インタビュー

うなじから後頭部にかけての痛み!解離性脳動脈瘤の危険性と症状

うなじから後頭部にかけての痛み!解離性脳動脈瘤の危険性と症状
水谷 徹 先生

昭和大学 医学部脳神経外科学講座 教授

水谷 徹 先生

この記事の最終更新は2016年08月11日です。

解離性脳動脈瘤は、症状が現れることが少なく自然に組織治癒してしまうケースも多いため、発生時期の特定が困難な場合もあります。昭和大学医学部脳神経外科学講座教授の水谷徹先生に解離性脳動脈瘤の症状と危険性についてうかがいます。

解離性脳動脈瘤は、後頚部から頭蓋内に走行する椎骨動脈に多く発生します。そして、急に振り向くような動作をした時、頚を鳴らす癖がある人、ゴルフ・テニス・カイロプラックティスなど頚部に負荷のかかる動作をした時などに発生する事例が報告されています。そのため、日常生活上の頚部の伸展(伸ばし広げること)で椎骨動脈の内面に傷がつき、解離性脳動脈瘤が発生しやすくなるという可能性が考えられます。また、解離性脳動脈瘤の発生は動脈硬化とは無関係です。

椎骨動脈に発生する解離性脳動脈瘤の場合、くも膜下出血脳梗塞を発症して救急入院となることの他に、解離性脳動脈瘤が発生した(動脈解離が起きた)段階で起こるうなじから後頭部にかけての痛みをきっかけとして診断されることが多くなってきています。また、最近では無症候(特別症状がない)で、脳ドックなどで偶然発見される方も増加しています。椎骨動脈の解離性脳動脈瘤が破裂してくも膜下出血を起こしている場合、その発症よりさかのぼって数日以内に項部(うなじ)痛、後頭部痛を自覚していた場合が多いことが特徴的です。

脳動脈瘤の危険性は、破裂してくも膜下出血を生じることにあります。また破裂した場合は、再破裂のリスクが高くなります。これは、解離性脳動脈瘤も嚢状動脈瘤も同様です。再破裂とは、動脈瘤に血栓(血のかたまり)がついて止血された部分が再び破裂することです。

この止血は一時的で、放置すると再破裂の可能性が高くなります。もし再破裂をした場合は死亡率が高いため、再破裂が起きる前に治療をする必要があります。

一般的に、くも膜下出血の自然予後は非常に悪く、手術をしない場合の死亡率は約70パーセントです。動脈瘤の破裂によるくも膜下出血の脅威は再破裂で、手術の目的は再破裂を予防することにあります。これは、通常の嚢状動脈瘤も解離性脳動脈瘤も同様です。ただし、嚢状動脈瘤と解離性脳動脈瘤の病態の大きな違いは、再破裂の時期と頻度の関係です。嚢状動脈瘤は破裂してくも膜下出血を生じた後、組織修復が完全に行われることなく再破裂期間は年単位の長期に及ぶのに対して、解離性脳動脈瘤は上記で述べたように、内膜による組織修復がほぼ完全に行われますが、それまでの間は非常に不安定で、急性期の再破裂率は嚢状動脈瘤よりも高いことが特徴です。

解離性脳動脈瘤の再破裂率の報告は14.1-71.4パーセントとばらつきがありますが、再破裂例の多くが24時間以内であり、2週間以内に集中しています。解離性脳動脈瘤の再破裂率は、1ヶ月を過ぎると約10パーセントに減少し、2ヶ月をすぎると再破裂の危険はほとんど消失します。従って、より急性期の治療が必要とされます。また発生より約2か月を過ぎたものはたとえ破裂動脈瘤でも再破裂の可能性がほぼなくなるので、未破裂の段階で診断された解離性脳動脈瘤も発生より2か月を経過したものは、ほぼ破裂の可能性がありません。

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