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インタビュー

三叉神経運動根などのモニタリング -術中モニタリング2

三叉神経運動根などのモニタリング -術中モニタリング2
河野 道宏 先生

東京医科大学病院  脳卒中センター長、東京医科大学 脳神経外科学分野 主任教授

河野 道宏 先生

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この記事の最終更新は2015年12月18日です。

耳の奥にある内耳道(ないじどう)から発生する聴神経腫瘍の手術では、「術中神経モニタリング」を行い、顔面神経機能や聴覚機能を損傷させず守ることが不可欠です。また、神経の種類を識別する場合や、腫瘍が脳幹や目の真うしろ(海綿静脈洞・かいめんじょうみゃくどう)などを圧迫している場合も、モニタリングが必要になります。今回は、「三叉神経運動根」「下位脳神経群」「眼球運動に関わる神経群」の術中神経モニタリングについて、東京医科大学脳神経外科学分野主任教授の河野道宏先生にお話を伺いました。

脳神経のなかで最も大きな三叉神経(さんさしんけい)の運動根のモニタリングには、手術を行う医師が必要だと判断したときに刺激する、随意刺激による「咬筋(こうきん・噛み合わせの筋肉のひとつ)の筋電図」が多く用いられています。顔面神経が電気刺激された場合は、顔の筋肉全体に潜伏時間10~14ミリ秒で鋭い反応が観察されるのに対し、三叉神経運動根が電気刺激された場合は、咬筋に潜伏時間6ミリ秒ほどで鋭い反応が起こります。このように、刺激を受けてから反応が起こるまでの時間は、三叉神経の方が顔面神経よりも早いので、これらを区別する際に有用です。

下位脳神経群は「舌咽(ぜついん)神経・迷走神経・副神経」で構成されています。この神経群と密接な関係を持つ「頸静脈孔腫瘍(けいじょうみゃくこうしゅよう)・舌下神経鞘腫(ぜっかしんけいしょうしゅ)・頭蓋頸椎移行部髄膜腫(ずがいけいついいこうぶずいまくしゅ)」などの腫瘍を切除するときは、「下位脳神経群のモニタリング」を行います。このなかでも「舌咽神経のモニタリング」は難しいのですが、電気刺激から反応を起こすまでが遅く、振幅が小さいため区別できることがあります。また、「迷走神経のモニタリング」は、患部の咽頭(喉の奥)に針電極を刺すか、電極つきのチューブを挿入するか、いずれかの方法でモニタリングが行われます。方法によっては持続モニタリングとして用いてリアルタイムに情報を得ることも可能です。そして、副神経の一つ「頭蓋根」は迷走神経のモニタリングに準じ、副神経のもう一つ「脊髄根(せきずいこん)」は、首や背中の筋肉に針電極を入れモニタリングします。舌下神経は、舌表面に針電極を入れることで情報を得られます。

海綿静脈洞(かいめんじょうみゃくどう)は、眼の奥にあります。このそばに腫瘍が及んでいる場合は、外眼筋(がいがんきん・眼球の向きを変える筋肉)の動きをモニタリングして、眼球運動に関係する神経群の機能をチェックします。外眼筋に直接電極を刺し入れる方法、装着する方法、もしくは、眼窩(がんか・眼球の収まる頭蓋骨のくぼみ)内に針電極を置く方法などがありますが、動きをチェックするだけならば眼振電図と同じセッティングでよいでしょう。

術中神経モニタリングには経験と慣れが必要です。また、以下のような手術の手技もまた、機能温存のために重要であると考えています。

髄液(ずいえき)の排出:通常は、硬膜(髄膜の一番外側にある膜)を切開する際、髄液の排出はそのあとで行われますが、腫瘍が大きい若年者の場合など、状況に応じて一部のみ硬膜を切開して“先に髄液の排出”を行うことにより無用に小脳を傷つけません。

内耳道後壁(ないじどうこうへき)の十分な開放:これにより光が十分に届き、手術器具の出し入れも容易となって効率が上がります。

retractor(手術に用いる脳べら)の適切な使用の工夫:retractorを連続で7分以上、小脳にかけないよう制限し、1分外すということを繰り返して小脳の循環を保ち、小脳の腫れを防ぎます。

腫瘍摘出の7つの進入路:常に7つの進入路を念頭に置き、摘出に行き詰ったら、別の進入路を検討し突破口とします。

腫瘍の串刺し:腫瘍の頭側を中心とする脳幹側のエリアで、手術用器具で腫瘍を串刺しにして、小脳橋角槽から持ち上げ、手術時間を短縮します。

止血のテクニック:目で確認しながら行う聴神経手術においては、止血のテクニックが視認性を維持するカギになります。バイポーラ(凝固止血器)や安全性の高いコットン球(可吸収性止血剤)を状況に応じ使い分けます。

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