膝におけるスポーツ障害の代表的なものは、肘と同じく「離断性骨軟骨炎」です。一方、膝の障害で最も多いのが変形性膝関節症です。一般に膝の軟骨がすり減ることによって発生し、多くの場合は加齢が原因ですが、スポーツによる膝の酷使で発生することがあります。膝の離断性骨軟骨炎と変形性膝関節症とはどのような疾患なのか、滋賀医科大学整形外科学講座教授の今井晋二先生に解説していただきました。
膝におけるスポーツ障害の代表的なものは、肘と同じく「離断性骨軟骨炎」です。治療には肘と同じく骨軟骨柱移植術(=モザイク形成術)が行われます。骨軟骨柱移植術では、ドナー部位といいますが軟骨を採取する場所の障害が問題でした(記事2「野球肘と離断性骨軟骨炎」の図5を参照)。膝の「離断性骨軟骨炎」では、自らの軟骨を一旦、体外で増やし、軟骨組織を再生した後に、損傷部に戻す「自家軟骨移植術」が保険治療として認められています。ただし、認可を受けた施設でのみ、可能ですのであらかじめ確認が必要です。
変形性膝関節症は、高齢化とともによく見られる代表的な膝疾患の一つです。スポーツをする人にも多く見られる疾患ですが、そのきっかけとなる一つが半月板損傷です。半月板は膝関節の中にあり、太ももの骨とすねの骨の間にある軟骨で、関節に加わる負荷を分散させるクッションの役目と、関節の位置を安定する働きをしています。膝をねじった時や本来動かない方向に力が加わると半月板が傷つき、それが繰り返されるうちに関節にも負担がかかってすり減り、変形性膝関節症になります。
また、じん帯損傷も変形性膝関節症の原因となります。前十字じん帯は膝を安定させるために最も重要なじん帯です。前十字じん帯損傷はバスケットボールやサッカー、ラグビーなど膝に負担のかかるスポーツで多く生じます。膝が外れたような不安定感があります。休んでいれば元に戻りますが、運動を再開するとまた同様の症状がみられます。そのたびに半月板や軟骨などその他の組織へも損傷が広がっていきます。
変形性膝関節症の治療は、痛み止めの薬を使ったり、膝関節内にヒアルロン酸の注射などをします。またリハビリテーションを行ったり、膝を温めたりする物理療法を行います。それでも治らない場合は手術を行います。手術には内視鏡手術、骨を切って変形を矯正する手術、人工膝関節置換術などがあります。
前十字じん帯損傷の治療では、取り組むスポーツの種類によって治療法を変えなければいけないので注意が必要です。有力な治療法は二つあります。一つは自身の膝にあるお皿の骨とすねの骨の間にある膝蓋腱(しつがいけん)の一部をじん帯の代わりに使う「BTB(bone tendon bone)法」と呼ばれる手法です。膝関節の強度は保たれるものの、手術の際の傷口が大きく、痛みが残ることがデメリットとして挙げられます。このため、膝をつくアメリカンフットボールや強いキックを行うサッカーなどの選手は、BTB法を選択しません。
一方のSTG(semitendinosus and gracilis tendons)法は、自身のハムストリング腱を用いた手術です。これを前内側線維束と後外側線維束と呼ばれる2方向にじん帯を移植し、損傷前の状態に近い膝へと再建します。単位断面積当たりの強度が強く、内視鏡を使ってできるため傷口が小さいメリットがあります。ただ膝を深く曲げる際の筋力が低下するのがデメリットで、膝を深く曲げることの多い新体操や柔道などの競技者にはお勧めできません。
滋賀医科大学 整形外科学講座 教授
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