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パーキンソン病とレビー小体型認知症の共通点とは? 主な治療法や医療費助成の活用法

パーキンソン病とレビー小体型認知症の共通点とは? 主な治療法や医療費助成の活用法
波田野 琢 先生

順天堂大学医学部附属順天堂医院 脳神経内科 主任教授

波田野 琢 先生【監修】

目次
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パーキンソン病レビー小体型認知症は、手の震えなどの運動症状が先に現れるか、幻視や認知機能の低下が先に現れるかという違いはありますが、その根底にある原因は共通している可能性があります。この記事では、それぞれの病気の概要から違い、治療を支える医療費助成制度や地域での取り組みについて解説します。

👉 このパートをまとめると
パーキンソン病は主に運動症状が、レビー小体型認知症認知機能低下や幻視などがみられる病気です。パーキンソン病とレビー小体型認知症は、“レビー小体病”という概念に含まれる病気の1つと考えられています。

パーキンソン病は、中脳の黒質で作られる“ドパミン”という神経伝達物質が減少することで、主に体の動きに支障が生じる病気です。主な症状として手足の震え(静止時振戦)、筋肉のこわばり(筋強剛(きんきょうごう))、遅い動き(動作緩慢)などが現れます。ドパミンが減少する理由は2026年時点では解明されていませんが、ドパミンを分泌する神経細胞の内部に、“レビー小体”と呼ばれる物質が現れることが知られています。50~60歳代での発症が多く、高齢になるほど発症率が高まる傾向にあります。

レビー小体型認知症は、脳の広範囲にレビー小体が蓄積し、神経細胞のはたらきを阻害することで引き起こされる認知症です。レビー小体型認知症では、頭がはっきりしたりぼんやりしたりする(認知機能の変動)、実際には存在していないものが見える(幻視)、寝ている間に大声を出したり暴れたりする(レム睡眠行動障害)などの症状が現れるといわれています。認知症の症状と前後して、パーキンソン病と同様の運動症状が出てくることも少なくありません。なお、パーキンソン病に罹っている患者さんがその後認知症となった場合は、レビー小体型認知症と区別して“パーキンソン病認知症”と呼ばれることがあります。

レビー小体は、主に“α-シヌクレイン”というタンパク質が神経細胞内で凝集し、蓄積することによって生じます。レビー小体病は、脳の神経細胞の中にレビー小体が出現する病気をまとめた概念です。パーキンソン病とレビー小体型認知症は、いずれもレビー小体病の1つであると考えられています。

👉 このパートをまとめると
パーキンソン病レビー小体型認知症は、多彩な症状を引き起こします。

パーキンソン症状として知られる主な運動症状には、以下のようなものがあり、レビー小体型認知症でもみられる場合があります。しかし、パーキンソン病やレビー小体型認知症の症状には個人差があるため、全ての症状が生じるとは限りません。

  • 動作(運動)緩慢、無動……動きが遅くなる、少なくなる
  • 静止時振戦……動かしていないときに手足が震える(動かしているときには震えが抑えられる)
  • 筋強剛(筋固縮)……筋肉がこわばる
  • 姿勢反射(保持)障害……バランスを崩しやすくなる、立位や歩行時に前傾姿勢がみられる
  • 歩行速度の低下……歩幅が小さくなる、足を引きずる
  • すくみ現象……すくみ足(歩き出すときに一歩目を踏み出すことが難しくなる)、加速歩行(歩く速度がいきなり速くなる)

また、顔の筋肉の動きも少なくなるため、表情が乏しくなったり(仮面様顔貌(かめんようがんぼう))、言葉の抑揚や声量が小さくなったりすることがあります。

レビー小体型認知症では以下のような症状がみられますが、パーキンソン病でもみられることがあります。

  • 認知機能の変動……意識や注意力などがはっきりしているときとぼんやりしているときがある
  • 錯視……ほこりが虫に見えたり、花が人の顔に見えたりと実際とは異なるものに見える
  • 幻視……実際には存在していない人などが見える
  • レム睡眠行動障害……寝ている間に夢と現実との区別がつかなくなり、大声を上げたり暴れたりする
  • 嗅覚障害……臭いの種類が判別できない
  • 自律神経症状……便秘や頻尿、立ちくらみ(起立性低血圧)など

特にレム睡眠行動障害や嗅覚障害、自律神経症状は、パーキンソン病やレビー小体型認知症を発症する数年以上前からみられることがある症状(前駆症状)の1つです。2つ以上の前駆症状がみられる場合は、将来レビー小体病になる可能性が高いと考えられています。

👉 このパートをまとめると
パーキンソン病レビー小体型認知症では、それぞれの症状に応じた治療や環境調整などが行われます。

パーキンソン病そのものを治す治療法は確立していません(2026年1月時点)。そのため、対症療法としてまずは薬物療法が行われます。薬物療法で症状の改善がみられない場合は、手術が検討されることもあります。

主な治療薬:L-ドパ(レボドパ)、MAOB阻害薬、ドパミンアゴニスト

複数の治療薬があり、患者さんの年齢や状態に応じて使い分けることで、不足したドパミンを補います。

主な治療薬として、L-ドパ、MAOB阻害薬、ドパミンアゴニストがあります。L-ドパは効果が強く、高齢の方や認知症の症状がみられる場合に選択肢となります。しかし、長期間の服用により効果が不安定になったり(ウェアリングオフ現象)、手足の意図しない動き(不随意運動)がみられたりすることがあります。MAOB阻害薬はドパミンを分解する酵素であるMAOを阻害することで効果が出ます。早期で症状が軽度の場合や、L-ドパ製剤の効果が不安定になったときに安定化させたい場合に適応となります。ドパミンアゴニストはウェアリングオフ現象や不随意運動が生じにくく、若年の方に使用されることがありますが、副作用として日中の眠気や幻覚などに注意が必要です。また、病的賭博(ギャンブルがやめられない)や性欲亢進、買い物依存、過食などの衝動制御障害が現れることもあります。

手術

一般的には脳深部刺激療法と呼ばれる方法が行われます。脳深部刺激療法では、脳内に電極を埋め込み、その電極から刺激を与えることで症状の緩和を目指します。

レビー小体型認知症の認知機能の変動や幻視に対しては、ドネペジルなどのコリンエステラーゼ阻害薬が有効であると報告されています。一方で、幻視に対して一般的な抗精神病薬を使用すると、症状が悪化したり意識障害を招いたりする“過敏性”のリスクがあるため、慎重な判断が求められます。そのため、環境調整やケアなど、薬物療法以外の治療が重要です。たとえば幻視は暗い場所で起こりやすいため、室内を明るくするなどの環境調整が効果的な場合があります。

👉 このパートをまとめると
パーキンソン病は指定難病の1つです。そのため、治療にかかる医療費は、助成の対象となる可能性があります。

パーキンソン病は日本の指定難病に設定されており、通常はホーン・ヤール重症度分類3度以上かつ生活機能障害度2度以上の場合に医療費の助成を受けることができます。

  • ホーン・ヤール重症度分類3度……姿勢反射障害があり、日常生活で支障はみられるものの介助は不要
  • 生活機能障害度2度……日常生活や通院時に部分的な介助が必要

上記の要件を満たさない場合でも、申請月以前の12か月以内に指定難病に関わる月々の医療費総額(10割分)が33,330円を超える月が3回以上ある場合、“軽症高額該当”として助成の対象となります。

医療費の助成を受けるためには、特定医療費(指定難病)受給者証を所持する必要があります。特定医療費(指定難病)受給者証は、お住まいの都道府県あるいは指定都市の窓口で申請書や診断書などの必要な書類を提出することで申請できます。マイナンバーカードの利用で提出書類を省略できる場合もあるため、詳細は窓口でご確認ください。

👉 このパートをまとめると
レビー小体型認知症を含め、認知症の方とその家族を支えるために介護保険サービスやチームオレンジなど、さまざまなサービスや支援体制があります。

介護が必要となった場合は、デイサービスや訪問介護などの介護保険サービスを受けることができる可能性があります。どのようなサービスを受けられるかは要介護度によって異なるため、お住まいの市区町村の窓口で認定申請が必要です。

認知症に対する知識と理解があり、可能な範囲で認知症の方やその家族を支援する“認知症サポーター”の養成が全国で進められています。認知症サポーターは、主に近隣の認知症患者さんの見守りや外出支援、話し相手などの活動を行います。近年では、認知症サポーターを中心に、認知症患者さんを地域全体で支え合う“チームオレンジ”と呼ばれる取り組みも始まっています。

Q. パーキンソン病と診断されましたが、将来必ず認知症になりますか?

A. 全ての患者さんが認知症を発症するわけではありません。パーキンソン病の経過には個人差があります。治療薬やリハビリテーションなどの進歩により、長期間にわたって認知機能を維持し、自立した生活を送られている方もいます。

Q. 幻視が見えるのは、精神的な病気になったということでしょうか?

A. レビー小体病における幻視は、脳内の神経細胞が減少することによって生じると考えられています。適切な環境調整や薬によって改善する可能性もあるため、医師に相談することが大切です。

パーキンソン病レビー小体型認知症は、α-シヌクレインという共通の原因を持ち、“レビー小体病”という概念に含まれる病気と考えられています。レビー小体病ではさまざまな症状が現れますが、適切な治療や環境調整などによって症状の改善・維持を目指します。また、助成制度や介護保険サービスなどを活用することで、QOL(生活の質)を維持しながら自分らしい生活を継続していきましょう。

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