院長インタビュー

新たな船出-JCHO北海道病院の取り組み

新たな船出-JCHO北海道病院の取り組み
古家 乾 先生

独立行政法人 地域医療機能推進機構(JCHO) 北海道病院 病院長

古家 乾 先生

この記事の最終更新は2018年04月10日です。

JCHO北海道病院は、1953(昭和28)年の設立以来、北海道社会保険中央病院、北海道社会保険病院としてみなさまにご利用いただいてきました。2014(平成26)年4月には独立行政法人地域医療機能推進機構(Japan Community Health care Organization:JCHO)北海道病院として新たに出発しました。2018年で発足4年目を迎え、JCHO(ジェイコー)という組織の存在意義を地域のみなさまに、親しみをもってご理解いただけるよう努力しています。

同院は「地域の人々を中心とした質の高い医療・介護を提供し、地域から信頼される病院になります」を理念に掲げています。周産期から成人・高齢者までの急性期医療を中心とした地域医療に貢献することを目的とし、消化器、呼吸器、腎・膠原病、周産期の4センターをはじめ、各診療科それぞれが専門性の高い医療のもと連携を密にして、総合的な診療に努めています。

そこで、ひとつの病気を複数の診療科で診るセンターの機能などについて、同院の院長である古家 乾先生に紹介いただきました。

消化器科センターは、2007(平成19)年4月1日に開設しました。消化器科疾患に関して診断から内視鏡的治療、インターベンション、外科治療、がん化学療法、緩和医療まで幅広く診療しています。スタッフは、消化器内科5名と消化器外科5名が在籍しています。多くの専門医・指導医の資格を持った、経験豊かな医師が地域医療を支えています。従来からの内科と外科の垣根を取り払い、毎週合同カンファレンスを行い、消化器疾患の患者さんに対して迅速かつ適確に最善の治療が行えるように取り組んでいます。

患者さんのニーズに応え、低侵襲な内視鏡治療やIVR治療、鏡視下手術(胃がん大腸がん胆石症、急性虫垂炎、鼠経ヘルニアなど)、肝胆膵悪性腫瘍の外科手術も積極的に取り入れております。また、腫瘍内科と連携して、がん化学療法、緩和医療、在宅や施設での栄養管理のための胃ろう造設、中心静脈ポート造設なども行っています。

呼吸器センターは,呼吸器内科と呼吸器外科から成り、密接に連携して多岐にわたる呼吸器疾患に対応しています。入院契機となることが多い病気は、原発性肺がん、急性肺炎、間質性肺炎、誤嚥性肺炎などです。肺結核、間質性肺炎、過敏性肺炎気胸膿胸など種々の原因による、重症急性呼吸不全から長期の在宅管理が要求される慢性呼吸不全まで、ほとんどすべての病気に関して自院で対応できることが最大の強みであり、当呼吸器センターの特徴です。

呼吸器センターの常勤医は、全員が関連学会の専門医・認定医・指導医の資格を持ち、積極的に学会活動・研究会活動を行っています。

腎・膠原病センターでは、腎臓内科医とリウマチ科医がそれぞれの専門性を保ちつつ協力して腎疾患と膠原病の診療に当たっています。

腎臓内科では、蛋白尿や血尿、糸球体腎炎ネフローゼ症候群慢性腎臓病腎不全などの診療を行っています。必要な患者さんに対しては血液透析や腹膜透析を導入し、管理しています。膠原病内科では、もっとも多い関節リウマチのほかに全身性エリテマトーデスや各種血管炎症候群など、膠原病全般の早期診断と最新かつ最良の治療を行うことを目標に診療を行っています。

周産期医療センターは2001(平成13)年にNICU(新生児集中治療室)を開設し、地域周産期母子医療センターに指定されました。2010(平成22)年にはNICUを8床に増床しました。また、2016(平成28)年には母体・胎児集中治療室(MFICU)3床を開設し、徐々に周産期医療センターとしての機能を充実させてきました。緊急母体搬送は、年間90~100件を受け入れています。札幌市の産婦人科救急医療体制において、夜間の三次第1優先病院(札幌圏の夜間母体搬送受入当番病院)を100回程度担当しています。

今後も、新生児科と産科が協力して、札幌圏における周産期医療の基幹施設として求められる役割を、積極的かつ安定的に担い続けていきます。

今後の日本の超高齢化社会を鑑み、健康管理センターでの検診による病気の早期発見と予防及び附属介護老人保健施設での在宅復帰を目指した介護と福祉の実践にも注力しています。いわゆる地域包括ケアシステムを地域において実践する、要の役割を目指しております。

健康管理センターの主な業務は健康診断です。一般検診・ドック検診のほか、特定健診、特定保健指導に力を入れています。

自覚症状がなく元気に毎日を過ごしている方でも、実際に健康診断を受診してみると、さまざまな問題点がみつかることがあります。食生活の偏り(食べ過ぎ、塩分・糖分・脂肪分の摂り過ぎ)、肥満、喫煙などの生活習慣の偏りは自分でも気が付きにくいものです。健康診断の結果を見て、自分の生活習慣を振り返ってみることは大きな意味を持ちます。

生活習慣を自ら変えていくことは容易ではありません。医師・保健師・栄養士などのスタッフが健康診断の結果を一緒に考え、健やかな生活へと変わるためのお手伝いができればと思います。

そのほか、地域住民との交流を図る「なかのしま健康フェア」は、医学講話をはじめ看護師やソーシャルワーカーなどによる健康・医療相談を開催しています。

附属介護老人保健施設は入所定数100名、通所定数60名で運用しています。在宅強化型介護老人保健施設として、生活リハビリを目的とした在宅への中間施設の役割を担っています。

音楽療法士による月3回の演奏会や、北海道ボランティアドッグの会に所属するセラピー犬の月1回の訪問など利用者さんとさまざまな形で触れ合う時間を設けるなどの工夫を行っています。このように、利用者さん同士や職員との交流を図りながら、楽しく心安らぐ生活の支援をしています。

一方で、高齢者多死社会を踏まえ、老健施設でのがん•非がん患者さんのお看取りも積極的に取り入れています。急性期病院でもある当院と棟続きである利点をいかし、日常的な健康管理や身体的問題への配慮、救急対応も可能です。また、居宅介護事業や介護予防事業支援も行っています。

 

高齢化社会においては、「臓器を診る専門性の高い医療のみならず、精神・心理的、社会的な背景をもった“病に陥った人”を全人的に診療し、疾病に陥る以前の状態になるべく近い状態まで回復させる道を探しだすこと」が必須になってまいります。そのためには、関係医療機関、介護施設、在宅治療施設などとのシームレスで密接な連携の構築が必要なことは、いうまでもありません。

 

当院は数年前、地域医療機関とのシームレスな連携の構築のために「総合診療救急科」を立ち上げました。どの専門科を受診してよいかわからない場合、この科を受診いただけば、適切な科に紹介できます。

かかりつけ医の先生が「何か変だ」、「このまま返していいのか」と感じた患者さんで、紹介すべき専門科を迷った場合、それ以上の検査などをすることなく総合診療救急科にご紹介いただければ適切な科へと連携します。

困ったときに電話をいただければ、直接総合診療救急科の担当医師が対応するようにしております。これにより病診連携の垣根は、かなり低くなりました。

「総合診療救急科」は、研修医に対する教育の場としても大きな価値があります。当院は初期研修医の教育も重視しており、基幹型及び協力型(たすきがけ)臨床研修病院として道外および道内3大学(北海道大学、札幌医科大学、旭川医科大学)すべてから研修医を受け入れています。

しかし、研修の場が専門の診療科だけに限られると、「その科を受診した」という事実だけで、体のどの部分に課題があるのか、ある程度の予想がついてしまいます。これでは真の診断力は養えません。

その点、総合診療救急科における研修では、「どの科に紹介すべきか」を決めるため、患者さんの訴えと症状、検査結果のみから病気を鑑別します。この訓練により、全身を総合的に診断できるスキルを磨くことができます。

また、複数の病気が見つかった場合、全身状態との兼ね合いを考えたうえで、どのような順番で治療すべきか決めなければなりません。高齢者は複数の病気を抱えているのが一般的です。今後の高齢化を見据えた場合、このようなスキルは必須でしょう。

同じことは指導医の先生にも当てはまります。総合診療救急科での診療を通じ、自らの専門科で養った「深く考える」習慣を、ほかの疾患にも広げてほしいと考えています。

育成したいのは「視野の広い医師」です。そのため、院外の専門家を招いた「医療講演会」も定期的に開催しています。

 

教育を重視しているのは、医師だけにとどまりません。たとえば、社会の高齢化にともない認知症を合併する患者さんが多くなりました。そのため、医師だけでなく看護師さんや老健施設の介護士さんの育成も重要な課題であり、認知症の教育を重点的に行っています。また、年齢が上がれば、入院に際してせん妄状態となる患者さんも増えます。精神科医師以外でも対処できるよう準備しておく必要があり、これも教育の一環です。

そのほかに、特定行為研修制度への対応強化、認定看護師の取得促進等の育成環境の充実を図り、レベルの高いサービスが提供できる体制作りにも取り組んでいます。

また、患者さん向けの情報提供にも積極的に取り組んでいます。病院外で行う地域住民対象の講演会や、外来にいらした患者さんを集めての院内「健康教室」などです。いずれもテーマを決め、医師・看護師・介護士などのスタッフがわかりやすく説明しています。

古家 乾先生

2016年に院長になって以来、JCHO(ジェイコー)北海道病院を患者さんや働いている人たちに、より一層、魅力を感じてもらえる病院にしたいと考えてきました。

医療界のなかでも医療安全・医療経営・新規薬剤の費用対効果、医師の偏在と専門医制度に関してなど、大きな問題が山積しています。2025年問題といわれる「団塊の世代」が75才以上になる社会構成人口の推移など、時代や社会背景によって医療に求められる変化にも柔軟に対応しながら、地域に信頼され、地域にとって必要不可欠な存在となれるよう職員一丸となって取り組んでいきたいと思っています。

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    古家 乾 先生

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