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けっせんせいびしょうけっかんしょう

血栓性微小血管症

同義語
TMA
監修:

概要

血栓性微小血管症(けっせんせいびしょうけっかんしょう)(TMA)は、全身の細い血管の中に血栓(血の塊)が形成される病気の総称です。全身の微小な血管内に血栓が形成され、内部がさらに狭くなるため、血管内を通り抜けようとする赤血球が壊されて貧血溶血性貧血)が起こり、特に腎臓や脳などに重篤な障害をもたらすことがあります。

血液検査の結果、血小板*の減少と溶血性貧血がみられた場合は血栓性微小血管症が疑われ、詳細な検査と治療が実施されます。血栓性微小血管症の原因は、血液中の酵素の不足や免疫の異常、感染症など多岐にわたり、これらの原因に応じて種類(病名)が分かれています。代表的な病気には、O157などの志賀毒素産生大腸菌感染(しがどくそさんせいだいちょうきんかんせん)による溶血性尿毒症症候群(STEC-HUS)や、国の指定難病に認定されている血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)などがあります。

*血小板:血液中の細胞の1つ。主に出血時に血液を集めて固めることで傷口を塞ぎ、止血する役割を持つ。

種類

血栓性微小血管症にはさまざまな種類がありますが、大きく以下に分類されます。

血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)

血液中の止血に関わるタンパク質であるフォン・ヴィレブランド因子(VWF)を適切な長さに切り分ける酵素(ADAMTS13(アダムティーエス13))の活性が著しく減少し、全身の微小血管内に血栓が作られる病気です。

溶血性尿毒症症候群(HUS)

血栓性微小血管症の中でも、特に急性腎不全(急激な腎臓の機能低下)を主な特徴とするものを指します。

  • STEC-HUS……O157などの志賀毒素を出す大腸菌の感染に伴うもので、従来は典型的溶血性尿毒症症候群と呼ばれていました。小児の血栓性微小血管症のうち、約90%はSTEC-HUSといわれています。
  • 肺炎球菌感染による溶血性尿毒症症候群(肺炎球菌HUS)……肺炎球菌の感染に伴って生じる溶血性尿毒症症候群です。
  • aHUS……感染症ではなく、免疫の仕組み(補体(ほたい))の異常によって生じる溶血性尿毒症症候群です。

二次性血栓性微小血管症

自己免疫疾患(自分の体を攻撃する病気)やがん、臓器あるいは造血幹細胞移植、特定の薬(抗がん薬や、抗血小板薬、免疫抑制薬など)、妊娠の影響によって引き起こされる血栓性微小血管症です。

特に、造血幹細胞移植後の血栓性微小血管症の発症率は10~25%といわれています。発症すると多臓器不全になりやすいため、造血幹細胞移植後の重要な合併症の1つとされています。

そのほかの血栓性微小血管症

凝固系(血液が固まる機序)の異常による血栓性微小血管症や、ADAMTS13の活性が低下しておらずTTPと診断することが難しい血栓性微小血管症(TTP類縁疾患)などが生じることがあります。

原因

血栓性微小血管症の原因は多岐にわたります。主には以下のようなものがあります。

TTPの原因

ADAMTS13のはたらきが極端に低下し、血管内に不要な血栓が作られることで発症します。多くの場合、自分の体の中でADAMTS13のはたらきを阻害する物質(自己抗体)が作られることが原因で、後天性TTPと呼ばれています。ADAMTS13遺伝子の先天的な異常によって発症することもあり、先天性TTPと呼ばれています。

STEC-HUSの原因

大腸菌の出す志賀毒素が血管内の細胞を直接壊すことで発症するといわれています。従来はO157が主な原因でしたが、近年はO26やそのほかの型の菌によるSTEC-HUSの発症が増加しています。

aHUSの原因

補体という、細菌などから体を守る免疫システムが過剰にはたらくことが原因です。その詳細な機序は不明ですが、aHUSの約60%に補体のはたらきに関わる因子(H因子、I因子、B因子、C3など)の遺伝子異常が認められます。特に日本人では、C3という遺伝子の異常がある割合が高いことが明らかになりました。こうした生まれ持った体質に、感染症や妊娠などの要因が加わると発症することがあります。ただし、遺伝子異常がある場合でも発症率は約30%といわれており、必ず発症するわけではありません。また、H因子の自己抗体が原因の場合や、原因不明の場合もあります。

二次性血栓性微小血管症の原因

二次性血栓性微小血管症は、以下のような病気や状態、薬に伴って発症することがあります。

症状

全身の微小な血管に生じた血栓によって、血小板の減少や溶血性貧血などの血液の異常と血栓による臓器の障害が同時に現れることを血栓性微小血管症の3徴候と呼びます。そのほか、血栓性微小血管症の種類によって異なる症状が現れるため、ここでは主な種類の症状について解説します。

血栓性微小血管症の3徴候

  • 血小板減少……血栓を作るために血小板が使われ、血液中の血小板数が減少します。血小板数が5万/μL以下になると出血が止まりにくくなり、紫色のあざが出現することがあります。
  • 細血管障害性溶血性貧血(微小血管症性溶血性貧血)……血栓によって狭くなった血管内を赤血球が通り抜けようとして、壊されることで起こる貧血です。だるさや息切れなどが現れます。
  • 臓器の障害……血栓が血管の内部を塞ぐことで、特に腎臓や脳などの臓器が影響を受け、機能が低下します。

TTPの症状

古典的な症状として、血小板減少や貧血、腎障害に発熱、精神神経症状を加えた5つが挙げられます。精神神経症状としては頭痛せん妄、意識障害、手足の麻痺などがみられ、症状がよくなったり悪くなったりを繰り返します。

STEC-HUSの症状

激しい腹痛、血便、下痢、下血といった消化器症状が先行し、その後に貧血や腎臓の障害が現れます。腎臓のダメージが強いことが特徴です。頭痛や昏睡(こんすい)、けいれんなどを生じることもあります。

aHUSの症状

aHUSの約50%が重度の腎障害となり、乏尿(尿が出ないこと)やむくみが現れることが特徴です。また、急激な血圧上昇がみられたり、STEC-HUSと同様に腹痛や下血がみられたりすることもあります。

二次性血栓性微小血管症の症状

原因となる病気の症状に加え、貧血や腎機能の低下などが見られます。妊娠30週以降に生じる血栓性微小血管症はHELLP症候群と呼ばれ、高血圧の症状がみられることもあります。

検査・診断

血栓性微小血管症の診断は、まず血栓性微小血管症であることを検査で確認し、次に詳細な検査で種類を絞り込んでいきます。

血栓性微小血管症に共通する検査

主に血液検査が行われます。腎機能を確かめるため、尿検査が行われることもあります。

  • 末梢血塗抹標本(まっしょうけつとまつひょうほん)……顕微鏡で血液を観察し、血栓にぶつかって壊れた赤血球の破片である破砕赤血球(はさいせっけきゅう)があるかを確認します。
  • 細血管障害性溶血性貧血……赤血球が壊れた際に出る物質(LDHや間接ビリルビンなど)の上昇や、貧血の程度などを調べます。
  • 血小板数……血小板の減少の程度を調べます。
  • 腎機能……クレアチニンや尿素窒素の上昇、蛋白尿・血尿の有無などを調べ、腎臓の機能低下の程度を確かめます。

血栓性微小血管症の種類を特定するための検査

血栓性微小血管症の状態が確認された場合、以下の検査で種類を特定します。ここでは、血栓性微小血管症の主な種類の検査方法について解説します。

TTP

血小板数の減少(10万/μL未満が基準ですが、TTPの多くは1~3万/μL)と細血管障害性溶血性貧血がみられた場合、血液検査によってADAMTS13の活性を測ります。この数値が10%未満であればTTPと診断されます。

さらに、ADAMTS13の自己抗体の有無を調べる検査も行われます。自己抗体が陽性の場合は、後天性TTPと診断されます。自己抗体が陰性の場合は、先天性TTPであることを確かめるためにADAMTS13遺伝子解析が行われます。

STEC-HUS

便の培養検査や、便の中の志賀毒素を検出する検査などを行い、大腸菌感染の有無を調べます。大腸菌の感染から長期間経過している場合は、便を使った菌の特定が難しくなるため、血液検査が行われることもあります。

aHUS

TTPやSTEC-HUS、二次性血栓性微小血管症が全て否定された場合にaHUSと診断されます。補体に関連する遺伝子検査が行われることもあります。

二次性血栓性微小血管症

血栓性微小血管症の原因となっている病気や状態、薬がある場合は二次性血栓性微小血管症と診断されます。そのため、病気の有無を調べる検査や、使用している薬の確認、移植の有無など、背景にある原因を詳しく調べます。

治療

血栓性微小血管症の種類に応じた治療が行われます。ここでは、主な種類の治療法について解説します。

TTPの治療

先天性TTPの場合、まず新鮮凍結血漿輸注(しんせんとうけつけっしょうゆちゅう)が検討されます。新鮮凍結血漿とは、正常なADAMTS13を含む健康な人の血漿(血液の液体成分)を補充し、血栓の形成を防ぐ治療法です。ADAMTS13を補充する注射薬(アパダムターゼアルファ/シナキサダムターゼアルファ)が用いられることもあります。

後天性TTPが疑われた場合、早期の治療が重要です。そのため、確定診断の前に血漿交換などの治療が始まることがあります。血漿交換とは、自己の血漿を健康な人のものと入れ替え、正常なADAMTS13を補充する治療法です。血漿交換と同時に、副腎皮質ステロイドおよび抗体薬(カプラシズマブ)を投与する場合もあります。再発・難治の場合は、主にリツキシマブと呼ばれる薬が使用されます。

なお、TTPでは血小板数の著しい減少がみられますが、血栓の状態が悪化するリスクがあるため、原則的に血小板輸血は行われません。

STEC-HUSの治療

STEC-HUSと診断された場合、特異的な治療法はないため、適切な水分補給(輸液)や、血圧管理などの対症療法が中心となります。急性腎障害の程度が強い場合は、必要に応じて血液透析などの腎代替療法が行われることもあります。

aHUSの治療

主な治療法は、血漿交換や血漿輸注、抗補体薬(エクリズマブ、ラブリズマブ)の投与です。抗補体薬は、異常に活性化した補体のはたらきを抑え、血管が壊されることを防ぐ治療薬です。

二次性血栓性微小血管症の治療

原因となっている薬の中止や、背景にある病気の治療が優先されます。改善がみられない場合は、血漿交換などが検討されることもあります。造血幹細胞移植に関連した血栓性微小血管症では、多くの場合で免疫抑制薬の投与中止や減量が行われます。

最終更新日:
2026年07月29日
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2026/07/29
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