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「オミクロン株ワクチン」~BA.1、BA.5のどちらを受けたらいいか

公開日

2022年10月21日

更新日

2022年10月21日

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2022年10月21日

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東京医科大学病院 渡航者医療センター 客員教授

濱田 篤郎 先生

この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2022年10月21日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

今年冬に流行が予測されている新型コロナウイルス感染症の第8波に備えるため、ワクチンの追加接種が始まっています。これは初回接種(2回目までの接種)を終了した国民全員を対象としていますが、このワクチンにBA.1と、BA.5の2種類が使用されています。このため、「どちらのワクチンを受けたらよいのか?」という質問が数多く聞かれます。今回は2つのオミクロン株ワクチンの特徴と、その選び方について解説します。

第8波に備えるための追加接種

2022年10月になり日本国内では第7波の流行が収束しつつありますが、ヨーロッパでは感染者数の増加傾向がみられています。これは、今年6月から世界的に流行しているオミクロン株BA.5型の残り火が拡大したもので、呼吸器感染ウイルスの特徴である寒い季節の流行再燃といえます。日本でも第7波の流行はBA.5型によるもので、その残り火が冬の到来とともに、第8波の流行として拡大していくことが予測されています。

この第8波流行による健康被害をできるだけ抑えるため、9月中旬からオミクロン株ワクチンによる追加接種が国内で始まりました。この時期に追加接種を行う理由は、今まで使用してきたワクチンが、流行当初に中国・武漢で流行していたウイルス株(従来株)を用いたワクチンであり、現在流行しているオミクロン株への効果が低下しているためです。

2つのオミクロン株ワクチン

オミクロン株ワクチンは別名「二価ワクチン」とも呼ばれています。なぜ二価かと言うと、従来株とオミクロン株の2つのウイルス株を用いて製造されており、オミクロン株を含む新型コロナウイルスに幅広く予防効果を発揮します。このワクチンを、ファイザー社とモデルナ社がmRNAワクチンとして製造しました。なお、このオミクロン株ワクチンは、今回、追加接種のみに使用していますが、将来的には初回接種にも使用されることになるでしょう。

ここで問題になってくるのが、ワクチン製造に用いたオミクロン株の種類です。ファイザー社とモデルナ社がこのワクチンの開発を始めたのは、2022年1月のことで、当時主流だったオミクロン株のBA.1型を用いてワクチンを製造しました。このワクチンの承認申請を両社とも6月末に米国食品医薬品局(FDA)に提出しましたが、その時点で世界的に流行していたのはオミクロン株のBA.5型でした。このため、当局はBA.5型を用いたワクチンを製造するように指示し、両社とも再開発に入ります。その結果、両社はBA.5型(BA.4型も含む)を用いたワクチンを完成させ、9月1日に米国で承認されました。

このようにオミクロン株ワクチンとしては、BA.1型とBA.5型を用いた2つの種類が開発されたのです。

各国のオミクロン株ワクチンへの対応

BA.5ワクチンを最初に承認した米国は、このワクチンを唯一のオミクロン株ワクチンとして採用し、国民全員への追加接種を開始しました。一方、英国ではBA.1ワクチンのみを承認し、高齢者などのハイリスク者に限定した追加接種を行っています。今後、BA.5ワクチンを承認し、国民全員に接種を拡大する可能性もあります。

そして、日本では9月中旬にファイザー社とモデルナ社のBA.1ワクチンを承認し、国民全員への接種を開始しました。その後、10月7日にはファイザー社のBA.5ワクチンを承認しており、モデルナ社のBA.5ワクチンも間もなく承認される見込みです。

つまり、日本では10月中旬の時点で、2つのオミクロン株ワクチンが同時に流通し、国民全員を対象に接種が行われています。これは手厚い対応とも言えますが、国民の側からすれば、どちらを選んだらよいのか分からない状況になっているのです。

2つのワクチンの効果と安全性

BA.1とBA.5のオミクロン株ワクチンを比較して、安全性に関しては両者に違いはありません。ワクチンに用いたウイルス株は違いますが、それ以外の成分は全て同じなので、安全性からはどちらを選んでもいいでしょう。

ではワクチンの効果はどうなのでしょうか。BA.1ワクチンについては、ヒトに接種して中和抗体の変化を見たデータが、ファイザー社、モデルナ社ともあり、BA.1型ウイルスに対する抗体は従来株ワクチンに比べて1.5~2倍近くまで増加しています。しかし、現在流行しているBA.5型ウイルスに対する抗体については、明確なデータがありません。

一方、BA.5ワクチンに関しては、ファイザー社がマウスに接種したデータしか発表していません。これによれば、BA.1型とBA.5型いずれのウイルスに対する中和抗体にも増加がみられます。

ワクチンの効果にはこうしたデータがあるのみで、BA.1ワクチンとBA.5ワクチンを直接比較したデータがないため、現時点で効果の優劣は分かりません。しかし、免疫学の一般論から考えると、BA.5ワクチンを用いたほうが、現在流行しているBA.5型のウイルスには効果が高いように思います。

厚労省の説明と対応

厚生労働省も国民が混乱しないようにと、2つのワクチンに関する説明文書を発表しています。

この文書には、第8波の流行前に「いずれのオミクロン株ワクチンでもよいから接種してほしい」と書かれています。オミクロン株は従来株から大きく変化していますが、それに比べると、同じオミクロン株の中のBA.1型とBA.5型の変化は小さいものであり、どちらのワクチンでも効果に大きな差はないという見解です。

また、厚労省の自治体向け文書では、BA.5ワクチンを選ぶ人が増えることを憂慮してか、接種会場ではオミクロン株ワクチンとだけ明記し、BA.1かBA.5の明記は不要と記載しています。この点は各自治体の判断になりますが、東京都の大規模接種会場の案内(10月21日時点)を見ると、各会場で使用するワクチンがBA.1かBA.5かまで詳しく記載されています。

接種できるワクチンを早めに受けておく

私の個人的な見解としては、BA.5ワクチンが受けられるなら、そちらを受けるほうが現在流行中のBA.5型ウイルスへの効果は高いと考えます。しかし、BA.1ワクチンであっても、それに近い効果が得られるはずです。また、いずれのオミクロン株ワクチンでも、感染予防効果は短期間で減衰しますが、重症化予防効果は長期にわたり持続すると考えられています。

結局のところ、BA.5ワクチンが接種できるまで待つということは避け、早めにいずれかのオミクロン株ワクチンの追加接種を受けておくことが、大切ではないかと思います。

なお、前回の本コラム「追加接種に『オミクロン株ワクチン』を待つべきか」(8月17日公開)では、第7波が流行する中、従来株ワクチンでもよいから追加接種を受けておくことを推奨しました。こうした従来株ワクチンで追加接種を受けた人も、その接種日から3カ月が経過すればオミクロン株ワクチンの追加接種を受けることができます。
 

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東京医科大学病院 渡航者医療センター 客員教授

濱田 篤郎 先生

1981年に東京慈恵会医科大学卒業後、米国Case Western Reserve大学に留学し熱帯感染症、渡航医学を修得する。帰国後に東京慈恵会医科大学・熱帯医学教室講師を経て、2004年より海外勤務健康管理センターのセンター長。新型インフルエンザやデング熱などの感染症対策事業を運営してきた。2010年7月より現職に着任し、海外勤務者や海外旅行者の診療にあたっている。