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耳の後ろを切らない「内視鏡手術」とは? 傷あと残らず痛みも軽減、早期復帰も

公開日

2026年02月27日

更新日

2026年02月27日

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2026年02月27日

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近年、耳の内視鏡手術に注目が集まっています。

「身体をあまり傷つけない」「痛みが少ない」ことから、これまで「手術は痛そう」と敬遠していた人も抵抗を感じず、受ける人が増えています。

耳の後ろを切らない新しい手術方法!

そもそも耳の手術には、大きく2つの種類があります。顕微鏡手術と内視鏡手術です。どちらも「聞こえをよくする」という目的は同じですが、アプローチの方法が違います。

顕微鏡手術は、耳の後ろを切開し、骨を削って行います。

内視鏡手術は、耳の穴から内視鏡を入れるため、大きく切ることはありません。

体の外側から患部を拡大して見ながら手術するのが顕微鏡、体の内側から患部を拡大して見ながら手術するのが内視鏡といったイメージです。

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のウェブサイトより転載

これまで顕微鏡手術が一般的に行われてきましたが、奥の凹みに隠れた病気が見えない場合があり、そのような場合には内視鏡が使われます。患部の位置や大きさによって、顕微鏡と内視鏡を組み合わせて行われることもあります。

耳の内視鏡手術は「経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)」と言い、耳の穴を利用した内視鏡だけで行う新しい治療法です。外耳道と呼ばれる耳の穴から直径3ミリ弱の内視鏡と器具を入れ、モニターに映し出された画像を見て手術が進められます。内視鏡手術が対象となる病気は、

  • 慢性中耳炎(中耳の炎症が続いて鼓膜に穴が開く)
  • 耳硬化症(耳の組織が硬くなる)
  • 滲出性中耳炎(中耳腔内で炎症が起こり、中耳腔炎症性の水がしみ出る)
  • 中耳真珠腫(鼓膜付近に真珠のような塊ができる)

などです。

内視鏡手術は、神経を傷つけるリスクが低いという報告も!

内視鏡手術によるメリットを、中耳真珠種を例に説明しましょう。

中耳真珠種は、鼓膜付近に炎症が起き、周辺の骨を溶かすなどして真珠のような塊ができる病気です。放っておくと、めまいや顔面神経麻痺、髄膜炎を引き起こす可能性があるため、できた真珠腫を取り除く必要があります。

鼓膜の奥は太鼓のように閉じた小さな空間となっており、これまでは患部の場所によっては顕微鏡を使っても光が届かず、難しい手術になるケースもありました。しかし、内視鏡手術では患部により近づくことができ、広く見えるようになりました。そのおかげで真珠腫周辺の死角がなくなり、取り残しによる再発も減らせるようになってきたのです。

身体の外側から骨に穴を開けないため、鼓膜のすぐ下を通っている味覚の神経を傷つけるリスクも少なくなりました。米国のドクターたちが283例の手術を分析したところ、顕微鏡より内視鏡を使った手術のほうが神経を傷つけるリスクが低かったという論文も2019年に発表されています。

手術時に全身麻酔か局所麻酔かは、病気の位置や大きさ、状態によって判断されるため、顕微鏡手術と内視鏡手術による差異はありません。

「髪をそらなくていい」「傷痕が残らない」と、内視鏡手術に前向きな声も!

内視鏡手術の優れている点は、

  • 身体の外側から骨に穴を開けない
  • 身体への負担が少なく
  • 痛みが少ない
  • 入院が数日程度で
  • 回復が早い

ことです。

実際、内視鏡による手術を受けた患者さんからは「痛くない」「髪をそらないのがうれしかった」「傷痕も残らず、術後3日目でシャワーを浴びることができた」「包帯でグルグル巻きにされず、よかった」といった声も聞かれています。顕微鏡より内視鏡を使った手術のほうが、痛みが少ないという論文も出ています。

身体に負担が少なく、安全性と有効性を備えた内視鏡手術。

高度な技術を要することから、大学病院などまだ一部の病院でしか導入されていませんが、今後は内視鏡手術ができる病院が増えることが期待されます。内視鏡手術に興味を持たれた方やこれまで手術をあきらめていた方は、まずは、お近くの耳鼻咽喉科医にご相談ください。

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「体に負担の少ない新しい治療法!「耳の内視鏡手術」って、どんな手術?」より引用

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