疾患ガイド

食道がん:症状、原因、治療

食道がん:症状、原因、治療
加藤 広行 先生

桐生地域医療企業団 企業長、桐生厚生総合病院 病院長

加藤 広行 先生【監修】

目次
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この記事では、食道がんの基本的な知識から、ステージ別の治療法まで解説します。

👉 このパートをまとめると
食道がんは食道の粘膜から発生するがんです。食道がんの初期は無症状が多いですが、進行すると飲み込みにくさや体重減少などの症状が現れます。

食道がんは、食べ物の通り道である食道の粘膜に発生するがんです。日本の統計では、食道がんは男性に多く、女性の約5倍と報告されています。また、60歳代から70歳代で最も多く発生する傾向があります。

食道がんの初期段階では、自覚症状がほとんどありません。まれに、“熱いものがしみる”“食べ物を飲み込んだときに胸の奥がチクチクする”といった軽微な胸の違和感がみられることがあります。

がんが進行し、食道の中が狭くなってくると、以下のような比較的はっきりとした症状が現れる場合があります。

  • 嚥下困難(えんげこんなん)……食事がつかえる感じがして、飲み込みにくくなります。進行すると水分も通りにくくなることがあります。
  • 体重減少……食事量の減少に伴って起こります。
  • 胸や背中の痛み……がんが食道の外側(肺や背骨など)に広がると生じることがあります。
  • 声のかすれ(嗄声(させい))……声帯を動かす神経にがんが影響を及ぼすことで起こる場合があります。
  • むせるような咳……がんが気管などに影響を及ぼすことで生じる場合があります。

👉 このパートをまとめると
日本では、“扁平上皮がん”という種類の食道がんが約90%を占めます。扁平上皮がんの主な原因は長年の飲酒と喫煙の習慣です。

食道がんにはいくつかの種類がありますが、日本では約90%が“扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん”という種類であると報告されています。この種類は、長年の生活習慣と深く関連していると考えられています。

扁平上皮がんの発生に最も強く関わっているのは、“飲酒”と“喫煙”の2つの生活習慣であると考えられています。これらが合わさると、リスクはさらに高まるとされています。

特に、お酒を飲むと顔が赤くなる“フラッシング反応”が起こる体質の方は注意が必要といわれています。これは、アルコールの分解過程で発生する発がん性物質(アセトアルデヒド)を分解する酵素のはたらきが、遺伝的に弱い体質であることを示しています。このような体質の方が飲酒を続けると、食道がんのリスクが高まることが報告されています。

👉 このパートをまとめると
診断は内視鏡検査と組織の病理検査で確定します。その後、CT検査などでがんの広がり(ステージ)を正確に評価します。

食道がんが疑われる場合、まず上部消化管内視鏡検査胃カメラ)が行われます。内視鏡(カメラ)で食道内を直接観察し、疑わしい部分の組織を少量採取します。この組織を顕微鏡で調べる病理検査によって、がん細胞の有無と種類が確定診断されます。近年では、特殊な光や色素を使い、粘膜表面の病変を強調して観察する場合もあります。

がんの診断が確定した後、治療方針を決定するために、がんの広がり(ステージ)を評価します。

CT検査・MRI検査

がんの大きさや周囲の臓器への広がり、リンパ節やほかの臓器(肺、肝臓など)への転移の有無を評価する中心的な検査です。

PET検査

全身のがん細胞を調べる検査で、予期せぬ転移の発見などに有用な場合があります。

これらの検査結果を総合的に評価し、がんの進行度を“ステージ(病期)”として分類します。食道がんのステージは0~IVB期まであり、以下の3つの因子の組み合わせによって決定されます。この分類(TNM分類)が、後の治療方針を決定するうえで重要な指標となります。

  • T因子……がんが食道の壁のどの深さまで広がっているか(深達度)を評価します。
  • N因子……周囲のリンパ節への転移の有無、またその個数を評価します。
  • M因子……肺や肝臓など、食道から離れた臓器への転移(遠隔転移)の有無を評価します。

👉 このパートをまとめると
食道がんの治療はステージごとに異なり、体の状態、患者本人の希望などを考慮して総合的に決定されます。

がんが食道の粘膜内にとどまっているようなごく早期の段階で、リンパ節転移の可能性が極めて低いと判断される場合、内視鏡的切除が第一の選択肢となります。内視鏡を使って、食道の内部からがんを粘膜ごと切除する方法で、食道を温存できる点が大きな利点です。内視鏡切除後に、がん細胞が取りきれていない場合やリンパ節への転移がある場合は、化学放射線療法や手術などが行われる可能性があります。

化学放射線療法:薬物療法(化学療法)と体の外から高エネルギーの放射線を照射する放射線療法を同時に行う治療。

がんが粘膜下層にとどまっているステージIでは、まず手術ができる体の状態であるかどうかが評価されます。基本的に手術が可能な場合は手術が行われ、難しい場合は化学放射線療法が行われます。

体の状態から手術が可能と判断された場合、まず薬物療法を行い(術前化学療法)、がんを小さくした後に手術を行う方法が主に行われています。手術では、がんができた部分を含む食道と胃の一部、周囲の組織などを切除します。食道を切除するため、再建術(残った胃や腸を使い、食道の代わりを作る手術)も同時に行われます。

また、手術前に化学放射線療法が行われる場合もあります。化学放射線療法後に手術を行い、がん細胞が残った場合は、一般的に免疫チェックポイント阻害薬が用いられます。

手術が難しい場合や、患者が手術を希望しない場合には、根治を目指した化学放射線療法が選択肢となります。

免疫チェックポイント阻害薬:がん細胞を攻撃する免疫細胞の働きを活性化させる治療薬。

ステージIVA(がんが周囲の臓器に広がり手術が困難な場合)では、一般的に化学放射線療法が行われます。

ステージIVB(遠隔転移がある場合)では、治療の主体は薬物療法となります。抗がん薬に免疫チェックポイント阻害薬を併用する治療が推奨されています。

👉 このパートをまとめると
各治療法に特有の副作用があります。特に免疫チェックポイント阻害薬では、免疫関連有害事象(irAE)という副作用に注意が必要です。

各治療法には、それぞれ特有の合併症や副作用が起こる可能性があります。

手術

縫合不全(つなぎ目から食べ物などの漏れ)、肺炎反回神経麻痺嗄声)などが生じる場合があります。縫合不全が生じた場合は、治るまで点滴で栄養を摂取します。また、肺炎予防のため、手術前から禁煙を行い、術後にリハビリテーションを行って体を動かします。反回神経麻痺が生じた場合、多くは自然に治りますが、症状が続く場合は耳鼻咽喉科医(じびいんこうかい)による治療が検討されます。

放射線療法

放射線療法中や治療後すぐには、放射線食道炎(飲み込むときの痛み)、皮膚炎、骨髄抑制(白血球などの減少)などが生じる場合があります。また、放射線療法が終了した数か月後以降にも肺や心臓への影響などが生じる可能性があります。そのため、治療終了後も継続的に主治医の診察が行われます。

薬物療法

がん薬の副作用は薬の種類によって異なり、個人差もみられます。一般的には、骨髄抑制、口内炎、手足のしびれ、吐き気、だるさなどが生じます。副作用を予防する薬などがあるため、日々の状態を記録し、体調の変化に気付いた場合は早めに医療スタッフに相談しましょう。

免疫チェックポイント阻害薬は、従来の抗がん薬とは異なる特有の副作用を引き起こすことがあります。これを“免疫関連有害事象(irAE)”と呼びます。

irAEは、がん細胞への攻撃力を高めるために活発になった免疫細胞が、自分自身の正常な臓器を攻撃してしまうことで起こる反応です。irAEは皮膚、腸、肺、肝臓、内分泌臓器(甲状腺など)を含めて体のあらゆる場所に生じ、以下のような症状が起こる可能性があります。

  • 下痢や血便
  • 吐き気や嘔吐
  • 咳や息切れ
  • 皮膚の発疹(ほっしん)かゆみ
  • だるさ
  • 発熱
  • 手足のしびれ

など

治療中だけでなく、治療が終了した後に現れることもあります。irAEは、早期に発見し、適切な対応をすることでコントロール可能とされています。そのため、体調の変化があったときは、速やかに医療スタッフに相談することが重要です。

👉 このパートをまとめると
治療後は再発や新たながんのチェックのため定期的な検査が必要です。5年生存率はステージIで約8割と、早期発見が重要です。

治療が終了した後も、定期的な通院と検査が必要です。これは、万が一の再発を早期に発見するため、そして食道やほかの臓器(頭頸部(とうけいぶ)、胃など)に新たながんが発生しないかを監視するために行われます。一般的には、定期的な診察や内視鏡検査、CT検査などが組み合わされます。

がんの予後を示す指標の1つに5年生存率(ネット・サバイバル)があります。これは、食道がんと診断された人のうち、食道がん以外の原因で亡くなった人を取り除き、5年後に生存している人の割合を示す数値です。国立がん研究センターのデータ(2014~2015年)によれば、食道がんの5年生存率は、ステージIで発見できた場合、78.4%と報告されています。この数値は、早期発見・早期治療の重要性を示しています。

Q.治療にはどのくらいの費用がかかりますか?

A. 食道がんの治療費は、治療法や入院期間によって大きく異なりますが、公的医療保険が適用されます。たとえば3割負担の場合、内視鏡的切除では約1週間の入院で15~20万円程度、手術では20~30日ほどの入院で60~80万円程度が目安となります。

さらに、1か月の医療費の自己負担額が上限額を超えた場合に、超えた分が払い戻される“高額療養費制度”を利用することができます。

Q. 食道がんは遺伝はしますか?

A. 日本人に多い扁平上皮がんは、遺伝的要因よりも、長年の飲酒や喫煙といった生活習慣が主な原因と考えられています。

食道がんのうち、日本人に多い扁平上皮がんの最大のリスク因子は飲酒と喫煙の習慣とされています。治療法はステージによって異なり、体の状態や希望を考慮し決定されます。そのため、主治医とよく相談し、納得のいく治療を選択することが大切です。

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