患者さんの喜ぶ姿が一番の原動力

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患者さんの喜ぶ姿が一番の原動力

診療だけにとどまらず、男性不妊の認知度向上にも力を入れる湯村寧先生のストーリー

横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター 泌尿器科部長・准教授、田園都市レディースクリニック 臨時職員
湯村 寧 先生

人の役に立ちたいと思って医師になることを決めた

僕はもともと医師の家系で育ったわけではありません。医師になることを決めるに至った大きなきっかけは、高校生のときにテレビで放送されていた海外ミュージシャンたちのコンサートでした。それは、アフリカ難民を救済するという目的で開催されたチャリティーコンサートだったのです。コンサートを通して人の役に立つことをしているミュージシャンたちをみて、純粋に「すごいな」と思いました。それと同時に「自分もなにか人の役に立ちたい」という思いが自分の中に沸き上がってきたのです。

人の役に立つ仕事は、医師のほかにもたくさんあります。そのなかでなぜ医師という職業が初めに思い浮かんだのか、その理由は自分でもよく分かりません。“ひらめいた”とか、“ビビッときた”という表現が一番近いと思います。

泌尿器科に進むことを決めたときも同様ですね。きっと、別の専門領域の勉強をすれば、それはそれでおもしろく感じたのではないかと思います。もともと「医師としてこれをやりたい」という明確な目標があったわけではなかったので、泌尿器科に進んでみたらやりたいことがみつかったというほうが正しいかもしれません。

患者さんとの壁を取り除く

日々の診療では、患者さんを緊張させないように心がけています。できるだけ壁は取り除きたい。“寄り添う”とか“患者さんの立場に立つ”と表現するとありきたりなのかもしれませんが、「この方はこういうときにはこう感じているんじゃないかな」ということを常に考えながら患者さんに接するようにしています。医師と患者さんという関係は保ちながらも、患者さんがほっとできる空間を作ってあげたいと思っています。

ほかには、患者さんだけでなく、パートナーの方とも積極的にお話しをします。僕は男性の不妊治療が専門なので直接の患者さんは男性になりますが、診療に同席されたパートナーのほうを見て話すことも多い。不妊治療は患者さん1人だけではなく、パートナー間のお話でもありますから、パートナーの方も男性側の情報は知っておきたいのではないかと思うのです。パートナーの方が婦人科の先生とお話しするときに、男性側の状況が分からないと困りますよね。ですから、両者にきちんと情報をお伝えする必要があると考えています。でも結局、僕のところで治療を受けるのは男性です。そのため、きちんと現状やそれぞれの選択についてのリスクなども説明したうえで、最終的にどうするかは、できるだけ患者さんご自身に決めていただくようにしています。

『男性不妊』の認知度を高めたい

医師である以上、僕自身が学び続けるということは常に意識をしています。いまだに勉強不足だと反省することもありますし、若い先生から教わることもたくさんあります。ずっと、医師としての研鑽を積み、進化し続けなければいけないとも思っています。

また、自身のレベルアップのほかに目標としていることは、一般の方々に“男性不妊”を認知してもらうということ。日本において不妊の検査や治療を受けたカップルは約5.5組に1組、不妊の原因が男性側にある場合と女性側にある場合の割合はほぼ半分といわれています。こうした状況にもかかわらず、日本で男性不妊を専門としている医師は非常に少ないのが現状です。個人的な感覚としては、男性不妊に対する認知度はあまり高まっているとは思えません。認知度が低ければ、男性不妊を専門とした医師になりたいという人もなかなか増えない。まずは男性不妊を知る人の母数を増やす必要があると思っています。ですから僕は“男性不妊”の認知度を高め、男性不妊を専門とする医師を増やすことに力を入れていきたいです。最終的には、医療機関が遠いからという理由で不妊治療にかかれない男性をなくしたいですね。現在は、当事者の方々に向けた講演会や相談会はもちろん、高校生や大学生などの若い世代に向けた発信にも精力的に取り組んでいるところです。

部下がやりたい仕事を実現するための環境を整える

部長という立場としては、部下がやりたいと言った研究や仕事はできるだけ希望が叶うように環境を整えてあげることが務めだと考えています。逆に、やりたいことがまだ漠然としている人に対しては「これをやってみたらどう?」と提案することもあります。僕自身はそうやって上司にすすめられたことから男性不妊の道に来たので、そういう見つけ方でもよいと思っているのです。僕がそのときどきの上司に環境を整えてもらってここまできたように、僕も部下にはできる限りの環境を提供してあげたいですね。

それから、基本的に部下に無理はさせたくない。当然、仕事上絶対にやらなくてはならないことは責任をもってやってもらう必要がありますけれど、たとえば研究のテーマなどを「やってみないか?」と提案したときに「無理です」と言われれば、「じゃあやらなくていいよ」と。ただ、僕があっさり引き下がると逆に火がついて、「やっぱりやります」と言ってくる部下もなかにはいます。でも僕の考えとしては、やれと言ったからといって全員ができるわけじゃない。できる人がやりたいときにやればいいのではないかと思っています。なにかをやれと指示するのではなく、やりたいことがみつかるまで面倒をみるといったニュアンスでしょうか。それから「最後の責任は僕がとるから」ということはいつも伝えています。僕の前任の部長がこう言ってくださるのを聞いていたので、僕もそんな上司でありたいと思っています。

重要なのは、患者さんの未来を握っているという自覚をもつこと

若手の指導を行うなかで、不妊治療は命を預かっているという感覚が少し薄れやすい部分があるのかな、と感じることもあります。でも、決して命がかかわっていないわけではない。僕が泌尿器科医になりたてのころ、恩師に「『患者さんは自分の親だ』と思って診療をしなさい」と言われたことがありました。僕はこの一言で、患者さんを笑顔にしたり、患者さんを守ったりしていけるような医療を目指そうと考えると同時に、医師としての責任を強く感じました。現在、不妊治療に関わっている方や専門にするために学んでいる方には、将来産まれてくるかもしれない子どもの命や、不妊症に悩む方々、その周囲の方々の未来や夢をつないでいるのだという気持ちでいてほしいと思っています。そのような気概で診療にあたるなかで、患者さんが喜ぶ姿を見ることができたときには、本当に何物にも代えがたい嬉しさを感じます。それが僕の一番の原動力です。今日より明日、明日より明後日と、次につながる診療をしていきたい。患者さんを治すとか命を助けるということとは少し違うのかもしれないですけれど、患者さんを幸せにすることができるというのは、この領域で診療をする大きな醍醐味でもありますね。これからも1人でも多くの人の役に立てるように、走り続けたいと思います。

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