横浜市緑区にある横浜新緑総合病院は、地域の救急医療を担い、さまざまな内科や外科の病気に対応している病院です。今年度、中堅若手を中心に10名の医師を迎え、総勢41名で地域医療に邁進しています。
脳神経外科や整形外科などに対して強みのある診療を行う同院の地域での役割や今後について、院長の松前 光紀先生にお話を伺いました。
1991年、横浜市緑区に“横浜緑病院”として開院した当院は、2000年に“横浜新緑総合病院”に名称を変更し現在に至ります。最寄り駅のJR横浜線十日市場駅からは当院まで直通のバスを運行しているほか、国道246号、東名高速、首都高速横浜北西線が近くを通り車でのアクセスも良好なため、多くの患者さんに来ていただいています。
現在当院は“横浜市二次救急拠点病院B”( 24時間365⽇、内科・外科で⼊院治療や⼿術が必要な中等症以下の救急患者の受け入れ体制を確保している病院)に指定されており、主に救急車で搬送されて入院が必要な外傷や病気を対象に救急医療を提供するほか、地域の救急医療を担っています。高齢化に伴って誤嚥性肺炎や大腿骨頸部骨折、脊椎椎体圧迫骨折、脳卒中などを中心に救急受け入れが多く、救急搬送数は年間約3,000件に上ります(2023年現在)。
当院は11の診療科と2つのセンターを持ち、さまざまな内科、外科の病気に対応可能です。またIBD(炎症性腸疾患)外来、そけいヘルニアセンターを設けるなど、この地域では当院に強みのある診療も行っています。
当院の重要な役割として、求められる標準医療(ガイドラインに掲載されている治療)を迅速に提供することが挙げられます。整形外科では患者さんの苦痛ができるだけ早期に緩和し、回復することを目標に、一般外傷をはじめ膝関節、股関節、肩関節の疾患に関する治療を行います。人工関節を用いた手術はもちろんのこと内視鏡治療にも対応します。また脊椎外科については、減圧術や固定術も行います。救急診療については、整形外科専門医が救急搬入された患者さんの初期診療を行い、救急受け入れ態勢を強化するため毎日整形外科の当直医を配置しています。
当院は2011年に開設した脳神経センターで24時間365日、急ぎの対応が必要な脳卒中の患者を受け入れ、t-PA静注療法(血栓を強力に溶かす注射薬)や血管内治療による血栓回収を行っています。また、救急隊と当院医師が携帯電話で直接話ができる“脳卒中ホットライン”が設けられており、一刻を争う患者さんを素早く当院へ搬送できる体制を地域ぐるみで整えています。整形外科と同じく、脳神経外科専門医が毎日当直しファーストタッチを行い、血栓回収については脳血管内治療専門医が迅速に対応します。
また、脳出血に対する内視鏡治療も行うほか、急性期脳動脈瘤や未破裂脳動脈瘤などに対して、開頭術や血管内治療も行っています。さらに近年は難治性三叉神経痛ならびに片側顔面けいれんや、良性脳腫瘍などに対しても頭蓋底外科の知見を活かした治療が可能となりました。今後も当院は地域の脳の病気に対するセンターとして、スタッフ一同力を合わせて治療に取り組んでまいります。
脳神経センターと同じく2011年に開設した消化器センターでは、消化器内科医と消化器外科医が協力して各種スタッフとチームを組み、消化器疾患全般に対してより専門性の高い診断や治療を心掛けています。例えば、早期の胃がんや大腸がんに対しては、高い技術が要求されるESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)やEMR(内視鏡的粘膜切除術)といった内視鏡的切除、腹腔鏡下の胃部分切除や胃全摘術、開腹の定型手術などガイドラインに準拠した手術を実施しています。
手術にあたっては、日本内視鏡外科学会技術認定医が結腸がん・直腸がんとも進行がんも含め積極的に腹腔鏡下手術を実施しています。
IBDは腸の粘膜に炎症を生じる原因不明の病気で、主にクローン病や潰瘍性大腸炎を指し、どちらも国の指定難病になっています。患者さんの数は年々増加しており、とくに潰瘍性大腸炎は難病の中でも患者さんが非常に多いことが特徴です。当院ではIBD(炎症性腸疾患)外来にて、この2つ病気に対して厚生労働省難治性腸疾患研究班が毎年更新している潰瘍性大腸炎・クローン病治療指針に沿った治療診療を行っています。
当院では、鼠径ヘルニアの診断から治療に特化したそけいヘルニアセンターを2023年に開設しました。当院には指導医レベルで手術できると認められた技術認定医(外科医)が2名在籍してますが、2名以上の技術認定医が在籍する病院は、横浜の医療圏全体で見ても珍しいのではないでしょうか。
治療にあたっては日帰りや1泊2日の手術にも対応しており、鼠径ヘルニアの手術を年間150件以上行っています。複数の診療科を持つ総合病院であることから、鼠径ヘルニアの患者さんで複数の病気を抱えていらっしゃる方にも他の診療科と連携して対応可能である点も、当院での鼠径ヘルニア治療のメリットと言えるでしょう。
1998年に開設された人間ドック・健診センターでは、通常の健診はもちろんのこと、新しい機器による先進的な健診を提供しています。
MRIを使った乳腺ドック(無痛MRI乳がんドック)では、従来のマンモグラフィーとは異なり乳房を挟まないため痛みがないうえ、Tシャツを着たまま検査を受けられます。またこの検査は放射線被ばくがなく、マンモグラフィーより検査精度が高いとされているなど、メッリットが多い検査となっています。
見つけにくく予後が悪い膵臓がんについては、感度が高い検査とされているMRCP(胆道と膵臓に特化したMRI)による膵臓ドックを提供しています。この検査も被ばくがないうえ、従来の検査に比べ高い発見率が期待できるとされているので、関心のある方はぜひ受診いただければと考えています。
当院は周辺の大病院に比べると少ない病床数ながらも、濃厚な治療を行い、患者さんに早期治療、早期復帰をしていただくことにスタッフ一同、全力を尽くしてきました。当院は横浜市北西部に位置し、周辺の大和市、相模原市、東京都町田市からも患者さんが来院されます。回復期の機能も併設した急性期医療を展開する病院として、「標準医療を迅速に提供する」ことを目標にしております。今後も当院の理念である「確かな医療技術」「やさしい対応」「地域への貢献」を実践し、患者さんやご家族に満足していただけるように努めてまいります。