なんとなく受けてみた子宮頸がん検診で異常を指摘されると、とても驚くとともに不安になってしまうでしょう。異常がでてしまったことは残念ですが、早期診断と治療を行う機会を得ることができたと考えることもできます。しっかりと知識をつけて適切な受診を行うようにしましょう。子宮頸がん検診と診断について、山王病院女性腫瘍センター・婦人科 センター長の片瀬功芳先生にお話をうかがいました。
子宮頸がん検診というのは細胞を見る検査のことです。子宮頸がんが発生する「子宮頸部」は膣鏡診(クスコ診)をすることで直に観察したり触れたりすることができるので、細胞をこすって採取することができます。
子宮頸がんの場合、正常な細胞が何段階かの性質の変化を経て性質の変化とともに、細胞の形が正常な細胞の形から離れがん細胞に変化すると考えられています。この細胞の変化のことを異型といいます。
外来では「細胞の異型は強くないからまずは経過観察をしましょう」とか「異型の程度が強いので組織を採取してみましょう」というように説明されます。単純に「異型が強くなるほどがん細胞に性質が近づく」と理解しても良いでしょう。
実際に子宮頸がん検診の細胞異型は「ベセスダ分類」によって評価されます。
施設にもよりますが、細胞診の結果は1~2週間ででます。結果の解釈と管理方針はベセスダ分類によって分けられます。
上の表にあるように、何も行わないのは全く問題がないNILMのケースのみで、ほかの結果の場合には何らかの追加検査が必要です。以下に詳しく説明します。
ASC-USは、「細胞の形は正常とは言えないが、子宮頸部異形成であるともいいきれない」という状態のことを指します。
子宮頸部の細胞はがん化するまでに少しずつ形を変えていきます。ただ、その初期の段階というのは非常にわかりにくいのです。同時に子宮頸部は局所的な炎症を起こしやすい部位でもあり、その際には子宮頸部の細胞は少し形を変えます。このがん化する過程の非常に初期段階の細胞と炎症で形を変えた細胞の区別が難しい場合があるのです。
そのため、検診の結果がASC-USであった場合には、この細胞ががん化する初期段階の細胞かどうかの「リスク判定」を行います。そして、そのリスク判定に使うのが「ハイリスクHPV検査」です。ハイリスクHPV検査は、子宮頸がんを起こしやすいとされるHPVに感染しているかどうかを一括して検査することができます。
この検査が陰性であれば、子宮頸がんを引き起こしやすいHPVはいないことになります。その場合はASC-USの細胞は「おそらく炎症によるものだろう」と考えることができ、時間を置いた再検査を行えばよいのです。
一方で、検査が陽性であった場合はもちろん炎症かもしれませんが、がん化前の初期段階を見つけているのかもしれません。そのため、組織診断を行って異形成の有無についてきちんと評価しなければならないのです。
他の細胞診異常は基本的に「子宮頸部異形成が疑われる」細胞の形をしています。子宮頸部異形成があった場合には、円錐切除などの治療が必要なことがあります。そのため、上記のような検査を省略して直接組織診断を行うのです。
この組織診断とは、子宮頸部の細胞の塊を一部採取することです。コルポスコープという拡大鏡を用いて子宮頸部を観察し、もっとも異常がありそうなところから組織を採取します。
組織診の結果はCINという分類を用いて行われます。CIN(cervical intraepitheral neoplasm)とは、子宮頸部上皮内病変の略称です。
50~60%は自然に消失しますが、30~40%は持続します。そして結果として5~10%は円錐切除が必要なCIN3以上に進展します。そのため、3~4か月ごとの定期的な経過観察が必要です。
CIN1に比べるとCIN3への進展率は高いですが、それでも20~30%程度です。そのため、基本的には経過観察を行います。
このようにCIN1、2の基本的な管理方針は「経過観察」です。最近はこの経過観察に「悪性化のリスク」を調べるためにHPVのDNA型判定を行うことがあります。HPVのDNA型判定は子宮頸部に感染しているHPVの型を調べることで、これで将来の悪性化リスクを算出することができます。具体的な管理方針の選択においては、①CINの程度、②HPVの型、③年齢、④妊娠希望を総合的に判断して決定します。
自然消失することはないため、円錐切除を行います。円錐切除の結果によっては追加の手術が必要なこともあります(上皮内癌だと考えていたところ、実際は子宮頸がんⅠ期だった場合など)。円錐切除後には新しい病変が再発しないかどうか定期的なフォローアップが組まれます。
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