子宮がんは子宮頸部にできる子宮頸がんと子宮体部にできる子宮体がんの2つに分類することができます。中でも子宮体がんは、がんの組織の性質でいくつかの組織型(種類)に分けることができ、その組織型によって悪性度や生存率、治療法が異なることがあります。
本記事では子宮体がんの組織型をテーマに、組織型ごとの特徴や治療法について詳しく解説します。
子宮体がんは組織の性質ごとに分類され、この分類のことを組織型といいます。
子宮体がんでもっとも多い組織型は、類内膜がんです。構造によってG(グレード)1、G2、G3の3種類に分けることができ、数字が大きくなるほど悪性度が高まります。定義は顕微鏡で見たときの組織像の中での充実部*の割合で決まります。
*充実部……がんが密集して個々の区別がつかなくなった状態
類内膜がん以外の組織型には、主に漿液性がんと明細胞がんがあります。また、まれですが扁平上皮がん、移行上皮がん、小細胞がん、混合がん、未分化がんなどがあります。これらの組織型は類内膜がんに比べて悪性度が高いといわれています。
子宮体がんの原因によっても、組織型の傾向が異なります。
子宮体がんは原因によってI型、II型に分けることができます。I型は女性ホルモン(エストロゲン)の刺激が長く続くことが原因で、類内膜がんや粘液性がんを発症する傾向があります。これは女性ホルモンの曝露(ホルモンなどにさらされること)の影響で子宮内膜増殖症を経て発症するため、比較的早期に見つかりやすいがんと考えられます。
一方II型はエストロゲンが関連しないものが原因となり、主に高齢の方の萎縮内膜を背景に起こるとされています。予後の悪い漿液性がんや明細胞がんなどがこのII型に含まれます。
摘出範囲などを決定するため、術前に子宮内膜組織生検(子宮内に細い棒状の器具を挿入し、組織を採取する)を行い、組織型を推定します。しかし、この検査で分かる組織は全体の一部であるため、摘出された検体で行われる最終組織診断と術前の組織診断が異なることがあります。そのため、術後に追加治療が必要かどうかなどは、摘出された検体での最終組織診断をもとに決定されます。
子宮体がんの治療の基本は手術であり、がんの状態や進行度合いによって手術の内容が若干異なるのは前述のとおりです。さらに、組織型によっても治療法が異なることがあります。
低リスク群*では子宮と両側の卵巣、卵管切除で十分なケースが一般的です。
それ以外では上記術式に加えて、骨盤内~傍大動脈のリンパ節郭清術や大網切除(胃や大腸を覆う網のような脂肪組織の切除)などを行うことがあります。
*低リスク群……類内膜がんのG1、G2で、なおかつ、がんの深さが子宮の壁の2分の1まで到達していないと推定される場合〈ステージ1A期〉
手術で採取したがん細胞の状態、組織型、悪性度などから再発リスクを推測したうえで、さらに化学療法などの治療を行うことがあります。リスク分類は以下のとおりです。
低リスクの場合は経過観察、中リスクの場合は経過観察または抗がん剤治療(放射線治療)、高リスクでは抗がん剤治療(放射線治療)が行われます。
高分化型(G1)の類内膜がんは予後が良好であるといわれています。そのため、高分化型の類内膜がんでかつ筋層に広がりを認めないステージ1A期の場合には、手術をせずホルモン治療を行うことで子宮を温存できる場合があります。この治療方法は主に妊娠を希望する方に行われますが、再発のリスクも高いため最終的には手術が必要になることもあります。妊娠を希望する場合、担当医としっかり話し合って治療法を選択してください。
子宮体がんはさまざまな組織型があり、進行度合いだけでなくその分類によって治療方法や予後、再発リスクなどに違いがあります。納得した治療を受けるためには、患者自身もこのような組織型の特徴などを十分に理解することが非常に重要となります。そのため、自身のがんの組織型や治療のについて気になること、知りたいこと、不安なことがある場合には躊躇せずに担当医に相談するとよいでしょう。
がん研有明病院 婦人科 部長
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