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難聴に潜む要介護、認知症のリスクー補聴器使用でリスク回避も

公開日

2025年04月23日

更新日

2025年04月23日

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2025年04月23日

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難聴が「フレイル」の引き金になるとの指摘があります。

フレイルとは、こころや身体の活力が低下して介護が必要な状態におちいりやすい、弱ってきた状態のことで、介護が必要となる手前の段階です。フレイルであることに早めに気づいて適切な対策をとれば、元の自立した状態に戻ることができると考えられています。

フレイルは身体的に脆弱(ぜいじゃく)性が増した状態というだけでなく、精神心理や社会的な側面を含む幅広い概念で、主に次の3つの要素から成り立つと言われています。

  • 身体的要素:筋力の低下、歩く速度が低下した状態など
  • 精神心理的要素:認知機能の低下や、気分的なうつ状態など
  • 社会的要素:人や社会との関わりが低下した状態、周囲からのサポートがない孤立した状態など

以上の3つの要素は相互に関係し合っており、いずれかが悪化すると要介護の状態になる危険性があります。

一方、難聴は認知症の危険因子のひとつ(「難聴によって認知症のリスクが高くなる!?」)と報告されており、地域住民を対象とした調査では、難聴があると社会的ネットワークのサイズ(つきあいのある人の人数や規模)が小さいことが明らかになっています。

また、国内7大学病院で補聴器外来を受診したシニア層を対象とした調査※では、補聴器を使用する前に「家族と話すとき、聞こえにくくてイライラしますか」や「何人かで話すとき、聞こえが悪いために取り残されている感じや疎外感を感じることがありますか」などに「はい」「ときどき」としていた回答が、補聴器導入後6カ月で軽減したという結果が得られています。また、補聴器を使うようになってから、健康・スポーツ(体操、歩こう会、ゲートボール等)や地域行事(祭りなどの地域の催しものの世話等)などの社会活動に参加する機会が増えたという結果も出ています。

このことから聞こえの力を活用して、人や社会とのつながりを保ち、会話を楽しみ、活動の範囲が小さくならないように心がけることが、フレイル予防にも有効だと考えられます。
※この研究は日本医療研究開発機構(AMED)の支援により行われました。

難聴が疑われるときにはお近くの耳鼻咽喉科にご相談ください。

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「Hear well, Enjoy life!―快聴で人生を楽しく」より引用
 

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