日本人の40歳以上の2人に1人が高血圧であるといわれています。まさに日本の「国民病」ともいえる高血圧ですが、高血圧になるとどのような症状・合併症が出るのでしょうか? また、高血圧の診断はどのように行なうのでしょうか? 日本赤十字医療センターの上條由佳先生にお聞きしました。
高血圧には、特有の症状がほとんどありません。そのため、定期的に血圧を測定していなければ発見することは困難です。また、早期に発見されたとしても放置されることが多く、気づかないうちに進行して、脳卒中や心臓病などの合併症を引き起こす(合併症については後にご説明します)ので、高血圧は「サイレント・キラー」とも呼ばれています。
高血圧には特有の症状はありませんが、進行したまま放置しておくと様々な合併症を引き起こします。脳出血は有名ですが、それ以外の合併症として以下のとおりです。
血管が刺激されることにより動脈硬化が起こります。そしてこの動脈硬化により、脳梗塞や脳出血などの脳卒中・狭心症や心筋梗塞などが起こります。
血液を全身に送り出すため、心臓は強力な筋肉で出来ています。血圧が高いとそれだけ全身に送り出す力が必要なため、心臓は筋トレをしているようなものです。長い間高血圧が続いている患者さんでは、筋肉モリモリの心臓となり、しなやかさが失われます。このような状態を「心肥大」といい、心不全の原因の一つです。
腎臓は尿を作り、体内の水分量の調整、老廃物の除去、塩分・カリウムの調節などの働きをしていますが、腎臓は細かい血管の塊であるため、血圧が高い状態が長い間続くと腎臓に負担がかかります。高血圧の方は、腎臓の機能が低下して慢性腎臓病、さらには末期腎障害になりやすくなります。長期間収縮期血圧が10mmHg上がるごとに、将来末期腎障害になるリスクが30%前後上昇するといわれています。
また、降圧剤のみで血圧を管理しても減塩を行わないと腎臓への負担が続くことになります。まずは減塩を中心した生活習慣への修正を行いましょう。
参考記事:慢性腎臓病とは
高血圧で怖いのは、これらの合併症です。ふだん自覚症状がなかったとしても、突然これらの合併症が起こることがあるので注意が必要です。
では高血圧はどのように検査・診断するのでしょうか?
実は血圧の測定方法には、診察室で測定する「診察室血圧」と、診察室以外の場所で測定する「診察室外血圧」の2種類があります。
まずは、診察室血圧についてご説明します。診察室血圧とは診察室で測定される血圧のことで、以下のように測定を行います。
また、高血圧の診断は、少なくとも2回以上の異なる機会における測定値に基づいて行われます。
この診察室血圧が収縮期血圧140mmHg・拡張期血圧90mmHg以上であった場合、高血圧と診断されます。
次に、診察室外血圧についてご説明します。診察室外血圧とは、診察室以外の場所で測定される血圧のことで、“家庭血圧”と“自由行動下血圧”があります。この診察外血圧は、診察室血圧と同等かそれ以上に大事であるとされています。
家庭血圧とは家で測定される血圧のことで、以下のように測定します。
また、診察室血圧と家庭血圧に診断の差がある場合は、家庭血圧による診断を優先します。例えば、「診察室血圧では高血圧の基準を満たさないが、家庭血圧では高血圧の基準を満たす」といった場合には、家庭血圧による診断が優先されますので、高血圧と診断されます。(家庭血圧の診断基準については後ほどご説明します。)
24時間自由行動下血圧の測定では、図のような持ち運びができる自動血圧計を身につけて、24時間普通の生活を行いながら、15~30分間隔で血圧を測定します。
家庭血圧の診断基準は以下の表のようになっています。
家庭血圧では、収縮期血圧135mmHg・拡張期血圧85mmHg以上で高血圧と診断されます。自由行動下血圧は、図のように時間帯によって診断基準が異なります。
医療法人社団善仁会 中田駅前泉クリニック 院長、医療法人社団ときわ 理事、横浜市立大学腎臓高血圧内科 客員研究員
日本内科学会 総合内科専門医・内科指導医日本透析医学会 透析専門医・透析指導医日本腎臓学会 腎臓専門医・腎臓指導医日本高血圧学会 会員
全人的総合的腎不全医療(Total Renal Care:TRC)を推進・普及させるためにアウトリーチ活動を行っている。一人ひとりの腎不全患者が自己管理や行動変容を実現するための教育というミクロなアプローチから、腎不全患者自身がさまざまな治療の選択肢を持てるようにするための社会システム全体の構築というマクロなアプローチも積極的に行っている。
上條 由佳 先生の所属医療機関
石橋 由孝 先生の所属医療機関
関連の医療相談が10件あります
心臓の辺りに攣ったような痛み
ここ最近、3日に一度くらいの間隔で心臓の辺りが攣ったような締め付けられる痛みが出ます。 痛みは15秒くらいで収まるのですが、心筋梗塞などの疑いはありますか? ちなみに高血圧の薬を飲んでいます。 軽い脂肪肝と言われたことがあります。
奥歯の痛みについて
85歳になる祖母が今日の夕方頃から突然奥歯が痛み始め、噛んだら痛むので何も食べれないと言ってきました。調べたら放散痛というものがあると知り、放散痛の症状の1つに歯の痛みがあり、祖母は心臓の持病も抱えているのでとても心配になりました。祖母が定期受診している歯医者の予約は明後日で、もし痛みが続く場合や歯医者での診断で特に問題がなかった場合は放散痛の可能性を考慮して専門医に検査をしてもらった方がいいでしょうか?ちなみに祖母の心臓病は詳しい病名は分かりませんが、高血圧や不整脈に近いです。祖母は現在歯の痛み以外には肩こりがするみたいでそれ以外は特に身体の不調はありません。奥歯の痛みは何も噛まなければ特にずっと痛みが続く訳ではなさそうです。心配し過ぎかもしれませんが、わたしにも精神的な障害があり、祖母とはずっと一緒に住んでいるので、どうしてもネットで調べた情報で考え過ぎてしまうので医師の意見が聞きたいです。
健康診断で血圧が
昨日健康診断を受けて、血圧をはかったら上が150で下が88でした。昨年は上が110で下が85ぐらいだったのにいきなり上がり出して怖いです。何か病気のサインでしょうか?自分では疲れやすいぐらいで前とあまり変わらないと思うのですが?病院に行った方が良いですか?ちなみに143cm体重79キロです。体重落とさないと駄目ですよね?塩辛いおつまみやお酒、スナック菓子大好きです。これはやめないとまずいですね。
動悸、息苦しさ
心臓の動悸と息苦しさが気になっています。朝起床時、日中、問わず症状が表れ、時折ドクンと鼓動を感じることがあります。循環器内科で心電図をとってもらいましたが異常は見当たらず、現在特に治療は行なっていません。喉に違和感があり、話す時声が震えているような感覚があります。いつからか忘れてしまうくらい前から症状がありこのまま放置しても問題ないものか気にかかっています。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「高血圧症」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。