治療
現在、健康保険を適用して使うことができる再生医療等製品は16種類あります(2022年6月時点)。なお、多くの場合は体性幹細胞を用いますが、近年は遺伝子発現を用いる製品も現れています。
健康保険が適用される再生医療の例
- 重症熱傷、先天性巨大色素性母斑、表皮水疱症
- 膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)の臨床症状の緩和
- 造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病
- 虚血性心疾患による重症心不全
- 脊髄損傷に伴う神経症候及び機能障害の改善
- 再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
- 再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫及び濾胞性リンパ腫
- 慢性動脈閉塞症における潰瘍の改善
- 脊髄性筋萎縮症(遺伝子検査により脊髄性筋萎縮症の発症が予測されるものも含む)
- 角膜上皮幹細胞疲弊症
- 角膜上皮幹細胞疲弊症における眼表面の癒着軽減
- 悪性神経膠腫
- 再発又は難治性の多発性骨髄腫
- 非活動期又は軽症の活動期クローン病患者における複雑痔瘻の治療
など
一方、多能性幹細胞であるES細胞とiPS細胞のうち、iPS細胞から作られた網膜組織が加齢黄斑変性の患者に移植されるなど、治療への実用化が始まっているものの、保険適用となっているものはありません。研究の段階であるため“治療”というよりはむしろ“研究”といってよいでしょう。現在は、パーキンソン病、脳梗塞、水疱性角膜症、鼓膜損傷、重症心筋症、口唇口蓋裂、歯周病、糖尿病、先天性食道閉鎖症、クローン病、潰瘍性大腸炎、肝硬変、卵巣がん、子宮頸がん、変形性関節症、難治性骨折、閉塞性動脈硬化症、再生不良性貧血、表皮水泡症などに対する治療への応用が研究されています。
しかし、これら多能性幹細胞はがん化するリスクが現状では否定できません。また、ES細胞は本来胎児として成長するはずの受精卵を用いるため、倫理面で議論を呼ぶこともあります。
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