「卵巣がんは、組織型が多数あるため診断が難しく時間がかかる」と国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科科長 加藤友康先生はおっしゃいます。本記事では、どのような検査が行われているのか、国立がん研究センター中央病院で進んでいるIVRを用いた生検についてお話しいただきました。
記事1「卵巣がんの原因-確立されているリスクと可能性のあるリスクとは」で述べたとおり、卵巣がんの組織型は多岐にわたるため、診断が非常に難しく時間がかかります。卵巣がんの一部だけを切除したものをすぐ凍らせて作成した標本(迅速病理標本)では、正しく診断されないケースがあります。一晩でもホルマリン溶液に浸け、標本(切片)を多数つくって初めて診断が確定します。
術前の血液検査や画像検査では確定診断が行えないため、手術で卵巣を摘出してから病理検査を行い確定診断となります。手術時に明らかに転移があり悪性と判断される場合は、手術が一度で済むようにその場で追加手術を行います。しかし判断が難しい場合は、肥大している卵巣のみ摘出し確定診断ののちに悪性の場合は後日追加手術を行います。
いずれにせよ、卵巣がんは術前に確定診断が難しいため、患者さんと相談してから手術に臨むことが非常に重要となります。両側の卵巣や卵管、子宮を摘出してしまうと妊娠ができなくなりますので、患者さんの妊娠の希望や術前診断での悪性の可能性、がんの広がり、追加手術の場合の体への負担などをお話しして手術の方法を決定します。
卵巣や子宮の状態を腟(ちつ)から指を入れて調べます。また直腸やその周囲に異常がないかをお尻から指を入れて調べる場合もあります。
卵巣腫瘍の状態(性状)を見たり、腫瘍と周囲の臓器との位置関係や別の臓器やリンパ節への転移の有無を調べます。
卵巣がんではCA125と呼ばれる腫瘍マーカー(がんがつくり出す特殊な物質で、血液中で測定できるもの)が代表的です。転移のある卵巣がんでは多くの場合CA125が陽性もしくは非常に高い値になります。一方、卵巣がんであっても腫瘍マーカーに異常が認められない場合もありますので、補助的な意味で用いられます。
治療前に病変の広がりや別の臓器への転移の有無を調べるために行う検査です。CT 検査は X線を、MRI 検査は磁気を使って体の内部を描き出します。
卵巣がんの確定診断には、組織を採取する生検が必要になります。腹膜に転移した組織を採取するには腹腔鏡を用いた方法が非常に有用であり、近年広まりつつあります。しかし当病院では、IVRというレントゲンなどの画像診断装置で体のなかを透かして見ながら、小さな穴から体内に挿入した器具を用いる方法で生検を行います。国立がん研究センターの理事長特補佐である荒井保明先生はIVR治療の普及に尽力しており、さまざまな診療科と連携が進んでいます。
(※関連記事:国立がん研究センター 理事長特補佐 荒井保明先生記事「IVRとは何か-がん領域におけるIVR(画像下治療)の有用性」
国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科 医師
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