日本における高血圧は患者数が約4,300万人と推定される身近な病気です。しかし、脳卒中や心筋梗塞といった重大な合併症を引き起こすリスクがもっとも高い病気でもあります。高血圧による合併症を防ぐには血圧管理が重要になります。そのためには基準となる数値について知っておくとよいでしょう。では、どこからが高血圧となるのでしょうか。
本記事では高血圧の数値の基準や正しい測定方法について解説します。
診察室における高血圧の診断基準は、上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上となります。(140/90mmHg以上)。さらに高血圧の程度によってⅠ~Ⅲ度に分類され、140~159/90~99mmHgがⅠ度高血圧、160~179/100~109mmHgがⅡ度高血圧、180/110mmHg以上がⅢ度高血圧です。
血圧が高くなることで起こり得る合併症として、脳出血や脳梗塞、大動脈瘤、腎硬化症、心筋梗塞、心不全、眼底出血などがあり、血圧の数値が高い、または高血圧である期間が長いほど合併症の発症するリスクが高まります。
したがって合併症を防ぐためには高血圧にならないように注意するのはもちろんのこと、すでに高血圧の人は降圧目標を目指して治療(生活習慣の修正や薬物治療)することが重要になります。
血圧の測定には病院で測定する“診察室血圧”と家庭で測定する“家庭血圧”があります。これは測定する環境によって血圧に差が生じるためです。たとえば、病院での測定は家庭などのリラックスした状態で測るよりも血圧がやや高くなることが多く、中には緊張によって病院での測定のみ異常に数値が高くなる人もいます(白衣高血圧)。そのため、家庭血圧は診察室血圧よりも低い数値が基準として設定されています。また、降圧治療の評価のためにも家庭血圧を測定して主治医に報告することが大切です。
診療室血圧の場合、前述のとおり上の血圧が140mmHg以上、下の血圧が90mmHg以上の場合に高血圧と診断されます。一方家庭血圧の場合には、上の血圧が135mmHg以上、下の血圧が85mmHg以上の場合に高血圧となります。
このように血圧測定には2種類あるので健康診断表などにおける血圧の数値は診察室血圧の基準を、家庭で測定した場合には家庭血圧の基準を参考にしましょう。
家庭血圧では病院での随時測定では得られない日常生活における血圧情報を把握することができます。そのため、高血圧の診断や服薬治療の評価において非常に有用でさらに血圧の自己管理の面からも役立ちます。
また、最近の研究では脳卒中や心筋梗塞などの高血圧に伴う病気の発症を予測する方法として、診察室血圧よりも家庭血圧のほうが優れていることが分かってきました。これを受けて現在では診察室血圧と家庭血圧の数値に差がある場合、家庭血圧の数値を優先する方向で診断を行うようになっています。
正確な血圧情報を得るために日本高血圧学会のガイドラインでは次のような方法で測定することを推奨しています。
家庭用の血圧計は上腕式を使用し、カフ(圧迫帯)を上腕に巻いて心臓の高さと同じ位置に保ちながら測定します。また、歩いたりすると血圧が上がってしまうのでリラックスしているときに座った姿勢で測るようにします。
血圧の測定は原則として朝(起床後1時間以内、排尿後、食前)と夜(就寝直前)の1日2回行い、朝・夜それぞれで1~2分ほど間隔をおいて2回計測します。その2回の平均値を1機会の血圧値とするのがよいとされています。つまり、1日に計4回(朝に2回、夜に2回)測定することになります。
なお、家庭血圧の測定は長期間にわたって継続的に行うことが重要です。忘れずに測定して毎日の測定値は全て血圧手帳などに記録しておくようにしましょう。
高血圧の基準値は診察室血圧で140/90mmHg以上、家庭血圧で135/85mmHg以上です。家庭血圧は自分で測定を行う必要があります。なぜなら、正しい方法で測ることは高血圧の診断や服薬治療の評価、さらには血圧の自己管理において非常に有用であるからです。正確な血圧情報を得るために正しい方法で測定するようにしましょう。
横浜市立大学附属市民総合医療センター 腎臓・高血圧内科 部長
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