インタビュー

関節軟骨損傷および変形性膝関節症の治療。膝関節損傷の治療(2)

関節軟骨損傷および変形性膝関節症の治療。膝関節損傷の治療(2)
望月 義人 先生

浅草病院 整形外科 人工関節センター長

望月 義人 先生

この記事の最終更新は2015年11月02日です。

膝の関節はスポーツによる故障が非常に多い部分ですが、それ以外にも変形性膝関節症などで悩んでいる方が多数おられます。今回は膝関節損傷の治療・その2として、武蔵野赤十字病院整形外科の望月義人先生に関節軟骨の再生医療や変形性膝関節症のお話をうかがいました。

軟骨は一度損傷すると自己修復が困難なため、関節鏡による手術を行うこともあります。しかし手術をしても良くならない場合も少なくありません。変形性膝関節症のある方は手術による治療が難しく、スポーツによる外傷の場合には手術適応になるケースが比較的多いといえます。

体重がかからない部分での軟骨の欠損で症状が軽い場合は、手術はせずに安静にして、クーリング(冷却)や消炎鎮痛剤・外用薬による保存的治療を行います。

手術による軟骨損傷の治療には次のような方法があります。

  • 軟骨片除去(関節ネズミ除去術)

軟骨のかけら(遊離体)を除去すること。かけらが関節に挟まったときに痛みを生じる場合には取り除くべきですが、状態が安定していて特に痛みが起きないのであれば手術をする必要はありません。

  • マイクロフラクチャー法およびドリリング法

損傷部分(欠損部分)に専用の針やドリルで穴を開け、骨髄から出血させて線維軟骨による再生を促します。損傷があまり大きくない場合に限られ、欠損が大きい場合や軟骨下骨(軟骨の下にある骨)に損傷が及んでいる場合には手術適応になりません。

  • 自家骨軟骨移植術(モザイクプラスティ法)

関節内にある正常な骨軟骨を採取し、欠損部へ移植するものです。マイクロフラクチャー法やドリリング法に比べるとより大きな損傷にも対応できますが、損傷が4cm2(平方センチメートル)未満の場合が適応になります。

  • 自家培養軟骨移植術

採取した軟骨細胞を組織培養して軟骨組織を作成、欠損部へ移植するものです。広島大学の越智光夫教授らが開発したものが商品化され、2013年(平成25年)4月から保険適応となっています。

スポーツなどによる外傷性軟骨欠損症や離断性軟骨炎を対象としており、変形性膝関節症は適応外です。モザイクプラスティで対応できない欠損部分4cm2(平方センチメートル)以上の場合に手術適応となります。体重をかけられない期間が長くなるため、長期のリハビリが必要です。一定の基準を満たしている施設で登録医だけが実施できます。現在のところ認定施設は全国に約170カ所あります。

自家培養軟骨 使用認定施設一覧

軽度の場合には、下記のような保存的治療を行います。

  • ヒアルロン酸注射
  • 大腿四頭筋強化のリハビリテーション
  • 温熱療法
  • 足底板(そくていばん)による角度の矯正

手術療法には以下の方法があります。

  • 関節鏡手術

関節に挟まりこんでいる滑膜などを除去することにより、一時的な症状の緩和を目指すものです。この手術により完治するものではなく、痛みも完全になくなるわけではありません。

  • 高位脛骨骨切り術

骨を切って変形を矯正する手術です。最近では手術に使用する機器の性能が向上したことによって入院期間も2週間程度で済み、体重をかけられない期間も短くなっています。前項で述べた自家培養軟骨移植術と組み合わせることによって、この治療法が今後大きく発展する可能性を持っています。

  • 人工膝関節置換術

膝の関節全部を取り替える「人工膝関節全置換術(TKA)」と、「人工膝関節部分置換術(または単顆置換術:UKA)」に分けられます。後者のUKAの方が明らかに膝の曲がり具合がよく、リハビリの負担も少ない術式です。また患者さんの感覚として、自分の身体の一部としてなじみがよいと感じられるようです。

一方、人工関節の耐用年数はTKAに比べて短くなる可能性があります。また、前十字靭帯などの靭帯が保たれていている必要があり、膝関節の内側または外側のいずれか片側のみに偏った障害の場合にしか行えないという制限があります。患者さんと十分に話し合い、患部の状態や希望に応じて使い分けることが望ましいのですが、UKAは技術的にも難易度が高いため、実施している施設が少ないという状況があります。

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