関節炎や発熱を伴う小児の疾患は非常に多く、若年性特発性関節炎の診療においてはそれが他の疾患によるものではないということを明らかにする必要があります。小児膠原病のエキスパートであり、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座で教授を務める森雅亮先生に、若年性特発性関節炎の検査と診断についてお話をうかがいました。
日本リウマチ学会ホームページでは小児科を標榜する近隣のリウマチ専門医を検索することができます。しかしながら、リウマチ専門医を標榜する小児科医は全国にまだ80名ほどしかいません。全国47都道府県のうち、その専門医がいるのは半数程度にとどまっています。専門医がいない地域の患者さんは内科や整形外科、あるいはリウマチを専門としない一般の小児科で治療を受けていることになります。
日本リウマチ学会小児リウマチ調査検討小委員会が作成した「若年性特発性関節炎初期診療の手引き2015」は、リウマチ専門医だけでなく、小児科や内科、整形外科などでの診療を想定して策定されています。たとえば関節の痛みで整形外科にかかったときに、成長痛として見過ごされることのないよう、若年性特発性関節炎の診療にかかわるさまざまな診療科で早期診断・早期治療に役立てていただけることを願っています。
また、それぞれの地域で連絡できる専門医がいない場合には、いったん二次病院に紹介していただき、そこからリウマチ専門医へ繋いでいただくということも必要であると考えます。
若年性特発性関節炎(JIA)は、さまざまなタイプの異なる病型からなる疾患であるため、何か特定の検査で診断がつくということはありません。実際の症状が若年性特発性関節炎の特徴的な症状に合致していること、それが他の疾患によるものでないことを明らかにすること(鑑別診断)によって総合的に診断します。
特に小児の場合、症状を詳しく伝えることができないため注意が必要です。たとえば診察では起床直後の関節痛やこわばりの有無・程度についてお訊きしますが、乳幼児の場合は痛みやこわばりがあるとじっとしているため、起きてから動き始めるまでの時間を目安にします。
初期においては病型を正確に診断することが難しい場合も少なくないため、まず関節炎に対して治療を開始しながら鑑別診断を行っていくこともあります。
関節の診察方法については日本リウマチ学会のホームページに「関節所見の取り方〜子どもの関節炎へのアプローチ〜」という教育用動画が掲載されています。
しかし関節炎の診断は医師によって異なる場合があり、炎症を起こしている関節が4つまでの少関節炎と診断されても、実はもっと多くの関節に症状が出ていたなどということもあります。
血液検査の結果から炎症反応のほか、リウマトイド因子の陰性/陽性など免疫反応にかかわることまで、さまざまな項目を調べます。抗CCP抗体は成人の場合、喫煙との関連があるとされていますが、小児でも抗CCP抗体が高いと予後が良くないことが分かっています。しかも全身型では抗CCP抗体が上昇することがほぼないため、発熱による鑑別が難しい場合における客観的指標のひとつとなっています。
次のような各種の画像診断によって、関節炎の状態をくわしく調べます。
● 関節エコー検査:超音波の反射を画像化することによって関節の炎症を診断します。滑膜炎、骨びらん(軟骨の破壊が進んで骨表面が侵されていること)、関節に液がたまっている様子や関節周囲の腱の炎症などを詳しくみることができます。以下のMRIなどと比べて患者さんの身体の負担が少なく、短時間でできる検査です。
● 造影MRI:核磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Image: MRI)では関節液がたまっているようすや骨髄のむくみ、滑膜が厚くなっている状態をみることで炎症を早期に診断できます。また、炎症を診断するにはガドリニウム造影剤による造影MRI検査が有用です。
● PET-CT:陽電子放射断層撮影(Positron Emission Tomography: PET)とコンピューター断層撮影(Computed Tomography: CT)を組み合わせたもので、不明熱に始まる全身型若年性特発性関節炎の診断に役立ちます。
● 単純X線撮影:骨の変化をとらえ、関節破壊の評価には欠かせない検査ですが、早期には異常が出にくいという欠点があります。したがって早期診断よりも治療の経過をみていくうえで有用であると言えます。
若年性特発性関節炎(JIA)の診断においては、関節炎や関節痛を引き起こす他の疾患の可能性を排除する、いわゆる除外診断が重要です。とくに白血病や骨肉腫などの悪性疾患を見逃すことがないよう注意すべきです。鑑別すべき疾患は次の通りです。
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