付き合いながら、質の高い生活を送ることが可能になってきています。

乾癬の治療は日々進歩していますが、定期的な医師の診察を受け、日常生活での自己管理を行うことも、症状のコントロールには欠かせません。患者によって最適な治療法は異なるため、専門医と相談しながら適切な治療を選ぶことが重要です。

種類

乾癬の病型は大きく以下の5つに分類されます。

  • 尋常性乾癬
  • 乾癬性関節炎
  • 滴状乾癬
  • 乾癬性紅皮症
  • 膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)

乾癬のおよそ9割が尋常性乾癬です。滴状乾癬を除く病型は重症化しやすい傾向があります。特に乾癬性紅皮症と疱性乾癬(汎発型)は、発熱などの全身症状を伴うことがあり、入院治療が必要となる場合もあります。

これらの病型は互いに移行したり、合併したりすることがあります。また、突然重症化することもあるので注意が必要です。

原因

乾癬は、皮膚の細胞が通常よりも速く入れ替わることで発症します。通常、皮膚では基底層で新しい表皮細胞が作られ、古い細胞は徐々に押し上げられて角質となり、最終的に垢となってはがれ落ちます。この過程を「ターンオーバー」と呼びます。

乾癬患者の皮膚では、表皮細胞の異常な増殖によりターンオーバーの周期が極端に短くなっています。その結果、十分に成熟していない細胞が急速に表面に押し上げられ、皮膚の表面が厚く盛り上がります。さらに、積み重なった角質が鱗屑となってふけのようにボロボロと剥がれ落ちます。

この表皮の異常は、T細胞や樹状細胞、好中球といった免疫細胞が引き起こすことが分かっています。発症の詳細なメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、遺伝的要因や環境的要因などが複合的に関与していると考えられています。

遺伝的(先天的)要因

乾癬は家族内で発症することがあるため、特定の遺伝子異常が関与していると考えられています。病変部では免疫細胞が中心となり、表皮細胞と相互に作用して炎症を引き起こすサイトカイン(TNF-α、IL-17、IL-23など)が生成されており、これらサイトカインに関わる遺伝子に異常が起こることが背景にあると推測されています。

環境的(後天的)要因

外傷、紫外線、感染症、薬剤などの外的刺激が乾癬を誘発または悪化させることがあります。また、生活習慣病も重要な要因です。肥満、高血圧脂質異常症糖尿病が乾癬と深く関連しており、ときに乾癬発症の引き金となることも分かっています。ただし、これらの病気も遺伝的背景があるため、完全に後天的な要因とは言い切れない面もあります。さらに、飲酒や喫煙も症状や治療の効果に影響を与える可能性があります。

自己免疫的要因

乾癬は免疫疾患の一種であり、自己免疫疾患*である可能性も考えられてきました。しかし、現在のところ特定の自己抗体は同定されていません。

*自己免疫疾患:免疫機能が正常にはたらかなくなり、自分自身の健康な細胞や組織を誤って攻撃してしまう病気のこと。

症状

乾癬は大きく分けて5つのタイプに分類され、それぞれの症状は以下のとおりです。

尋常性乾癬

髪の生え際も含む頭部や肘、膝、背中から腰やお尻、すねなど、こすれやすい部分に症状が現れます。ときには陰部や(わき)の下、手のひらや足の裏にも症状が出ることがあります。

症状は通常、皮膚が赤くなる紅斑や、皮膚表面が小さく盛り上がった発疹から始まります。時間の経過とともに、これらの発疹は徐々に隆起し、ごわごわと硬くなっていきます。症状が進行すると、発疹の表面にふけ状の鱗屑が付着し、それがポロポロとはがれ落ちる現象(落屑(らくせつ))がみられるようになります。

特徴的なのは、個々の発疹が互いにつながり合って、より大きな範囲に広がっていくことです。これにより、まるで地図のような不規則な形をした皮膚の変化(局面)が形成されます。この局面が大きくなると、表面は銀白色のかさぶた状になります。このかさぶた状の部分は、無理に剥がそうとしても簡単には取れず、むしろ出血する可能性があるため、注意が必要です。

また、爪が変形したり濁ったりする症状が現れることもあります。かゆみを感じる方もいますが、症状が落ち着くとかゆみがなくなることもあります。特徴的なのは、傷ついたりこすれたりした場所に新しい症状が出やすいことです。これは「ケブネル現象」と呼ばれ、皮膚が刺激を受けた箇所に新たな乾癬の症状が現れる現象のことを指します。

乾癬性関節炎

乾癬性関節炎は、皮膚症状に加えて関節症状を伴う乾癬の一種です。多くの場合、関節リウマチと同様に手指の関節炎として症状が始まりますが、脊椎(背骨)を含む全身のあらゆる関節に影響を及ぼす可能性があります。症状は関節のこわばり、腫れ、痛みなど多岐にわたり、進行すると不可逆的な関節の変形をもたらす恐れがあります。

特筆すべきは、乾癬性関節炎が関節リウマチとは異なるメカニズムで進行することです。具体的には、関節そのものよりも、腱や靱帯(じんたい)など骨に付着する部分における炎症から始まることが明らかになっています。

注意が必要なのは、皮膚症状が頭部や陰部など隠れた部位に限局し、患者の訴えがほとんど関節症状のみである場合です。このような症例では、乾癬性関節炎の診断が見落とされる可能性があります。

適切な診断と関節の評価を行うためには、皮膚科医だけでなく、リウマチ科や整形外科など他の専門科との緊密な連携が極めて重要です。

滴状乾癬

主に小児や若年者にみられる乾癬です。多くの場合、扁桃炎などの溶連菌感染症が引き金となって発症します。特徴的な症状として、小さな盛り上がり(丘疹)が全身に広がりますが、これらの丘疹は通常、互いに融合することは少ないです。

滴状乾癬の経過は一般的に急性であり、適切な治療を受ければ比較的短期間で改善することが多くあります。しかし、再発を繰り返す可能性があり、その過程で個々の丘疹が融合して大きな皮疹(局面)を形成し、最終的に尋常性乾癬へ移行することもあります。

乾癬性紅皮症

乾癬性紅皮症では、全身に赤い発疹(紅斑)が広がり、皮膚全体が真っ赤に炎症を起こして痛々しい状態となります。同時に、皮膚表面から大量の鱗屑が絶えず剥がれ落ちる現象(落屑)がみられます。

この症状は多くの場合、尋常性乾癬から進行して発症します。膿疱性乾癬と並んで乾癬の重症な亜型として知られており、皮膚症状だけでなく全身に影響を及ぼします。また、発熱、悪寒、強い倦怠感などの全身症状を伴うことが多く、症状の重篤さから入院による治療が望ましいとされています。

膿疱性乾癬

尋常性乾癬の発症後に続いて起こることもありますが、突然発症することもあります。

疱性乾癬を発症するとを含んだ小さな発疹(膿疱)が現れるようになります。手や足など体の一部に限局して現れる場合もあれば、全身に広がる場合もあります。全身に広がった場合は発熱や強い倦怠感などの全身症状を伴うことがあります。

さらに重症化すると、皮膚が広範囲に赤くなる紅皮症を併発し、入院による全身管理が必要になる場合もあります。特に、全身に膿疱が広がるタイプは疱性乾癬(汎発型)と呼ばれ、国の難病に指定されています。

検査・診断

乾癬は特徴的な皮疹が好発部位に現れるため、多くの場合、視診と問診によって診断が可能です。しかし、症状が出る部位によってはほかの皮膚疾患との鑑別が必要な場合があります。特に、膿疱が形成される場合や全身性の紅皮症がみられる場合には、皮膚生検*を行うことがあります。

乾癬性関節炎が疑われる場合は、関節リウマチとの鑑別のためにリウマチ因子などの検査を行います。まれではありますが、乾癬と関節リウマチが併存することもあるため、注意が必要です。

また、乾癬患者は高血圧糖尿病心筋梗塞(しんきんこうそく)脳血管障害などを発症するリスクが高いことが知られています。そのため、診察時には血圧測定を行い、定期的にHbA1cや脂質などの血液検査を実施することが重要です。加えて、慢性腎臓病の併存も少なくないため、腎機能や尿酸値のチェックも必要です。メタボリックシンドロームの可能性も考慮し、総合的な健康状態の評価を行います。

なお、乾癬に使用される薬剤に関連して副作用を生じることもあります。副作用の有無を確認するために定期的なモニタリング検査も必要です。

*皮膚生検:皮疹の一部を採取して顕微鏡で確認する検査。

治療

乾癬の治療は、症状の重症度や範囲に応じてさまざまな方法が選択されます。近年、新たな内服薬や生物学的製剤の開発が進み、治療の選択肢が増えています。患者の状態に応じて、最適な治療法を選択することが重要です。また、定期的な経過観察と必要に応じた治療の調整が不可欠です。

外用療法

初期治療の基本は外用薬です。主にステロイド外用薬と活性型ビタミンD3外用薬が使用されます。両者を組み合わせた配合外用薬も便利な選択肢です。

内服療法

外用薬で効果が不十分な場合や、皮疹が広範囲に及ぶ重症例では内服治療が検討されます。ビタミンA誘導体、免疫抑制薬(シクロスポリン、メトトレキサートなど)、PDE阻害薬などが使用されます。ただし、ステロイドの内服は疱性乾癬を誘発する可能性があるため、推奨されていません。

そのほか、かゆみに対する抗ヒスタミン薬や、乾癬性関節炎の痛みに対する消炎鎮痛薬なども使用されます。

光線療法(紫外線治療)

紫外線を照射する治療法で、全身または局所に適用できます。特に波長311nm付近のナローバンドUVB療法が効果的で、治療時間も短く簡便なため、頻繁に用いられています。

生物学的製剤

重症の乾癬や生活に支障をきたすような乾癬性関節炎を合併する場合、生物学的製剤の使用が検討されます。この薬剤は、体内の特定の炎症を引き起こす物質や細胞に作用し、炎症反応を抑制します。乾癬の場合は、TNF-α阻害薬、IL-17阻害薬、IL-23阻害薬などが使用されます。疱性乾癬の場合は、これらに加えてIL-36阻害薬が使用されます。

生物学的製剤は高い治療効果を有しており、ほとんどの患者で顕著な症状改善が期待できます。通常、注射や点滴で投与され、従来の治療法で十分な効果が得られない患者に使用されます。

一方、生物学的製剤は他の治療法と比較して費用が高額であるという課題があります。この費用面での対策として、高額療養費制度、加入している保険組合による付加給付、その他の医療費助成制度など、さまざまな制度の活用が推奨されます。これらの制度を適切に利用することで、費用の負担を抑えることができます。

顆粒球単球吸着除去療法

過剰な炎症を引き起こす白血球の一種である顆粒球と単球を血液中から取り除く方法です。通常、週に1回、約1時間かけて血液中から顆粒球や単球を選択的に除去します。主に疱性乾癬に対して行われ、薬物療法や光線療法などで効果が見られない場合に検討されます。

小児乾癬

乾癬は全ての年代で発症する可能性があり、子どもにも発症することがあります。小児乾癬の治療は基本的に成人と同じ薬剤が使用されますが、子どもには使用できない薬剤も多くあります。また、小児は扁桃炎などの感染症後に乾癬が悪化しやすいため、抗菌薬の投与を行うケースも多いことが特徴です。近年では小児乾癬に対しても新しい生物学的製剤が承認されており、治療の選択肢が広がっています。小児乾癬の治療においては、年齢に応じた適切な薬剤選択と、感染症対策を含めた総合的なアプローチが重要です。

患者会

さまざまな疾患領域で患者会活動が行われており、乾癬でもその活動は非常に活発です。1人あるいは家族で悩む患者に対して、同じ立場の患者側から情報提供や相談支援を行っています。全国都道府県の過半数で地域の患者会が存在し、それらを束ねる全国の日本乾癬患者連合会が組織されています。それ以外にも乾癬の疾患啓発普及を目的として設立された法人組織があり、市民公開講座や世界乾癬デー(10月29日)のイベント活動なども精力的に行われています。

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