インタビュー

クローン病・潰瘍性大腸炎の治療法と原因遺伝子について

クローン病・潰瘍性大腸炎の治療法と原因遺伝子について
金澤 義丈 先生

東北大学消化器内科 非常勤講師

金澤 義丈 先生

この記事の最終更新は2018年02月26日です。

クローン病潰瘍性大腸炎に関しては、現在さまざまな治療法が研究されています。また、オートファジーに関連する遺伝子の変異が、クローン病の北米の人種の患者さんの発症にかかわっているということが解明され始めました。また、最近、日本人の患者さんの場合は、パネート細胞という腸管の細胞の一種と疾患の関係がわかっています。

今回は、2018年現在研究中のクローン病と潰瘍性大腸炎の治療法や、オートファジー関連遺伝子との関係について、記事1『クローン病と潰瘍性大腸炎とは それぞれの症状や原因』に引き続き、東北大学消化器内科非常勤講師の金澤義丈先生にお話しをうかがいました。

クローン病潰瘍性大腸炎の治療法は、2018年2月現在、さまざまな研究がされています。そのなかに青黛(せいたい)と糞便移植があります。

青黛とは、漢方薬の一種です。青黛は、潰瘍性大腸炎に有効であるといわれています。1日に2g(1回1gを2回)の青黛を8週間内服するという投与試験を20人に行った結果、約60%の患者さんに効果が現れました。しかし、試験中患者さんのなかには、肺動脈性肺高血圧症を発症したケースもあるということや、十分な人数では検証されていないことから、今後は今以上に、有効性や安全性の検証が必要です。

糞便移植とは、健康な方(糞便ドナー)から提供された糞便を、患者さんの体内に移植するという治療法です。移植の方法は、内視鏡を使用して大腸内に散布する、浣腸により大腸内に注入する、糞便をカプセルに入れて内服するといったさまざまなものがあります。

世界各地で糞便移植の効果が研究されています。しかし、2018年現在、確実な有効性は確認されていません。糞便移植の問題点としては、感染症などの安全性、品質管理(常に同じ品質を保つことができない)といったものが挙げられます。

?を浮かべている人

オートファジー(自食作用)とは、細胞内タンパク質などの分解機構の一つです。主に、細胞内の不要になったタンパク質の分解やダメージを受けた細胞内小器官の分解やリサイクル、細胞内に侵入した病原体の排除などを行っています。

記事1『クローン病と潰瘍性大腸炎とは それぞれの症状や原因』でご説明したように、クローン病潰瘍性大腸炎を発症する原因には、一卵性双生児と二卵性双生児の疾患の一致率を研究したものから、遺伝要因と後天性の環境要因どちらも関係しているということがわかっています。

つまり、ある遺伝子の変異があるからといって、必ずこの疾患を発症するわけではありません。遺伝子の異常を持っている方は、クローン病と潰瘍性大腸炎に対する感受性が高くなり、そこに環境要因が加わると、一般の方々よりも発症する確率が高くなるということです。

環境要因としては、食事の内容や生活習慣、ストレス、たばこなどが原因として考えられます。そして、遺伝要因としては、2008年に個人の遺伝子のなかで代表的なものを選出し、疾患を発症している方と疾患ではない方とで、それらの遺伝子を比較していくという研究が行われました。その結果、クローン病の患者さんでは、オートファジーに関連する遺伝子(NOD2やATG16L1など)に変異があるということがわかったのです。

しかし、このNOD2やAGT16L1といったオートファジー関連の遺伝子の変異が影響しているという研究結果がでたのは、北米の患者さんを対象としたものです。日本人のクローン病・潰瘍性大腸炎の患者さんでは、オートファジーに関連する遺伝子の異常ははっきりとはみられていません。つまり、クローン病と潰瘍性大腸炎の発症する可能性を高める遺伝子の変異は、人種により異なっているということです。

近年、日本人には別のオートファジーに関連する遺伝子に異変があるのではないかと考え、研究が始められています。そこで発見したものが、日本人のクローン病の患者さんとパネート細胞との関係です。

パネート細胞とは、小腸の腺管内にあり、小腸内腔へディフェンシンなどの抗菌ペプチドの分泌*を行っています。

抗菌ペプチド…ペプチドとは、アミノ酸が結合してできたもの。そして、菌に抵抗するペプチドが抗菌ペプチド。

腺管のなかにあるヒトのパネート細胞
腺管のなかにあるヒトのパネート細胞   提供:金澤先生

北米の研究では、パネート細胞に異常のあるクローン病の患者さんは、異常のない患者さんと比較すると、クローン病にともなう手術をしてから、再発するまでの期間が短いという結果がでていました。そして、パネート細胞に異常のある患者さんは、オートファジーに関連する遺伝子の変異があったのです。

上記の北米での結果をもとに、日本人ではどのようになっているのかということを研究されました。その結果、北米と同様に、パネート細胞に異常のある患者さんは、クローン病にともなう手術から再発までの期間が短いということがわかりました。しかし、北米では、変異のあったとされるオートファジーに関連する遺伝子の変異は、日本人にはみられませんでした。

金澤義丈先生

日本人とオートファジーに関連する遺伝子のはっきりとした関係はまだ証明されていません。しかし、日本人でも、関係していることが予想される候補の遺伝子が徐々に解明されつつありますので、これからの研究に期待してください。

そして、クローン病潰瘍性大腸炎の治療薬は、毎年新しいものが開発されています。新たな薬品の治験も多く行われていますので、参加することも可能です。是非、専門の医師に相談してみてください。

 

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