
パーキンソン病とレビー小体型認知症は、手の震えなどの運動症状が先に現れるか、幻視や認知機能の低下が先に現れるかという違いはありますが、その根底にある原因は共通している可能性があります。この記事では、それぞれの病気の概要から違い、治療を支える医療費助成制度や地域での取り組みについて解説します。
👉 このパートをまとめると
パーキンソン病は主に運動症状が、レビー小体型認知症は認知機能低下や幻視などがみられる病気です。パーキンソン病とレビー小体型認知症は、“レビー小体病”という概念に含まれる病気の1つと考えられています。
パーキンソン病は、中脳の黒質で作られる“ドパミン”という神経伝達物質が減少することで、主に体の動きに支障が生じる病気です。主な症状として手足の震え(静止時振戦)、筋肉のこわばり(筋強剛)、遅い動き(動作緩慢)などが現れます。ドパミンが減少する理由は2026年時点では解明されていませんが、ドパミンを分泌する神経細胞の内部に、“レビー小体”と呼ばれる物質が現れることが知られています。50~60歳代での発症が多く、高齢になるほど発症率が高まる傾向にあります。
レビー小体型認知症は、脳の広範囲にレビー小体が蓄積し、神経細胞のはたらきを阻害することで引き起こされる認知症です。レビー小体型認知症では、頭がはっきりしたりぼんやりしたりする(認知機能の変動)、実際には存在していないものが見える(幻視)、寝ている間に大声を出したり暴れたりする(レム睡眠行動障害)などの症状が現れるといわれています。認知症の症状と前後して、パーキンソン病と同様の運動症状が出てくることも少なくありません。なお、パーキンソン病に罹っている患者さんがその後認知症となった場合は、レビー小体型認知症と区別して“パーキンソン病認知症”と呼ばれることがあります。
レビー小体は、主に“α-シヌクレイン”というタンパク質が神経細胞内で凝集し、蓄積することによって生じます。レビー小体病は、脳の神経細胞の中にレビー小体が出現する病気をまとめた概念です。パーキンソン病とレビー小体型認知症は、いずれもレビー小体病の1つであると考えられています。
👉 このパートをまとめると
パーキンソン病やレビー小体型認知症は、多彩な症状を引き起こします。
パーキンソン症状として知られる主な運動症状には、以下のようなものがあり、レビー小体型認知症でもみられる場合があります。しかし、パーキンソン病やレビー小体型認知症の症状には個人差があるため、全ての症状が生じるとは限りません。
また、顔の筋肉の動きも少なくなるため、表情が乏しくなったり(仮面様顔貌)、言葉の抑揚や声量が小さくなったりすることがあります。
レビー小体型認知症では以下のような症状がみられますが、パーキンソン病でもみられることがあります。
特にレム睡眠行動障害や嗅覚障害、自律神経症状は、パーキンソン病やレビー小体型認知症を発症する数年以上前からみられることがある症状(前駆症状)の1つです。2つ以上の前駆症状がみられる場合は、将来レビー小体病になる可能性が高いと考えられています。
👉 このパートをまとめると
パーキンソン病とレビー小体型認知症では、それぞれの症状に応じた治療や環境調整などが行われます。
パーキンソン病そのものを治す治療法は確立していません(2026年1月時点)。そのため、対症療法としてまずは薬物療法が行われます。薬物療法で症状の改善がみられない場合は、手術が検討されることもあります。
複数の治療薬があり、患者さんの年齢や状態に応じて使い分けることで、不足したドパミンを補います。
主な治療薬として、L-ドパ、MAOB阻害薬、ドパミンアゴニストがあります。L-ドパは効果が強く、高齢の方や認知症の症状がみられる場合に選択肢となります。しかし、長期間の服用により効果が不安定になったり(ウェアリングオフ現象)、手足の意図しない動き(不随意運動)がみられたりすることがあります。MAOB阻害薬はドパミンを分解する酵素であるMAOを阻害することで効果が出ます。早期で症状が軽度の場合や、L-ドパ製剤の効果が不安定になったときに安定化させたい場合に適応となります。ドパミンアゴニストはウェアリングオフ現象や不随意運動が生じにくく、若年の方に使用されることがありますが、副作用として日中の眠気や幻覚などに注意が必要です。また、病的賭博(ギャンブルがやめられない)や性欲亢進、買い物依存、過食などの衝動制御障害が現れることもあります。
一般的には脳深部刺激療法と呼ばれる方法が行われます。脳深部刺激療法では、脳内に電極を埋め込み、その電極から刺激を与えることで症状の緩和を目指します。
レビー小体型認知症の認知機能の変動や幻視に対しては、ドネペジルなどのコリンエステラーゼ阻害薬が有効であると報告されています。一方で、幻視に対して一般的な抗精神病薬を使用すると、症状が悪化したり意識障害を招いたりする“過敏性”のリスクがあるため、慎重な判断が求められます。そのため、環境調整やケアなど、薬物療法以外の治療が重要です。たとえば幻視は暗い場所で起こりやすいため、室内を明るくするなどの環境調整が効果的な場合があります。
👉 このパートをまとめると
パーキンソン病は指定難病の1つです。そのため、治療にかかる医療費は、助成の対象となる可能性があります。
パーキンソン病は日本の指定難病に設定されており、通常はホーン・ヤール重症度分類3度以上かつ生活機能障害度2度以上の場合に医療費の助成を受けることができます。
上記の要件を満たさない場合でも、申請月以前の12か月以内に指定難病に関わる月々の医療費総額(10割分)が33,330円を超える月が3回以上ある場合、“軽症高額該当”として助成の対象となります。
医療費の助成を受けるためには、特定医療費(指定難病)受給者証を所持する必要があります。特定医療費(指定難病)受給者証は、お住まいの都道府県あるいは指定都市の窓口で申請書や診断書などの必要な書類を提出することで申請できます。マイナンバーカードの利用で提出書類を省略できる場合もあるため、詳細は窓口でご確認ください。
👉 このパートをまとめると
レビー小体型認知症を含め、認知症の方とその家族を支えるために介護保険サービスやチームオレンジなど、さまざまなサービスや支援体制があります。
介護が必要となった場合は、デイサービスや訪問介護などの介護保険サービスを受けることができる可能性があります。どのようなサービスを受けられるかは要介護度によって異なるため、お住まいの市区町村の窓口で認定申請が必要です。
認知症に対する知識と理解があり、可能な範囲で認知症の方やその家族を支援する“認知症サポーター”の養成が全国で進められています。認知症サポーターは、主に近隣の認知症患者さんの見守りや外出支援、話し相手などの活動を行います。近年では、認知症サポーターを中心に、認知症患者さんを地域全体で支え合う“チームオレンジ”と呼ばれる取り組みも始まっています。
A. 全ての患者さんが認知症を発症するわけではありません。パーキンソン病の経過には個人差があります。治療薬やリハビリテーションなどの進歩により、長期間にわたって認知機能を維持し、自立した生活を送られている方もいます。
A. レビー小体病における幻視は、脳内の神経細胞が減少することによって生じると考えられています。適切な環境調整や薬によって改善する可能性もあるため、医師に相談することが大切です。
パーキンソン病とレビー小体型認知症は、α-シヌクレインという共通の原因を持ち、“レビー小体病”という概念に含まれる病気と考えられています。レビー小体病ではさまざまな症状が現れますが、適切な治療や環境調整などによって症状の改善・維持を目指します。また、助成制度や介護保険サービスなどを活用することで、QOL(生活の質)を維持しながら自分らしい生活を継続していきましょう。
様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
情報アップデートの場としてぜひご視聴ください。
関連の医療相談が31件あります
パーキンソン病の振戦
パーキンソン病の振戦は安静時にはずっと震えているものなのですか?? それとも震えのない日や時間帯によっては震えが止まっている時もあるのでしょうか?? よろしくお願いします。
脇の下のリンパの痛み
おとといから右脇の下のリンパあたりが痛みます。腫れもしこりもありません 6年前にパーキンソン病と診断され通院中ですが、その辺りから良く首や両脇のリンパは時折痛みを感じていました。 担当の神経内科医は 『パーキンソン病特有の症状によりリンパの流れを悪くし痛みが出る』 気にしだすとますます痛みを感じるので気にしない…とのことでした。 考えてみればその通り…のような気もしますがこの2日間の痛みは今まで以上でした。 (痛くてずっとさすっていたので尚更だったのか?) 今朝は痛みがありません また気にして触ったりすると痛むかも?と思いやめています パーキンソン病の症状(現在 薬服用のおかげで日常生活は自立していますが 筋固縮、身体の可動率の悪さ、便秘、自律神経系からくる立ちくらみなどのいろいろな症状の1つとして考え、やはり 『気にしないこと』が最良なのでしょうか? 怖いのは『そう思っていたら別の病が隠れ ていた』ということで 腫れやしこりがない状態でも、何か他の病気の可能性もあるのでしょうか? よろしくお願い致します
パーキンソン病
祖父と父が60代でパーキンソン病になりました。優性遺伝でのパーキンソン病になると思うのですが原因遺伝子の浸透率は高いのでしょうか?
かかりつけの病院で
かかりつけの病院で、 薬を処方されてますが、 毎回、何を飲んでも薬は効かない、 よくはならないけどねと、 毎回、言われますが、 全く知識もなく、わからない私は、 父親になんと言えばいいですか?
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「パーキンソン病」を登録すると、新着の情報をお知らせします