顔が腫れる:医師が考える原因と対処法|症状辞典
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メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】
顔の腫れは一時的にむくんでいるだけですぐに治ることもありますが、ときに思わぬ病気が隠れていることもあります。
このような場合に考えられる原因には、どのようなものがあるでしょうか。
顔が腫れているときには、顔全体が腫れている場合と、顎や頬など顔の一部分だけが腫れている場合とで考えられる病気が異なります。
顔の全体に腫れがみられるときには、甲状腺や心臓、肝臓、腎臓といった臓器の異常や、アナフィラキシーショックなどの可能性があります。
甲状腺機能低下症とは、代謝を活発にするための甲状腺ホルモンの作用が低下する病気です。特に中年以降の女性に多く、代表的なものが自己免疫疾患の一つである橋本病です。疲労感やむくみ、皮膚乾燥、体重増加、便秘、無気力、目や顔が腫れぼったくなるなどの症状が現れ、月経異常や不妊などを引き起こすこともあります。
初期の段階では体がだるい、眠気が強い、汗をかきにくくなったなど、疲れや加齢のせいと思わせる症状が多いため、注意が必要です。
甲状腺機能亢進症とは、代謝を活発にする甲状腺ホルモンが過剰に出てしまい動悸や体重減少、疲れやすさ、軟便、筋力低下、イライラなどが起こる病気で、喉仏のすぐ下にある甲状腺の腫れで気づくこともあります。甲状腺機能亢進症を引き起こす原因で代表的な自己免疫疾患のひとつであるバセドウ病の患者さんで、まぶたの腫れや赤み、目の奥の痛み、眼球が飛び出したようになるなど目に症状がでることもあります。
アナフィラキシーショックとは、体内に入ったアレルギーの原因物質を除去する反応が過剰に起こってショック状態に陥ったものです。原因物質で代表的なものは食物や医薬品、ハチに刺されるなどで、人により異なります。
症状はアレルゲンにさらされてから数分~数時間ほどで起こるといわれており、典型的な症状は口や顔全体の腫れ、蕁麻疹や紅斑、呼吸困難、めまい、腹痛、下痢、意識障害です。また、ときに生命を脅かすこともあるので注意が必要です。
心不全とは心臓のはたらきが弱った結果、十分な量の血液を送り出せなくなった状態です。体に余分な水分がたまって顔や体がむくむことがあります。
心不全には心臓発作などにより心臓のはたらきが急激に低下する急性心不全もありますが、一般的に数日から数ヶ月、数年かけて徐々に進行することがほとんどです。
代表的な症状は息切れや疲労、動悸、胸の不快感などで、最初は坂道を登ったり重い物を持ったりしたときにみられ、進行してくると軽い身体活動や安静時にも症状が現れるようになります。
肝不全によって血液中のタンパク質が少なくなったり、腎不全により水分がうまく排出できなくなったりすると、顔や体がむくむことがあります。
肝不全とは、ウイルス性肝炎や肝硬変、アルコールや薬による肝障害などが原因となって肝臓の機能が低下した状態です。皮膚の黄疸や腹水による腹部の膨れ、疲労、筋力低下、吐き気など全身に症状が現れ、数日で急速に進行する場合もあれば数年かかって徐々に進行する場合もあります。
腎不全とは腎臓のはたらきが悪くなった状態です。急激に腎機能が悪化する急性腎不全では、一般的に尿の出が悪いか全く出なくなるという症状が現れます。ゆっくりと進行する慢性腎不全では初期の自覚症状がなく、かなり進行してから夜間尿や貧血、倦怠感、目や足のむくみなどが現れることが多いです。
顎や耳の下、頬など顔の一部や片側だけが腫れているときには、その部分に生じた炎症や腫瘍などが原因となっている可能性があります。
蜂窩織炎は傷ややけど、皮膚の病気などで皮膚にできた小さな開口部からレンサ球菌やブドウ球菌などの細菌が侵入して感染する、皮膚感染症の一つです。全身に起こりますが舌下部や顎下部、頬部などにも起こりやすく、感染部の皮膚が赤く熱と痛みをもって腫れた状態となり、38℃以上の高熱や悪寒、頻脈、頭痛、低血圧といった全身症状が現れることもあります。
蜂窩織炎は患部の境目がはっきりしませんが、蜂窩織炎の一種の丹毒は患部と正常な皮膚の境界がはっきりしており、光沢のある隆起した赤斑ができ、触ると硬く感じられます。
虫歯とは、虫歯菌が食事中の糖類を利用し作った酸によって歯が溶かされてしまうことです。初期には自覚症状はありませんが、進行して歯の内側や神経まで到達すると咀嚼時の痛みがでたり、冷たいものや熱いもの、甘いものがしみたりするようになり、段々と日常的な強い痛みになってきます。
虫歯が進行すると細菌に感染して、歯の周辺に炎症を起こして膿がたまり、顎や頬などが腫れて発熱や痛みを生じることがあります。
耳の前にある耳下腺にウイルスや細菌が感染して耳下腺炎を起こすと下顎の後縁(エラ)付近が腫れて痛みや発熱を伴うことがあります。有名なのは、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)です。また、耳下腺の腫瘍でも腫れることがあり、片側性でゆっくりと大きくなります。
血管性浮腫とは、何らかの原因で皮膚が腫れることをいいます。蕁麻疹にも似ていますが、蕁麻疹が赤みやかゆみを伴い数時間で消失してしまうのに対し、血管性浮腫は赤みやかゆみがないことが一般的で、腫れが治まるまでに1~3日程度かかったり、しばしば症状を繰り返したりすることなどが特徴です。また、血管性浮腫と蕁麻疹が併発することもあります。
血管性浮腫には、治療薬の服用による薬剤性血管性浮腫やアレルギーによるアレルギー性血管性浮腫、寒さや日光など物理的な刺激による血管性浮腫などさまざまな種類があります。
さらに、頻度は低いものの先天性の遺伝子変異が原因で起こる遺伝性血管性浮腫(HAE)や自己抗体などが生じることによって起こる後天性血管性浮腫(AAE)などもあります。
顔の腫れとともに皮膚症状や呼吸器症状、意識障害などがありアナフィラキシーショックが疑われる場合、早急に救急外来などの医療機関を受診する必要があります。
顔の腫れがなかなか治らないなど、他の症状も気になるときには原因を調べる必要があるため、早めの受診を考えましょう。かかりつけの内科や、心臓の病気なら循環器科、腎臓なら泌尿器科、肝臓なら消化器科、甲状腺なら内分泌科、顎や口の中などの病気なら口腔外科など各専門の診療科を受診するとよいでしょう。
また、そこまで強い症状ではない場合であっても、腫れが続く、腫れを繰り返す、様子を見ていてもよくならないなどの場合には、血管性浮腫などの思わぬ病気が隠れている可能性があるため、一度最寄りの医療機関を受診しましょう。
医師にはいつから腫れているのか、腫れの広がりや縮小、痛み、他の気になる症状など詳しく伝えましょう。
日常生活におけるアルコールや塩分などの摂りすぎや、血行不良などが原因となって顔が腫れている可能性もあります。
アルコールを摂りすぎると利尿が増えて脱水になり、皮膚の下に溜まった水分を排出するはたらきが弱くなるため、むくみが生じます。
飲酒量や飲酒日数の具体的な目標を立てて飲み過ぎないようにしましょう。多量飲酒者やアルコール依存症などでは、場合によっては医師や専門家の力を借りながら飲酒量を減らす必要があります。
塩分を摂りすぎると体内の水分量も増えるので、血圧が上がったりむくみを生じたりします。
食塩の摂取量は1日6g未満が推奨されています。塩分の多い外食や加工食品は控え、香辛料や香味野菜、酸味を利用しながら低塩の調味料を使っていきましょう。
睡眠不足や疲労などによって血流が悪くなると、余分な水分や老廃物がたまって顔がむくむことがあります。
まずは睡眠時間をしっかりと確保して疲労を取りましょう。最低でも6~7時間の睡眠は必要といわれています。熱すぎない蒸しタオルなどで温めることや、温めるのと冷やすのを交互に繰り返すことも血行をよくするのに効果があると考えられています。
顔の腫れには何らかの病気が隠れていることもあります。なかなかよくならない場合は病院を受診しましょう。